エジプトで大統領の任期延長を柱とする、憲法改正の国民投票が始まった。
エジプトの現行憲法では大統領の任期は2期8年とされているが、改憲下では2期12年となるとされている。更には新憲法では大統領権限が強化さることから、国民や政治家の一部にはシーシ-大統領の独裁化を懸念する向きも伝えられているが、治安の回復に手腕を見せてエジプトを安定させたことから国民の支持を得て憲法改正は実現するものとみられている。現在、多くの国では、民族主義・国家主義的ポピュリズム勢力が伸長しており、為政者はポピュリズムの制御に腐心しているように感じられる。アメリカ、ロシア、韓国の為政者の例にみられるように、政権基盤自体がポピュリズム層である場合も多い。21世紀はグローバリズムの時代と言われていたが、蓋を開けてみれば世界はますます自国の殻に閉じこもろうとしているように感じられる。自国の殻に閉じこもるためには外圧に対して強固に対抗できる強い指導者が必要であり、その好例がエジプトであるように思える。多くの国では元首の任期を定めるとともに多選を禁じているが、習近平氏は党則を改正して終身国家主席の座を得たし、プーチン氏は傀儡大統領を挟むという裏技を使って20年以上も権力の座に君臨している。日本は、総理大臣の1回の任期は規定しているものの多選は禁じていない。現在、実質的に総理大臣の多選を禁じているのは自民党が党規約で「総理大臣は総裁が務め、総裁は3選まで」と定めて居ることだけである。野党第1党である立憲民主党の規約を読んだが、代表の任期は定めているものの多選に触れたものは無く、政権を取った後に総理大臣の人選や多選に関する規約もなかった。現在、安倍総裁の4選が世情を賑わしているが、改憲論議の中に総理大臣の多選条項を設ける是非についても盛り込むことが必要ではないだろうか。そうでなければ枝野総理が際限なく続く可能性が残されていることになる。
為政者や政治家がポピュリズムに配慮する、若しくはエジプトのようにポピュリズムを利用するかは別にして、国民が強い指導者による長期政権を求めることはグローバリズムの衰退に伴って、国際的な潮流になるものと感じる。安倍4選の議論に当たっても功利的・党利的な視点を捨てて、国益にかなう選択を望むものである。