もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

宮古島の陸自配備問題に思う

2019年04月03日 | 社会・政治問題

 陸自の宮古島配備に伴う弾薬庫整備の不手際が波紋を広げている。

 防衛相は、宮古島駐屯地内に保有(保管)していた弾薬を島外に搬出することを命じたと明らかにした。このことで、火薬類取締法(火取法)で許容される少量の弾火薬(少量の小火器弾)を除いて、宮古島駐屯地は丸腰状態となった。まさに張子の虎とも呼べない体たらくで、防衛省(特に防衛施設庁)と政治の責任は極めて重いものと考える。およそ軍隊の駐屯・駐留・派遣には武器・弾薬の携行と常続的補給は不可分の関係にあり、糧食の補給と合わせて「後方(海軍が主用)」又は「兵站(陸軍が主用)」と呼ばれる。現在では大東亜戦争に敗北した原因のうち、政治判断の誤りと後方・兵站の失敗が大きいとされているが、今回の宮古島駐屯地の整備にも、部隊配備を急いだ政治と、軍政を担当する防衛省が兵站を軽視したことが大きな原因であろうと考える。陸上自衛隊は部隊が常駐できる施設を持つ場所をすべて駐屯地と呼んでいるが、米陸軍では戦闘力と兵站の観点から、一時的な駐留で兵站を他部隊に依存する「キャンプ」、作戦を遂行するためのすべての機能を有する「ベース」「フォート」と使い分けて呼称しており、国民も呼称によって「どの程度の規模の軍隊か」を知ることができる。その呼称も兵器の進歩や輸送の手段や能力の変化に伴って本来的な意味を失っているようであるが、兵站を受ける部隊なのか兵站を提供できる部隊であるのかは知ることができる。宮古島駐屯地の問題がこじれたのも、住民には駐屯部隊の性格・任務が正確に理解されておらず、防衛省にも駐屯地に付与すべき能力と駐屯地への兵站が正確にデザインされていなかったのではなかろうかと考える。極端な言い方かもしれないが、陸自配備を考えた政治家と防衛省に兵站という概念が希薄・若しくは無かったのではないだろうかとさえ危惧するものである。今回の顛末の根本原因は、大東亜戦争後の軍隊への忌避感から国民が軍事知識を共有することもなく、政治家と軍政官僚も軍隊・軍事力の本質から目を背けていた結果が「ボタンの掛け違い」として示された顛末ではなかろうかと思うものである。

 これまで述べてきた米陸軍駐屯地の呼称と能力については、20年前にアメリカ陸軍大佐から訓えられたもので、ネット上では『現在は陸軍、海軍、空軍、海兵隊全て基地は総称してベースと呼ばれ、その中で、陸軍はフォート(Fort)、海軍はベースまたはステーション(Station)、空軍はAFB(Air Force Base)、海兵隊はキャンプ(Camp)と呼ばれることが多いようである。』との記述もある。いずれにしても、兵力展開には兵站(後方)が不可分の関係にあることを国民はもっと知る必要があると考える。イージスアショアの配備を求めれば、弾薬輸送と弾薬駐滞は必然であることが常識として認知される日が遠からんことを望むものである。