アンモニアの簡単な合成法を東大の研究チームが開発したことが報じられた。
アンモニアといえば中学生当時に理科の先生から嗅がされた記憶と、トイレの悪臭の原因くらいしか知らないので調べてみた。アンモニアの合成は100年前に開発された「ハーバー・ブッシュ法」で行われているが、合成には400度以上の高温と100気圧を超える高圧の環境が必要であるため、その環境を作り出すプラントが全世界の電力の1~2%を消費しているともされている。今回開発された手法は常温・1気圧の環境下で触媒と試薬を使用して合成できるもので、試薬に高価なレア・アースが必要とされるものの電力の使用と排出ガスの局限には画期的なものと解説されている。全世界のアンモニア生産量は1億6千万トンとされ、生産国ランキング(2016年資料)では、1/中国(4,600万トン),2/ロシア(1,250万トン),3/インド(1,080万トン),4米国(1,015万トン),・・・33/日本(100万トン)となっていた。合成されたアンモニアは84%が化学肥料用に使用されるとともに軽工業の素材として欠かせないであるために、化学肥料の需要が減った日本でも年間100億円(量は不明)以上が輸入されているが、輸入に頼る原因は製造に必要な原料である石油・石炭が製造コストを押し上げて輸入の方が割安であるためらしい。今回開発された技術でも原料は変わらないために、直ちに日本のアンモニア生産の現状を変えるものではないだろうが、主要な生産国(特に、レアース大国の中国)で新しい合成技術が採用されるならば、地球規模の温暖化対策やPM2.5対策にも大きく貢献することになるのではないだろうか。とはいえ、コピー大国の中国とは新たな知的財産権の火種にもなりかねないが。
今回のアンモニアに関する話題を勉強して驚いたのは、100年前に開発された合成の原理が大きく変化することもなく現在まで続いていたことと、改善を模索していた研究者がいたことである。大学の科学研究とは新しい分野に対してのみ注力されるものと思っていたが、研究者には失礼ながら、「カビの生えた原理」にも目を向けているのかと改めて尊敬するものである。