アメリカの関税障壁が発動されて3ヵ月以上が経過した。
この間、米中相互の高関税賦課と世界各国とアメリカの2か国間貿易協定が順次加速している。アメリカの一連の行動に対して日本の識者からは「アメリカの保護貿易化」を懸念する声と「アメリカの翻意」を促す声が殆どである。しかしながら、中ロの対北朝鮮経済制裁破りや南北朝鮮の異常接近等を合わせて考えると、アメリカの貿易関税障壁構築は保護貿易による国内産業の保護よりも、対中経済制裁の側面を重視したものではないだろうかと考えるものである。事実、中国経済は株価の低迷や生産調整の動きも伝えられており、駆け込み需要によって8月に史上最高を示した対米貿易額も徐々に縮小するものと見られている。国際的に無法を為す国家に対して各国は国連決議で協調して経済制裁を行ってきたが、安保理で拒否権を持つ中国に対しては国連決議を得られないことが明白であるために、アメリカが単独で経済制裁を発動したと視ることもできるのではないだろうか。先ごろ習近平主席がアフリカに対する大規模借款を約束したことは、かねて主張している一帯一路構想や”中国元”経済圏構築とは別に、中国経済の生き残りをかけて小規模な市場ながらアフリカに販路を求めての行為とも考えられる。であれば日本の立ち位置は明白で、中国の野望を挫くため今まで以上にアジア・アフリカに進出すべきであり、その実績を持って対米貿易交渉に臨むべきではないだろうか。
現在の日本の大きな課題は、中国の伸張を鈍化させるとともに、その影響を如何に局限しようとすることではないだろうか。ここ半年間の外相の外遊先を調べてみたが、中国の伸張阻止を狙った意図は感じられず財相と協調したものとも思えない。尤も、自分にも見えるような対応では世界に通用しないものであることは承知しているが、南シナ海での海自潜水艦の行動を発表したように『仮想敵は中国』をもっと鮮明にしても良いのではないだろうか。