昔から続く日本の伝統芸能(歌舞伎、狂言、人形浄瑠璃、落語・・・等等)は調べてみればけっこう多い。その中でも、歌舞伎なんかは今でも大衆文化として多くの人々が愛好しているが、中には俺の文化意識に対する低さが原因なのかもしれないが、あまり聞き慣れない伝統芸能もある。現在の大阪市長は頭の中を競争論理が支配しすぎて、俺と同じく伝統芸能に対して関心が低いようだが、昔から利益率に流されることなく細々と脈々と続く伝統芸能の奥深さをじっくりと堪能できる年に今年はしたいものだ。
さて、お隣の国の中国の伝統芸能といえば京劇。京劇の役者を通して、激動の中国の近代史を振り返ることができるのが今回紹介するさらば、わが愛/覇王別姫。日中戦争から国共内戦を経て文化大革命に翻弄される中国の人々の様子が描かれている(1920年代半ば~1960年代後半)。
世界史の授業でも学べるように、たびたび王朝の興亡を繰り広げる中国の歴史。王朝が変わるたびに前王朝の行いを即否定してしまうことをモットーとする易姓革命を生業とする中国だが、そのダイジェスト版を本作で観ることができる。
激動の中国の時代とリンクしたかのように男同士が繰り広げる愛憎劇の様相が伝わってくるストーリーとはいかなるものか。
1924年の中国、北京において。娼婦の子である小豆子(レスリー・チャン)は捨てられたのも同然で京劇の劇団に入れさせられてしまう。同じような境遇の男の子ばかり集まっている劇団の中で、苛められてばかりの小豆子(レスリー・チャン)を助けているのが石頭(チャン・フォンイー)。いつしか小豆子(レスリー・チャン)は何時も助けてくれて、頼もしい石頭(チャン・フォンイー)に対して、同性愛的な親しみが湧いてくる。
京劇の厳しい訓練を経て成人した2人は、程蝶衣(レスリー・チャン)と段小楼(チャン・フォンイー)と芸名を名乗り、一躍京劇界のトップスターとなる。彼らのコンビが演じる覇王別姫(四面楚歌で有名な項羽と虞姫のストーリー)は北京においても大人気。しかし、段小楼(チャン・フォンイー)に菊仙(コン・リー)というカノジョが出来てからは、程蝶衣(レスリー・チャン)と段小楼(チャン・フォンイー)の仲はギクシャクしだすのだが、そんな折に日本軍が北京を占領。度重なる時代の変遷に京劇及び2人は激しい運命に巻き込まれていくのだが・・・
前半は少年の劇団における厳しい修行時代が主に描かれている。しかしながら、俺が見たところ修行とは名ばかりで、ただ今の体罰教師もビックリの暴力指導。厳しい訓練が描かれていたはずだが、俺の記憶ではお尻をペンペン叩かれているシーンしか思い出せない。しかし、程蝶衣(レスリー・チャン)が度々台詞を間違ってしまうシーンがあるのだが、この辺は日本の宝塚劇団に似たような苦しみ、厳しさを京劇という中国の伝統芸能から感じることができる。『人間は運命には逆らうことができない』なんて教訓じみた台詞が出てくるが、まさにその一端を示しているシーンと言えるだろう。
しかし、この映画が凄いのは現在でも人気のある女優コン・リーが登場してから。それまでは少々ホモセクシャルな友情、師弟関係といった仲の良い人間関係が少なからず描かれていたのだが、綺麗な女性コン・リーが登場してからは、あらゆる人間関係がボロボロ。愛憎、裏切り、告発のオンパレード、そして伝統抹殺。
確かにこの映画に登場している人物の行動は褒められた物ではない。しかし、激動の中国を生き抜くためには綺麗ごとだけでは無理で、時にはダーティーさを持ち合わせないといけないことが、この映画を観ているとよくわかる。自らの信念がぶれないことは良いことだと思うが、中国社会を生き抜くためには柔軟な思想転換も必要なのか。そんな社会において中国の伝統芸能として生きつづける京劇の底力をこの映画から感じることが出来る。
そして、この映画のストーリー構成が非常に巧み。覇王別姫の演目が現実とシンクロしていく様子は非常にレベルが高く、まるで映画の教科書を観ている感じにさせる。何はともあれ、中国を考えるうえで興味深い内容だし、新年1発目に観る映画(DVD)としてさらば、わが愛/覇王別姫はお勧めだ
監督はアジア圏のみならず世界的に有名なチェン・カイコー。彼のお勧め作品は純朴な中国人に泣けてくる北京ヴァイオリン、真田広之、チャン・ドンゴンなどアジアの有名スター出演の見た目からしてチャイナパワーを感じることができるPROMISE 無極が良いです。
