もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

沖縄県の辺野古埋め立て承認の撤回に思う

2018年09月01日 | 防衛

 沖縄県が辺野古埋め立て承認を撤回し、再び移設工事が遅延する事態となった。

 沖縄県の主張は「環境保全措置と事前協議が不十分」としているが、普天間基地周辺住民の負担軽減対策として国と沖縄県民が20年以上を掛けて知恵を出し合って辿り着いた結論と、環境アセスメントを重ねて自然環境破壊の局限を図ろうとする積み重ねのいずれをも、不十分と切り捨てることに大きな疑問を感じる。それも、予定されていた国(沖縄防衛施設局)側の意見聴聞前に宝刀を大上段に振りかぶる姿は、沖縄県知事選を前にしてオール沖縄の主張を際立たせるためのパフォーマンスにしか見えない。承認撤回の指揮を執った副知事は、翁長元知事の遺志の伝承であるとして行政の継続性をも主張しているが、仲井真知事以前の行政を積弊清算として断続したことで主張が破綻していることは無視している。最悪と思うのは承認撤回に際して県民や地域住民に対する配慮に全く欠けていることである。撤回の前提を簡潔に言えば、『知事は、おそらく実現不可能な米軍基地撤去闘争の一環として埋め立て承認を撤回するので、普天間周辺住民は理想実現まで現状の危険状態を耐え忍んで欲しい。』と云う事であろう。臨終の際にお世継ぎを耳打ちした後継者選びといい、神君翁長公の遺訓が全てとした副知事の思考といい、江戸時代にタイムスリップした感があるが、やはり副知事は現代人である証拠に”人間の盾”でアメリカからの報復を避けたイラン・イラクの戦術も理解されているようである。折りしも立憲民主党でも、これまでのダンマリ戦術を捨てて、最低でも県外移設・辺野古移設反対という鳩山由紀夫氏の遺訓に先祖返りすることを明白にした。こちらは参院選を前に支持率回復・無党派層取り込みを企図しているとみられているが、山積する重要課題を放り出してモリ・カケに拘った挙句に18連休という優雅なゴールデンウィークを過ごし、国会議員失格の評価を下された痛手は癒しようもなく、尖鋭化した主張で共産党との選挙協力まで走るのではないかという疑心をもって受け取られることだろうと思うものである。

 『県外在住の局外者がなにを!』との批判を承知で言わせて貰えるならば、沖縄県知事を含む地方自治体の長は、与えられた環境と権限内で住民に最大の福利(嘉手納の危険回避)をもたらすことが唯一無二の使命で、権限の及ばない理想(米軍基地撤去)に向けた活動は副次的であるべきと思うのだが。