プーチン大統領の領土問題を棚上げしての平和条約締結発言に対する、各界の反応が報道された。
概ね、冷笑・無視の勧めであるが、共産党の志位委員長のコメントに興味を惹かれた。委員長はコメントの前段で領土問題の棚上げは容認できないと述べた上で「・・・直ちに反論しなかった安倍首相の姿勢を弱腰とし屈辱外交・国辱外交」としている。外交儀礼に不案内であることを承知した上での所感であるが、自分も安倍首相にはその場で日本の立場を主張して欲しかったと思うものである。しかしながら、外交の場で使用される言葉には不文律的は慣例があり、例えば『重大な決意・・・』という表現は武力行使や戦争も辞さないことの婉曲表現であるように、相手の主張に反意を示すためには反意の程度によって幾通りかの婉曲表現があるらしいので、どの程度の言葉で反論すべきかは外交専門家でなければ即座に判断できなかったであろうことは理解すべきではないだろうかとも思う。志位共産党は、明らかな内政問題に関する中韓からの非難に対して政府が直ちに反論する度に、近隣諸国への配慮を欠いた処置と非難を繰り返すのを何度も耳にしているので、今回のコメントもあまり説得力を持たないものにも思えるが。今回のプーチン大統領の”思い付き”とした発言に対しては、安倍総理も思い付きを装って4島返還を迫るジョークで切り返えすことが最良の対処法であったのかも知れないと思えば、外交官や政治家は言葉のプロでなければ務まらないものと同情するところである。
今年もシルバー川柳入選作が発表され、クスリと笑い、なるほどと納得し、そこはかとない哀愁を感じる秀句が並んでいる。我々も直截かつ正確な表現のみでなく『主張を婉曲な言葉で表現する川柳的話法を心掛ける必要があるなァ』と考えさせられた。折りしも自民党総裁選の遊説がたけなわであるが、石破氏の演説はいかにも堅苦しくて肩が凝るように感じる。日本人のユーモア下手は昔から云われているが、田中角栄氏が有権者を引き付けたのは稀代のユーモア話法で主張を包んだ演説の才である。安倍・石破氏に限らず、政治家諸氏には国際基準のユーモア感覚とジョークの才も磨いて欲しいものである。