だいたいスターがたくさん出演している映画といえば、その殆どが失敗作品と思って間違いない。しかし、映画の世界にも例外というのもあり、まさに今回紹介する映画愛と精霊の家がそれだ。本作は今でも主演級の女優として活躍するメリル・ストリープやグレン・クローズ、ジェレミー・アイアンズといった実力派が出演し、本作時には既に大ベテランの域に入っていたアーミン・ミューラー=スタール、ヴァネッサ・レッドグレイヴといった名優たちが出演しており、当時の若手としてアントニオ・バンデラス、ウィノナ・ライダー、ヴィンセント・ギャロと言った面々が出ている。そして本作の優れているのが内包するテーマの多様性が挙げられる。生と死、愛と憎悪、家族の絆、政治、そして一見どうでも良いような超能力まで描かれている。
南米のチリを舞台にした映画だが、描かれている内容はワールドワイドに通じるテーマがあり、日本人にも考えさせられる内容が含まれている。現実の世界においても醜い対立があり、何かと争いが絶えない。本作はその辺りの描き方が、残酷かつパワフルで観ていて怠さを感じさせない。本作で見せる対立は、身分の違い、政治的イデオロギー、貧富の格差、世代間の違い等など。現実の世界でも未だにこのような対立があり、やられたらやり返すの復讐、報復が後を絶たない。お隣の国の大統領も何を勘違いしているのか報復にでるぞ、なんて叫んでいる。
現実の世界は前述した通り、あらゆる対立が生み出されたり、さらに激化したりで、俺自身がこの世に生きてて嫌になることが多々あるが、本作が導き出す世界もやはり絶望か、それとも希望か。
チリのある一家を通して半世紀にも渡る激動のストーリーの紹介を。
1928年のチリにおいて。政界、財界において権力を持つ名家であるトルバエ家。政界のトラブルに巻き込まれ長女のローザが毒殺される。まだ幼い次女のクララ(メリル・ストリープ)は超能力をもっており、あらかじめ予知能力で、そのような悲劇が起きることを想像していながらも助けられなかったことにショックを受け、それ以来すっかり口を閉ざしてしまった。
ローザの婚約者であったエステバン(ジェレミー・アイアンズ)は彼女の死にショックを受けるが、それをバネに20年間働きづめて大農園を作り上げる。故郷に戻ったエステバンはすっかり大人の女性になったクララと愛し合い結婚し娘ブランカ(ウィノナ・ライダー)を授かる。しかしながら、次第にエステバンは権力を握り、横暴になっていくのだが・・・
観ている最中はベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『1900年』を思い出した。内容もチョット被っているしジェレミー・アイアンズ演じるエステバンだがあの映画のバート・ランカスターに風貌が似ていると思ったのが俺だけか。しかし、このエステバンの政治家になってからの横暴振りが凄い。自らの農場で働く労働者はこき使い、逆らう人間には銃を向ける。そして、嫁が居るのに外で女を孕ませて反省もせず、一緒に暮らしていた姉は邪魔だからと追い出し、嫁や娘にも手をだしてしまう。そりゃ~、こんなに相手の言うことに耳を貸さない独裁的な人間が現れたら社会主義が台頭するのも当然だ。当たり前だがこういう人間は次第に孤独になっていく。
しかし、一方でこんなバカ亭主に対しても愛を持って接するのがメリル・ストリープ演じるクララ。正直、こんな男をなぜ愛するのかと不思議に思ったりしたが、心の綺麗な人は相手の長所を見抜くのがうまい。全く役に立っていないような超能力を持っているのが不思議だったのだが、ここぞという時に超能力を発揮した場面は大いに感動した。俺なんかだったら超能力を私利私欲に利用してしまいそうだが、心の清い人は違う。そして、クララと横暴な夫エステバントとの距離感が抜群。ひたすら夫の暴力に耐えている女房が描かれているような映画もあるが、それはハッキリ言ってダメだ。実はこの映画には独裁者如きに立ち向かう勇気が描かれているのが気持ち良い。
そしてこの映画の最大のテーマは赦し。この赦しというのがわかっていてもできないし、俺なんかはとっても反省させられた。そして、この赦しが次の世代へ受け継がれていく過程に大いなる希望を感じさせる。本当にこの赦しの精神は見習いたいのだが、そうは言っても永遠に許せない奴が一人だけいる。
まあ観ている最中はメリル・ストリープのブリッコな演技にムカついたりしたが、途中からはそんなことを忘れて集中して観ることができた。他にも褒めるべき点があったように思うが、それは各自で確認してもらうことにしよう。
スターはスターでも名優達の豪華共演に酔いたい人、重厚な人間ドラマが観たい人、南米が舞台なのにラテン系の人間が少ないことが気にならない人、多くのテーマを深く読み解きたい人・・・等に今回は愛と精霊の家をお勧め映画として挙げておこう。
