今朝のテレビで、フランスの「黄色いベストデモ」警備の警察官が万引きする姿が放映された。
燃料税の値上げに端を発した抗議デモは終息の気配を見せていたが、いまだに略奪行為すら伴うデモが継続されている現状を知るために、改めておさらいを試みた。時系列的に整理すると、昨年(2018年)9月に政府が2019年1月1日から燃料税を値上げすると発表した。発表から11月中旬までネットで値上げ反対の署名活動が行われ86万人の請願署名が集まったとされるが、政府は見直しを検討しなかっために11月17日の土曜日になってSNSの呼びかけに応じた地方生活者が、ドライバーの安全確保用の黄色いベストを着て地方都市(87箇所3500人)で抗議デモを行った。その後デモは週末を中心に全国に拡大し12月には首都のパリでも行われるようになったが、騒擾を許さないと内相が発言したために火に油を注いでしまった。デモの尖鋭化に驚いた政府は、12月4日に燃料税の値上げを半年間延長すると発表、さらに12月10日には最低賃金を企業が負担するのではなく国の負担で100ユーロ(1万3000円)引き上げることを発表してデモの鎮静化を図った。この頃になると「一般労働者が自然発生的に起こした抗議活動」の様相から、極左・極右政党が組織的に行う政治活動に変質して、マクロン政権の富裕層優遇政策や移民排斥の要求が表面化するとともに一部が暴徒化して略奪や放火も横行するようになり、警備側も催涙ガスの使用等の強硬対処を余儀なくされているのが現状である。しからばフランスの労働者や国民は燃料税の値上げに耐えられないほどの貧困状態に置かれているのかと各種資料や解説を読んでも、流石にフランス式社会主義と呼ばれるように月額20万円弱の最低賃金(全国均一)、長期にわたる高額な失業給付、週35時間労働(日本は40時間)等を見る限り、明日の米(パン)に困る状況ではないように思われる。失業率は他のEU諸国に比べれば高い(9%内外)ように感じられるが、選好みや勤労意欲に欠けるというフランス人気質に負うものが相当数に上るとの指摘もあり、フランス人労働者の経済状態は「貧困ではないが生活に余裕があるわけでもないレベル」というのが大方の見方とされている。
フランスの生活レベルを知らないので結論付けるのもどうかと思うが、日本の現状に立ってフランスの各種数字を見る限り、経済的にこれほど長期に亘って騒動を起こさなけれならないとは思えない。マクロン政権の支持率は25%を割り込んで歴代のワースト記録を更新中であるが、もともとフランスでは政権支持率が低いのが常識であり、今回の騒擾に関して政権の責任を追及する声は低いようである。こう考えれば、EU離脱問題からイギリスを逃げ出した外国企業がフランスを通り越してドイツやオランダに向かうことの背景も理解できる気がするものである。