アメリカのトランプ式経済戦略が功を奏しつつあるかに見える。
大統領当選後速やかにTPP交渉から離脱して関係国との2国間貿易協定構築に邁進した結果、北米自由貿易協定(NAFTA)を骨抜きにしてカナダ・メキシコを取り込み、韓国を軍門に下し、EUの陥落は目前である。残るターゲットは日本と中南米であり、日本とは首脳会談を前にした実務者協議が始まり中南米諸国とは外交官の引揚げにより圧力をかけ始めた。当初、TPPを盾にして米国圧力の分散回避を狙ったが、オーストラリアを始めとする参加各国の腰砕けにより発効さえ疑問視される現状を思うと、日本はアメリカとの2国間協議に国の繁栄持続を賭けざるを得ない事態となった。その際、反面教師とするのは韓国とされている。韓国は高関税免除と引き換えに鉄鋼の総量規制と為替管理を受け入れて対米貿易戦争を凌いだとみられていたが、運用をアメリカに握られたことから韓国財界からは悔悟の声が出ているそうである。韓国には文大統領の南北融和政策実現のための米韓合同軍事演習中止要求、というお家の事情があっての結果と考えるものの、日本は総量規制と為替管理をアメリカに渡してはならないと識者も警告している。以後の日米通商協議においては自動車と農産物に関する取扱いが焦点になるとみられているが、そもそも今回の貿易摩擦には貿易収支の改善に加えアメリカの安全保障と知的財産保護いうサブタイトルがついているために、アメリカ側から思いもよらない問題が提起されるかもしれない。そんな折、中国の8月期対米貿易収支が発表され、月間としては過去最高の黒字であることが明らかとなった。風雲急が観測された時期の駆け込み需要の決済による一時的なものと思うが、この黒字がアジア・アフリカへの一帯一路構築や中国製造2025の原資となることを思えば、トランプ大統領が言う「中国の伸張にアメリカが出資している」のも成程と納得できる。
ここまで書いて、経済に関しては報道の字面をなぞるだけの知識しか持ち合わせていないことを痛感した。来る通常国会では、博識の与野党議員による真剣な議論を俟つものであるが、今のところ野党党首からは、モリ・カケの残滓と憲法問題しか発信されていない、果たして・・・。