職場へ行くと、投票箱らしき物が設置されていた。
「何なんだ、これは。」
岸辺さんと、今日一日の仕事を終え、勤務表に時間を記入して、いよいよ帰ろう、というとき、南副店長が紙切れ二枚を持って、やってきた。
「ちょっと、岸辺さん、鈴木さん。帰る前に、これを書いて帰って」
「帰る前って、今!?」
と、私。
「今月のベストスマイルさんを一人選んで、投票してください。部門と名前をかくこと。」
私は思わず叫んだ。
「そうだ、岸辺さん!」
すると、南副店長も叫んだ。
「あ、岸辺さん、自分の名前は書かないようにね。」
一瞬の沈黙。
私達二人は、真剣に考え始めた。
社員二人、(副店長と西村チーフ)の他、カトちゃんも周囲にいるのだ。
誰を投票したか、すぐバレるではないか。
なんと言っても、すぐそばで、見てるんだからねえ。
岸辺さん、と書いたら、本人が自分で投票したと思われかねないしねえ。
身内(食品係)のスタッフ一人選ぶのも気が引けるし。
その内、岸辺さんは、ある人を選んだ。
他の部門のチーフだ。
(えっ?グロッサリーのカトちゃんじゃないの!?)と、内心、思ったが・・・。
「でも、漢字が分からんね。」
すると、横で見ていた西村チーフが教えていた。
「あなたも さっさと書きなさい。」
と、岸辺さん。
(だから、一人だけ、選べないんだってば!一人じゃないもん。複数だもん。それに、見られてたら書きにくいよー)
まず、エントリーナンバー、1番。西村チーフ。
ちょっと、はにかんだような宮崎スマイル。(彼は宮崎出身)
エントリーナンバー2番。南副店長。こちらは太陽じゃ。
一人、うーん、うーん、と悩んでいると、岸辺さんが呟いた。
「あっちで、社員がバトルとか言ってるよ!」
まさか、俺を投票して!ってわけじゃ、あるまいしね。
二人して う~ん。こりゃ、益々困った。
ここは一つ、公平に。
今回は身内からではなく、他の部門から選出すると致しましょう。 ・・・と、言う訳で。
「精肉のチーフ、名前何でしたっけ?」
と、私。
「ああ、あの人も、感じいいね。」
そういう訳で、こうなりました。
ごめんよ、グロッサリーの皆さん。
特に、副店長とチーフ。
次回は、その場を離れて下さい。そうしてくれたら、あなた方のどちらかの名を書きます。
さて、後日談。
「政治家の選挙じゃあるまいし、誰が自分の名前を書くかね。副店長、私の事、そんな人って思ってるんかね?」
と、岸辺さん。
翌日、会った矢木さんによると、他の人にも、言っていたらしい。要するに、副店長のジョーク。良かったですね、岸辺さん。
矢木さん、いわく、
「私も投票用紙、もらったけど、投票して帰るの、忘れてたわ。南副店長の名前を書いて、周りに いっぱいハートマーク つけようと思ってたけど 」
あらら、南副店長、ここでも票を逃しましたね。副店長になスタッフが たくさんいるのに残念。来月に期待しませう。