もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

欧米の対敵(対テロ)情報共有に思う

2018年09月10日 | アメリカ

 英国で起きたセルゲイ・スクリパリ元大佐の襲撃事件に関して、欧米5か国の緊密な連携を窺える捜査結果が公表された。

 セルゲイ・スクリパリ氏は、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の大佐であったが、イギリスの二重スパイであることが露見してロシアで禁固刑が科せられたが米露スパイ交換によって米国に渡り、その後英国に亡命したものである。元大佐と娘の二人が亡命先のイギリス国内で薬物攻撃を受け一時は重体(後に回復)とされたが、襲撃に使用された薬剤がロシアの諜報機関が常用する神経剤ノビチョクであったことから、当初から”ロシア国家の高いレベルが関与した報復”と取り沙汰されていた。今回のイギリスの発表では、GRU職員2名を犯人(容疑者)として特定したといううもので、英米独仏加の共同捜査の結果とされていることに注目したい。一般的に、情報機関は情報源・入手経路・入手手段秘匿のため、入手した情報を友邦国に対しても明らかにしないとされている。特に、防諜体制が不備な国に対してはホットな情報は伝えられず”日本に情報を提供することは敵に情報を渡すに等しい”とは、世界の常識と囁かれている。不十分・不完全ながら自衛官にはアクセスできる情報の種類とレベルが定められているが、それでも情報漏洩は起きている。まして情報が一旦制服の手を離れて、外交交渉の内幕まで漏らすような官僚と無法行為をした中国漁船を無罪放免するような政治家に配布された時点で、秘密情報は諸外国にオープンに近い状態になり、無価値なものに変質する。マレーシアで発生した金正男氏暗殺事件においても、北朝鮮スパイの特定等に日本を含む近隣諸国が協調したような報道が見当たらないのは残念であるが、諜報と防諜にコンセンサスの無いことを考えれば当然のことかも知れない。

 先に挙げた5か国が容疑者の特定に共同歩調を採り得たのは、防諜と国益に関する信頼関係があることの傍証であり、日本がテロの事前情報の配布を友邦から受けようとすれば、日本の、特に公務員の防諜体制を今以上に強化して関係国との信頼関係を強化する必要があると思うものの、中央官庁にさえ自治労や自治労連の影が見え隠れすることを見れば、公務員のリトマス試験紙的な防諜資格制度の実現は絶望的ではあるかもしれない。