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さて、お隣の国の中国の伝統芸能といえば京劇。京劇の役者を通して、激動の中国の近代史を振り返ることができるのが今回紹介するさらば、わが愛/覇王別姫。日中戦争から国共内戦を経て文化大革命に翻弄される中国の人々の様子が描かれている(1920年代半ば~1960年代後半)。
世界史の授業でも学べるように、たびたび王朝の興亡を繰り広げる中国の歴史。王朝が変わるたびに前王朝の行いを即否定してしまうことをモットーとする易姓革命を生業とする中国だが、そのダイジェスト版を本作で観ることができる。
激動の中国の時代とリンクしたかのように男同士が繰り広げる愛憎劇の様相が伝わってくるストーリーとはいかなるものか。
1924年の中国、北京において。娼婦の子である小豆子(レスリー・チャン)は捨てられたのも同然で京劇の劇団に入れさせられてしまう。同じような境遇の男の子ばかり集まっている劇団の中で、苛められてばかりの小豆子(レスリー・チャン)を助けているのが石頭(チャン・フォンイー)。いつしか小豆子(レスリー・チャン)は何時も助けてくれて、頼もしい石頭(チャン・フォンイー)に対して、同性愛的な親しみが湧いてくる。
京劇の厳しい訓練を経て成人した2人は、程蝶衣(レスリー・チャン)と段小楼(チャン・フォンイー)と芸名を名乗り、一躍京劇界のトップスターとなる。彼らのコンビが演じる覇王別姫(四面楚歌で有名な項羽と虞姫のストーリー)は北京においても大人気。しかし、段小楼(チャン・フォンイー)に菊仙(コン・リー)というカノジョが出来てからは、程蝶衣(レスリー・チャン)と段小楼(チャン・フォンイー)の仲はギクシャクしだすのだが、そんな折に日本軍が北京を占領。度重なる時代の変遷に京劇及び2人は激しい運命に巻き込まれていくのだが・・・
前半は少年の劇団における厳しい修行時代が主に描かれている。しかしながら、俺が見たところ修行とは名ばかりで、ただ今の体罰教師もビックリの暴力指導。厳しい訓練が描かれていたはずだが、俺の記憶ではお尻をペンペン叩かれているシーンしか思い出せない。しかし、程蝶衣(レスリー・チャン)が度々台詞を間違ってしまうシーンがあるのだが、この辺は日本の宝塚劇団に似たような苦しみ、厳しさを京劇という中国の伝統芸能から感じることができる。『人間は運命には逆らうことができない』なんて教訓じみた台詞が出てくるが、まさにその一端を示しているシーンと言えるだろう。
しかし、この映画が凄いのは現在でも人気のある女優コン・リーが登場してから。それまでは少々ホモセクシャルな友情、師弟関係といった仲の良い人間関係が少なからず描かれていたのだが、綺麗な女性コン・リーが登場してからは、あらゆる人間関係がボロボロ。愛憎、裏切り、告発のオンパレード、そして伝統抹殺。
確かにこの映画に登場している人物の行動は褒められた物ではない。しかし、激動の中国を生き抜くためには綺麗ごとだけでは無理で、時にはダーティーさを持ち合わせないといけないことが、この映画を観ているとよくわかる。自らの信念がぶれないことは良いことだと思うが、中国社会を生き抜くためには柔軟な思想転換も必要なのか。そんな社会において中国の伝統芸能として生きつづける京劇の底力をこの映画から感じることが出来る。
そして、この映画のストーリー構成が非常に巧み。覇王別姫の演目が現実とシンクロしていく様子は非常にレベルが高く、まるで映画の教科書を観ている感じにさせる。何はともあれ、中国を考えるうえで興味深い内容だし、新年1発目に観る映画(DVD)としてさらば、わが愛/覇王別姫はお勧めだ
さらば、わが愛 覇王別姫 [DVD] | |
レスリー・チャン,チャン・フォンイー,コン・リー | |
角川書店 |
監督はアジア圏のみならず世界的に有名なチェン・カイコー。彼のお勧め作品は純朴な中国人に泣けてくる北京ヴァイオリン、真田広之、チャン・ドンゴンなどアジアの有名スター出演の見た目からしてチャイナパワーを感じることができるPROMISE 無極が良いです。
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