ガソリン小売価格が下落傾向にあることが報じられている。
ガソリン小売価格とは縁が無くなったために注意を払わなかったが、少し勉強することにした。中国ウィルスの影響で、世界的に経済活動が停滞したためにOPEC(石油輸出機構)が5月から原油の1割減産を決めたが、既に原油先物市場では値崩れを起こしており「原油の売り手が金を払わなければ取引が成立しない」状態となってるらしい。これは一時的なもので、石油が世界経済を担っていることに変わりはないのだろうが、原油を武器にしている国や売却益で国家が成り立っている国にとっては死活問題であろう。経済展望はさておき、興味を持ったのは、一部のタンカーに搭載されている原油には買い手が決まっていないらしいことである。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、世界に約750隻あるスーパータンカーのうち1割は買い手がつかない原油の貯蔵に使われており、原油を積んで3月にサウジを出発したタンカーの一部は荷受け国が見つからずシンガポールやエジプトなどの近海に留まっているそうである。タンカーに限らず物流は、貨物の所有者(荷主)の依頼を受けて指定された場所まで輸送することで成り立っていると思うが、原油については荷主=石油精製業者ではないのだろう。素人考えであるが、原油の物流システムは先物市場で原油を仕入れた荷主(バイヤー)が高値で買い取ってくれる精製業者に売却するのだろうが、原油がだぶついている現在では買い取ってくれる精製業者がいないのだろう。既にアメリカでは精製業者の貯蔵施設(精製待ちの仮置き)も満杯に近いと報じられていることから、素人考えで今後を予測すると沿岸海域で遊弋待機するタンカーは今後さらに増加し、この状態が長く続くと傭船経費に耐えられない荷主が出て来て原油を満載したタンカーが漂流船と化すケースや、船内での中国コロナ蔓延で遊弋運航すら不可能なタンカーが出ることすら想定する必要があるのではないだろうかと危惧するところである。
スーパータンカーという言葉は、世界最大のタンカーを示す非公式な用語であったが、現在では20万~30万㌧級(VLCC)、30万㌧級以上(ULCC)の船腹を指している。日本では1962(昭和37)年に建造された13万㌧の「日章丸」が当時世界最大のタンカーとされタンカー巨大化に先鞭をつけた。日章丸を建造したものの、修理に使用できる乾ドックは戦艦大和の入渠を考慮して作られた呉造船(旧海軍呉工廠)の第4ドックしかなかった。しかしながら同ドックはGHQの指示で扉船(ドック締め切りの蓋)は破却されて戦後長らく放置されていた。日章丸の修理のためには先ず第4ドックを復旧する必要があり、扉船建造・浚渫を行ったが20年近く放置されていたドック内を排水すると驚くほどの魚が採れ、入渠させるにあたってもドックの入口幅は日章丸の船幅よりも数十センチ広いだけであったことを工員さんから聞いた。日章丸が呉に入港した光景は今も鮮明で、自衛艦桟橋(呉港Fバース)から200メートルほどの距離を通過したが、まるで鉄の壁が動いているように感じた。現在のスーパータンカーは全長460m・幅70mにも及ぶので、今では日章丸は小さいタンカーの部類であろうが、日本人の心意気を示した日章丸という名称は誇らしく響いたものである。