もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ガソリン小売価格の下落とスーパータンカーを学ぶ

2020年04月23日 | 社会・政治問題

 ガソリン小売価格が下落傾向にあることが報じられている。

 ガソリン小売価格とは縁が無くなったために注意を払わなかったが、少し勉強することにした。中国ウィルスの影響で、世界的に経済活動が停滞したためにOPEC(石油輸出機構)が5月から原油の1割減産を決めたが、既に原油先物市場では値崩れを起こしており「原油の売り手が金を払わなければ取引が成立しない」状態となってるらしい。これは一時的なもので、石油が世界経済を担っていることに変わりはないのだろうが、原油を武器にしている国や売却益で国家が成り立っている国にとっては死活問題であろう。経済展望はさておき、興味を持ったのは、一部のタンカーに搭載されている原油には買い手が決まっていないらしいことである。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、世界に約750隻あるスーパータンカーのうち1割は買い手がつかない原油の貯蔵に使われており、原油を積んで3月にサウジを出発したタンカーの一部は荷受け国が見つからずシンガポールやエジプトなどの近海に留まっているそうである。タンカーに限らず物流は、貨物の所有者(荷主)の依頼を受けて指定された場所まで輸送することで成り立っていると思うが、原油については荷主=石油精製業者ではないのだろう。素人考えであるが、原油の物流システムは先物市場で原油を仕入れた荷主(バイヤー)が高値で買い取ってくれる精製業者に売却するのだろうが、原油がだぶついている現在では買い取ってくれる精製業者がいないのだろう。既にアメリカでは精製業者の貯蔵施設(精製待ちの仮置き)も満杯に近いと報じられていることから、素人考えで今後を予測すると沿岸海域で遊弋待機するタンカーは今後さらに増加し、この状態が長く続くと傭船経費に耐えられない荷主が出て来て原油を満載したタンカーが漂流船と化すケースや、船内での中国コロナ蔓延で遊弋運航すら不可能なタンカーが出ることすら想定する必要があるのではないだろうかと危惧するところである。

 スーパータンカーという言葉は、世界最大のタンカーを示す非公式な用語であったが、現在では20万~30万㌧級(VLCC)、30万㌧級以上(ULCC)の船腹を指している。日本では1962(昭和37)年に建造された13万㌧の「日章丸」が当時世界最大のタンカーとされタンカー巨大化に先鞭をつけた。日章丸を建造したものの、修理に使用できる乾ドックは戦艦大和の入渠を考慮して作られた呉造船(旧海軍呉工廠)の第4ドックしかなかった。しかしながら同ドックはGHQの指示で扉船(ドック締め切りの蓋)は破却されて戦後長らく放置されていた。日章丸の修理のためには先ず第4ドックを復旧する必要があり、扉船建造・浚渫を行ったが20年近く放置されていたドック内を排水すると驚くほどの魚が採れ、入渠させるにあたってもドックの入口幅は日章丸の船幅よりも数十センチ広いだけであったことを工員さんから聞いた。日章丸が呉に入港した光景は今も鮮明で、自衛艦桟橋(呉港Fバース)から200メートルほどの距離を通過したが、まるで鉄の壁が動いているように感じた。現在のスーパータンカーは全長460m・幅70mにも及ぶので、今では日章丸は小さいタンカーの部類であろうが、日本人の心意気を示した日章丸という名称は誇らしく響いたものである。


金正恩氏の重篤説

2020年04月22日 | 北朝鮮

 北朝鮮の金正恩委員長の重篤説が取り沙汰されている。

 重篤説はアメリカのCNNが情報当局者の話として報じたものであるが、中国は重体(罹病は否定せず)を否定、韓国は全否定、日本は情報を分析中と分かれている。アメリカ政府は公式には沈黙しているが、先日トランプ大統領が「金委員長から素敵な手紙を受け取った」と発言したことに対して北朝鮮が即座に否定するという一幕を、コメント中の”手紙”を”情報”に置き換えれば、もしや?と思えるものである。金正恩氏は、反正恩の象徴となることを怖れて異母兄の正男氏を暗殺、父正日氏の側近であるとともに№2ともされていた伯父の張成沢氏を粛清する等、金正恩体制の強化に努めた結果、権力基盤は安泰と観られており、核兵器の保有とアメリカをも攻撃できる核の運搬手段保有に代表される先軍政治によって完全に軍部を掌握しているともされている。気の早い話であるが、金正恩氏亡き後の後継者はどうなるのだろうか。金正恩氏の周辺には、父母が同じ兄の正哲氏と妹の与正氏がいて、妻の李雪主氏との間には3人の子どもがいるとされるが年齢は10カ月〜7歳と幼い。正恩氏の兄の正哲氏はエリック・クラプトン以外には興味がない人物とされており、正日氏からも後継者として排除されたことを考えれば玉座につくことはないだろうが、金日成の孫という出自から権力闘争の神輿に乗せられる可能性はないとは言えない。妹の与正氏は数年前から王朝内で重用されてきたが、身内の引き締めとしての重用であろうと思われるので女帝にまで昇格することはないだろうが、幼児の後見人として実権を握ることもあり得る。北朝鮮の女性観や女権に対する考えが判らないが、後見人としてならば妻の李雪主氏にも注目すべきかもしれない。金正恩氏が後継者になった際には、スイス留学の経験から国際感覚を身に着けた指導者と受け取られ、一部には北朝鮮の変質をも期待する希望的な向きもあったが、実際には爆弾魔がより強大に育っただけであった。

