もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

北極圏ガス田開発の参画を学ぶ

2019年04月17日 | 社会・政治問題

 ロシアの「ヤマルLNG2」開発参画に関する官民の温度差が報じられた。

 記事は、LNGの安定供給と北方領土交渉の梃子としたい政府と採算を不安視する財界で、事業への参画意欲に温度差があるとされる内容である。石油に次いで重要なエネルギー源であるLNGについて勉強した。LNGは、石油や石炭に比べて燃焼時の温暖化ガス排出量が少ないことに加えて、精製や加工経費が少ないこと、確認されている埋蔵量が原油を超えることから、日本ではは火力発電や家庭用の燃料として使用され、輸入量は世界1である。輸入先(2016年資料)は、1/オーストラリア(26.9%),2/マレーシア(18.6%),3/カタール(14.5%),4/ロシア(8.88%),5/インドネシア(8.0%)となっているが、マレーシアは世界2位のLNG輸入国である中国の一帯一路構想の影響下にあり、カタールは周辺国との軋轢を抱えており、インドネシアは明日にでも急進的イスラム大統領誕生が予想され、安定的供給源はオーストラリアくらいしか考えられない。政府がLNGの輸入先を多元化するとともに生産ガス田に影響力を持つことでLNGの安定供給に努めたいとする背景は理解できた。財界が採算を疑問視しているのは、ヤマルガス田が北緯70度の北極圏に位置することである。フランス資本との協力で既に2017年に操業を開始したヤマルガス田のLNGは、ヤマル基地(積出港)から西側航路で欧州向けに輸出されているがアジア向けには輸出されていない。ロシア企業はアジア向けに「ヤマルLNG2」を建設して販路を日本、中国、韓国に拡張しようとの計画で、関係国に打診・協力企業を募っているものであるが、日本にヤマル2のLNGを輸送するためには積出港からいったん北緯80度付近まで北上してベーリング海峡を目指す東航路となるために冬季は結氷のために航行できず、航行可能な時期にあっても砕氷能力とまではいかないものの流氷から船体を保護できる機能を持ったLNG運搬船が必要になる。このような背景から財界は採算性を疑問視しているもので、これまた当然の主張であると思う。

 今回の勉強で、LNGの採掘~凝縮~運搬~精製の過程も知ることができた。さらには「ヤナル」という地名は現地語で「世界の果て」を意味することと、永久凍土(ツンドラ)に出現した巨大な穴(陥没?)の存在も知った。知ってもどうしようもない知識であるが、居酒屋談義の種くらいにはなるだろう。それにしても生存するためのエネルギーを得るために「世界の果て&地の果て」まで開発しなければならない現状は、人間社会の行きつく先と人類の将来を暗示していると思うのは悲観的な見方であろうか。