監督はデンマーク人のビレ・アウグスト。個人的にデンマーク人の映画監督は優秀だと認識しているが、そのように思わせてくれた監督さん。北欧の大自然の厳しさを感じさせるペレ、あのヴィクトル・ユゴーの普及の名作の映画化作品のレ・ミゼラブル、偉大なる政治家ネルソン・マンデラの知られざる実話を描いたマンデラの名もなき看守がお勧めです。
南米のチリを舞台にした映画だが、描かれている内容はワールドワイドに通じるテーマがあり、日本人にも考えさせられる内容が含まれている。現実の世界においても醜い対立があり、何かと争いが絶えない。本作はその辺りの描き方が、残酷かつパワフルで観ていて怠さを感じさせない。本作で見せる対立は、身分の違い、政治的イデオロギー、貧富の格差、世代間の違い等など。現実の世界でも未だにこのような対立があり、やられたらやり返すの復讐、報復が後を絶たない。お隣の国の大統領も何を勘違いしているのか報復にでるぞ、なんて叫んでいる。
現実の世界は前述した通り、あらゆる対立が生み出されたり、さらに激化したりで、俺自身がこの世に生きてて嫌になることが多々あるが、本作が導き出す世界もやはり絶望か、それとも希望か。
チリのある一家を通して半世紀にも渡る激動のストーリーの紹介を。
1928年のチリにおいて。政界、財界において権力を持つ名家であるトルバエ家。政界のトラブルに巻き込まれ長女のローザが毒殺される。まだ幼い次女のクララ(メリル・ストリープ)は超能力をもっており、あらかじめ予知能力で、そのような悲劇が起きることを想像していながらも助けられなかったことにショックを受け、それ以来すっかり口を閉ざしてしまった。
ローザの婚約者であったエステバン(ジェレミー・アイアンズ)は彼女の死にショックを受けるが、それをバネに20年間働きづめて大農園を作り上げる。故郷に戻ったエステバンはすっかり大人の女性になったクララと愛し合い結婚し娘ブランカ(ウィノナ・ライダー)を授かる。しかしながら、次第にエステバンは権力を握り、横暴になっていくのだが・・・
観ている最中はベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『1900年』を思い出した。内容もチョット被っているしジェレミー・アイアンズ演じるエステバンだがあの映画のバート・ランカスターに風貌が似ていると思ったのが俺だけか。しかし、このエステバンの政治家になってからの横暴振りが凄い。自らの農場で働く労働者はこき使い、逆らう人間には銃を向ける。そして、嫁が居るのに外で女を孕ませて反省もせず、一緒に暮らしていた姉は邪魔だからと追い出し、嫁や娘にも手をだしてしまう。そりゃ~、こんなに相手の言うことに耳を貸さない独裁的な人間が現れたら社会主義が台頭するのも当然だ。当たり前だがこういう人間は次第に孤独になっていく。
しかし、一方でこんなバカ亭主に対しても愛を持って接するのがメリル・ストリープ演じるクララ。正直、こんな男をなぜ愛するのかと不思議に思ったりしたが、心の綺麗な人は相手の長所を見抜くのがうまい。全く役に立っていないような超能力を持っているのが不思議だったのだが、ここぞという時に超能力を発揮した場面は大いに感動した。俺なんかだったら超能力を私利私欲に利用してしまいそうだが、心の清い人は違う。そして、クララと横暴な夫エステバントとの距離感が抜群。ひたすら夫の暴力に耐えている女房が描かれているような映画もあるが、それはハッキリ言ってダメだ。実はこの映画には独裁者如きに立ち向かう勇気が描かれているのが気持ち良い。
そしてこの映画の最大のテーマは赦し。この赦しというのがわかっていてもできないし、俺なんかはとっても反省させられた。そして、この赦しが次の世代へ受け継がれていく過程に大いなる希望を感じさせる。本当にこの赦しの精神は見習いたいのだが、そうは言っても永遠に許せない奴が一人だけいる。
まあ観ている最中はメリル・ストリープのブリッコな演技にムカついたりしたが、途中からはそんなことを忘れて集中して観ることができた。他にも褒めるべき点があったように思うが、それは各自で確認してもらうことにしよう。
スターはスターでも名優達の豪華共演に酔いたい人、重厚な人間ドラマが観たい人、南米が舞台なのにラテン系の人間が少ないことが気にならない人、多くのテーマを深く読み解きたい人・・・等に今回は愛と精霊の家をお勧め映画として挙げておこう。
愛と精霊の家 [DVD] | |
メリル・ストリープ,ジェレミー・アイアンズ,ウィノナ・ライダー | |
パイオニアLDC |
監督はデンマーク人のビレ・アウグスト。個人的にデンマーク人の映画監督は優秀だと認識しているが、そのように思わせてくれた監督さん。北欧の大自然の厳しさを感じさせるペレ、あのヴィクトル・ユゴーの普及の名作の映画化作品のレ・ミゼラブル、偉大なる政治家ネルソン・マンデラの知られざる実話を描いたマンデラの名もなき看守がお勧めです。