 近代にあっても、フィリピンのマルコス氏(亡命)、インドネシアのスハルト氏(軟禁)、ルーマニアのチャウセスク氏(リンチ的銃殺)、イラクのフセイン氏(絞首刑)、等々、独裁政権が崩壊した例は数多いが、独裁権力を世襲できたのは北朝鮮とシリアのみである。独裁者と独裁者を支えた者は、崩壊後に訪れるであろう懲罰と報復を恐れており、前述の各国では一族や秘密警察の対する徹底的な報復が伝えられている。北朝鮮の圧政・被抑圧状況を考えれば、金王朝が崩壊した場合に起こるであろう報復は大規模・広範囲なもので、朝鮮族の特質を考えれば滅族に近い悲惨なものになるであろうことは想像に難くない。独裁崩壊後の運命を学習している北朝鮮の指導層は、指導者が誰になろうと、今後とも権力の世襲と先軍・圧政の道を維持するであろうと考える。


中国の裏技

2020年04月21日 | 中国

 中国の裏技2件が報じられた。

 1は、人工島のパラセル諸島を「西沙区」に、スプラトリー諸島を「南沙区」とする2つの自治体を新設したことである。自治体とは云え両区の人口はそれぞれ2000人程度で、民間人の定住を演出するための観光業者を除いて、大半は軍人若しくは軍関係者とされている。パラセル諸島はベトナムと、スプラトリー諸島はフィリピンとの領有権確執があり、特にスプラトリー諸島については国際司法裁判所が中国の主張を否定した状況下での暴挙である。2は、香港の1国2制度を形骸化して、香港を事実上の支配下に組み込んだことである。香港は返還時に中国との関係を明記した基本法を制定(中国との協定文書)し、中国政府所属の各部門は香港特別行政区の事務に干渉できないとされていた。これまでは、中国政府の「香港マカオ事務弁公室」と出先の「香港連絡弁公室」は中国政府の所属部門であるとの解釈で運用されていたが、ここに来て中国と香港の両政府が「それぞれの弁公室は中国政府の所属部門ではない」と解釈を変更したことによって、両弁公室は中国政府そのものとなり基本法の縛りから外れることになる。マカオの状況は伝えられていないが、同様の状態であろう。既に香港では、民主派議員の拘束が始っており返還後50年間保証されていたはずの1国2制度は、25年で事実上の終焉を迎えることとなる。顕在化した2件だけでも、中国は世界の監視の目と欧米の影響力が希薄となる時期を虎視眈々と狙っていたことが推測される。国連機関の4/15のトップに中国人が座り、WHOには薬籠中のエチオピア人がいる現在を好機と考えたものであろうか。

 物語風に書けば、遠謀深慮のもとに現今の状況を実現した習主席は、武漢感染症研究所に対してコロナウィルスの散布を命じた。感染初期に警鐘を鳴らした医師を譴責・隔離、WHOに送られた台湾のメールを黙殺させ順調に感染は拡大した。諸外国での十分な感染発生を知った習主席は、かねて計画・準備していた武漢市を隔離し、感染を湖北省に局限し得た。このことは、感染者の8割強が湖北省であり、湖北省以外では1万5千人(日本の現在の感染者数程度)しか感染していないことからも明らかであろう。習主席の思惑通り、世界は感染拡大に忙殺されて誰も人工島の行政区新設や香港・マカオの完全中国化に注意を払わなくなり、既成事実を積み重ねることに成功した。この作戦での中国人死者は3300人であるが、世界制覇を目指す習主席にとっては軽微な犠牲であろう。アフリカ諸国は駐中国使を通じて形ばかりの抗議をしたが、本国を債務漬けにしているので何等の痛痒も感じていないだろうし、一旦落ち込んだ経済も世界に先駆けて稼働を再開させることによってV字回復することだろう。唯一の気懸りはアメリカ高官が中国ウィルと呼び続け武漢研究所の調査を表明していることであるが、まだ隠し球を持っているので・・。自国民のわずかな犠牲で細菌テロを成功させた習主席は、毛沢東は建国と建設に数千万人に及ぶ犠牲者を要したが3千人の犠牲で中華覇権を実現した英雄と歴史の教科書(日本の検定教科書も含む。)に書かれるのかも知れない。


