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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

IWCでの敗北と脱退論に思う

2018年09月17日 | 与党

 ブラジルで開かれていたIWC(国際捕鯨委員会)総会で、日本の提案が文字通り一蹴された。

 今回は日本が議長国を務めるとともに、反捕鯨国も同調し易い提案を用意し、相当の根回しをしたものと思われるためか、農水省も一部の鯨類の商業捕鯨再開に相当の自信を持って臨んでいた節もあり、本ブログでも期待感を述べた(7.14記事)経緯もある。今回の決議を受けて農水省内でのIWC脱退論が拡大していることが報じられており、脱退論の趣旨は、鯨肉食という食文化維持と鯨類の増殖による他の水産資源の保護であるが、鯨肉食文化は先住民にのみ認めるという従来の決定を覆すことはできなかったものである。また鯨類の増殖が他の水産資源に深刻な状況を与えている問題については、IWCが日本の調査捕鯨によって得られた科学的データを採用しないことも従来のままであるらしい。ここで考えられるのは、ノルウェーがIWCから脱退して大西洋北部で商業捕鯨を行っている事実である。反捕鯨国の牙城であるEU諸国とアメリカは、自国が消費する水産物の大半を北海とアラスカ沖の漁場で得ているが、当該漁場で鯨類による被害が少ないのはノルウェーが北極鯨を間引きする商業捕鯨を行っていることの余慶と言えるのではないだろうか。海洋生物の食物連鎖の頂点にある鯨類のみ保護することは水産資源の枯渇に繋がり兼ねず、近年、鯨が座礁する事象が相次いでいるのは鯨の食料となる小魚やプランクトンの減少も一因とされている。反捕鯨国の大半は水産業を統括する部門からではなく環境部門から委員を派出しているらしく、彼等には家畜化された動物ならばカンガルーでさえ食料とするのは容認できるが野生のカンガルーを捕食するのは環境破壊であるという、動物愛護の視点で見ればなんとも中途半端で破綻した理論を信仰しているために、科学的なデータを基に食物連鎖と資源保護の両立を図ることなど検討するに値しないものと映るのだろう。今後、地球の人口が更に増えて地上の生産能力だけでは蛋白源の摂取ができなくなった場合も、これまでどおりに彼等は鯨類の増殖をのみ神聖視するのだろうか。

 IWC脱退については、南極条約が南極海での漁業についてはIWCの規定によるとしているために、南極海での商業捕鯨は絶望的であるらしい。更には、鯨肉食自体が嗜好品的な色合いに変化した現在では捕鯨の必要性は往時に比して低下していると思うものの、慰安婦や南京事件と同様に科学的・論理的は思考ができない国際機関から脱退することには意義があることと思う。松岡洋祐が国際連盟脱退時に演説したように、理不尽な要求に対して「名誉ある孤立」を主張することも国際舞台では必要な手段であると思う。