もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

パリは燃えているか

2019年04月16日 | 芸能

 ノートルダム大聖堂の火災が報じられた。

 火災は現在も延焼中であり、石造建築物ながら内部が全焼することは避けられないほどの火勢と報じられている。30年以上も前と記憶しているが「パリは燃えているか」という映画が公開された。あらすじは、ドイツ軍のパリ占領軍指揮官に対してヒットラー総統が、「連合軍のパリ解放が迫った場合には、ドイツ軍撤退の前にパリ全市を焼き払え」と命令したにもかかわらず、歴史遺産保護・人道的戦闘・非戦闘員保護の観点から占領軍指揮官が命令に反してパリに火を放つことなく撤退するという内容であり、エンディングでは「パリは燃えているか」と叫ぶヒットラーの絶叫が卓上に放置された受話器から流れるというものであった。ノートルダム大聖堂の火災原因は不明ながら、修復作業現場付近から出火して内部に延焼したと実況されており、何らかの人為的ミスによる公算が大きいと思われる。先に述べた映画ほどではないにしろ、先人の偉業である歴史的建造物が現在まで遺産として受け継がれているのは、どのような理由からであれ為政者や権力者が保護を与えたことと、無名の多くの人々の努力が実った結果であると思う。敵対する僧兵一掃と宗教界の浄化のために比叡山を焼き尽くした信長、洪水防止と電力確保のためにアスワン(ハイ)ダムを建設して多くの遺跡(著名なものは移設)を湖底に沈めたナセル、偶像崇拝禁止というイスラム教義のためにバーミヤン石窟を破壊したIS等々、権力者によって破却された文化財も少なくないが、幾多の厄災をも乗り越えた文化財が、些細(かどうかは現時点でははっきりしないが)なミスで灰燼に帰すのは残念である。

 ここまで書いて、所蔵されている美術品等は搬出されたと報じられたが、ノートルダム大寺院の特色はステンドグラスであるといわれており、壁画とともに修復には長時間を要するものと思う。ここまで簡単に「遺産」という言葉を使用していた。通常は遺産相続という言葉で馴染んでいるように先人の残したものは全て遺産と表現しているが、歴史を加味した遺産とはどのように考えたらよいのだろうか。現在、1872年に建設された富岡製紙所(場)がユネスコの世界遺産に登録されていることから、100年以上経過した建造物は「歴史的意味を持つ文化遺産」との考えが国際的に認知されているのではないだろうか。であれば富岡製紙所に先立つ1869年に建立された靖国神社に対して悪意を企む韓国人放火犯に対しては、建造物損壊に加えて文化財損壊の罪状も加重すべきようにも考えられる。