人気の消えた観光地報道は

2020年04月19日 | 報道

 人気の消えた観光地の映像が報じられることが多い。

 映像に付されたナレーション、記事、コメントでは、一様に「人出は例年の2割・・・」や「8割のキャンセル・・・」などとされることが多いが、報道の真意は何だろうかと考えざるをえない。コメントを逆に見れば、政府が緊急事態宣言の範囲を全国に拡大し外出自粛を強力に要請している今も、少ないながらも観光地を訪れたり予約通りに飲食・宿泊する人が存在することを伝えるもので、その不届き者を糾弾する報道か、地元観光産業の救済を求めるための報道か判然としない。おそらく報道する側は、事実を伝えているのみで解釈は受け手の意志に任せると云うのだろうが、これほど意味を持たない報道に取材クルーを動かし、紙面や電波を使用することに何の違和感・不条理を感じないのだろうか。映像は文字以上の情報と影響力を持つと云われているので人気の消えた観光地の映像から、自分も外出を自粛しなければと決意を新たにする人がいる半面、まだ人が出かけているのならば自分も外出をと付和雷同する人、観光業者が困っている今こそ出かけなければとの侠気に走る人も出ると思う。こうしたことから考えれば、人気の消えた観光地報道は混乱を引き起こし、読者・視聴者の不安感を助長するだけのもので、無意味以上に害の方が大きいと思う。新聞等の活字媒体では、紙面の空白を防ぐために多くの人には価値のない情報を「埋め草記事」と称して掲載していると云われるが、昨今の新聞やニュースショーの大半は埋め草記事的なものと云っても過言ではないだろう。電波・活字媒体を問わず大手マスメディアの購読・視聴が漸減傾向にあるとされて久しいが、安易な埋め草記事を漫然と垂れ流し続けるならば趨勢を覆せることはないだろう。在宅時間が増えた今こそ、読み応えのある・見応えのある紙面や番組にして欲しいものである。

 購読している産経新聞では、コロナウイルスの感染・死亡者数はジョンズホプキンス大学の資料とされている。情報源がWHOでも厚労省でもないので、不審に思って調べてみたら、同大学は1876年に世界初の研究大学院大学として設立され、医学部が最も有名で10年以上US No.1ホスピタルの地位を継続し公衆衛生については他大学院を圧倒していることを知った。さらには36名以上のノーベル賞受賞者を輩出し、新渡戸稲造博士も籍を置いた超名門研究機関である。WHOが政治(中国)色に染まっている現在、世界中に散らばる卒業生のネットワークに依る同大学の資料が一番信頼できるのだろう。日本にも世界をリードするような研究機関が欲しいなァ。


耐乏生活かな

2020年04月18日 | 歴史

 本日は、昭和の遺物である家計音痴のたわごとである。

 中国ウィルスの影響で家計が苦しくなったという主婦の家計簿がテレビで紹介された。家計を圧迫しているのは、夫子が在宅することによって生じる光熱水料費と食費であるとしているが、とりわけ疑問に思った点は「テイクアウト費用」が外出自粛以前の3倍となっていたことである。光熱費が増加するのはやむを得ないと思うが、食費については夫の昼食代、給食費、外食費、遊興費などと相殺可能な額ではないだろうか。主婦の手料理だけでは飽きるので外食産業のテイクアウトの利用回数が増えるのは致し方ないとは思うが、家計逼迫とする実情の大半は「従前の生活を維持するには不足」ということではないだろうか。勿論、外出自粛以前もぎりぎりの生活であったが、収入の激減で本当に困っている家庭もあるとは承知しているが、肉や魚がめったに食卓に並ぶことがなかった戦後に幼少期を送った世代も何とか生きていることを考えれば、国民も気持ちを切り替えて「耐乏生活」に切り替えるべきでは無かろうかと考える。マクロに見れば、個人消費の低迷が日本経済に与える影響は大きいのであろうが、今は個人防衛、大げさに言えば中国ウィルス禍を生き抜くことが大事であり、そのためには生活の質を落とす必要があると思う。離婚・倒産・災害で生活が激変する例を耳にするが、大方の人はそのような経験を積むことはない。かって曽野綾子氏が現代人とりわけ都市生活者はサバイバルの力を失っていると書かれていたが、今こそサバイバル術を体得・会得する好機と前向きの捉え、家計のぜい肉落としを考えるべきであると思う。在宅している子供とともに、こまめにスイッチを切る、食品ロスをなくす、嗜好品の回数を減らす、国産牛をアメリカ産に変える、そんな省エネ・省資源を考えるだけでも有事の心構え、サバイバル術の涵養・伝承ができるのではないだろうか。

 飽食の時代、物余りの時代に生活レベルを落とす耐乏生活は、困難ではあろうが不可能ではないと思う。我々は、”武士は食わねど高楊枝”と矜持を以て生きた侍の末裔であり、鍋・釜を砲弾に変えて強国アメリカに挑戦した父祖の子孫である。未曾有の国難に協力する覚悟を自家薬籠に収め、耐乏生活を心掛けるならば中国ウィルス戦の勝利に貢献できるのかとも思う。スロットルを止めて1か月、パチンコ屋の再開を密かに願う虫がうごめき・ささやきかける。いかん・いかん、耐乏生活は”隗より始めよ”と自戒するが、アンタは我が家の隗じゃないと冷笑する妻の顔が見える。