天地人、天地人・・・・、同じ字を並べてナンジャラホイと思われたことでしょう。
偶々、ある書家の「天」の字が入ったお手本を練習していたら、
この「天」の字について他の書家はどういう字を書かれているのだろうと思いつきました。
手持ちの漢字の字典やネット上の字典も当ってみました。
当然のことながら、多くの書家がそれぞれの「天」を書いておられました。
折角ですので、いろんな方の「天地人」三文字を書いてみようと試みたのが今回の練習作品です。(半切2/3弱大)
こういう試みは他に見たこともなければ、やったこともありません。
どういう意味があるのかなど、あまり考えることもなく、とにかく始めてみました。
自分が“いい字だな”、“真似してみたいな”と直感した方たちの字を選ばせていただきました。
変則的な右からの横一線ですが、
上の四つは、三文字とも同一の方が書かれたもの、
下の三つは、三文字それぞれが別人であります。
それぞれ、「天地人」として纏めて書かれていたものでなく、
[天・地・人]が別個に書かれていたものを集めたものです。(松本先生は“行書指針”から纏めたものを)
書家については、下の通りです。(こちらの名前は左から)
高塚竹堂先生の「書道三体字典」は二十数年前から利用させてもらっている、言わば自分の愛読書です。
松本芳翠先生の行書や草書の作品は、拙ブログでも何回もお手本にさせていただいています。
右下 空海と嵯峨天皇は平安初期の三筆のうちの二人で、「角川 書道字典」から引用させてもらいました。
王義之、文征明その他は中国の著名な書家で、上の「角川 書道字典」のほか、多くはネット上の字典(中国版)から拾い出しました。
名立たる書家の方の字、数世紀に亘って輝き続けているのですから、
それぞれが素晴らしいものです。
これを素人が稚拙な字で臨書するのですから、畏れ多いこと、この上ない話であります。
それぞれの方の特徴など自分には的確には表現できませんが、
それでもこういう試みをやってみて、それぞれの字に共通するものや、
微妙な違いなどの一端を垣間見ることができ、
独り喜びを感じている自分であります。
「天」においては、全体としての“天”に向かう姿といいますか、
この字には堂々たる様とか広大な世界を求めてしまいます。
第一画と第二画、第三画と第四画の呼吸の合わせ方、
中でも第四画のおさめ方などが気にかかります。
「地」においては、全体としてのドッシリ観でしょうか。
大地の懐の深さや厳しさも伝わってくるようです。
偏と旁の連接の仕方や第五画の下への突き刺さり方、
最終第六画の受け止め方、横への広がり方にも着目です。
「人」においては、まずこの複雑極まりない人間を、
わずか二画で表現してきたその知恵に感服です。
第一画が頭と手を、第二画が胴体と足を、という説と
人と人とが支えあった姿だとする説などがあるようです。
複雑なものをわずか二画で・・・いろいろなイメージが膨らんできます。
厳しさと優しさ、剛と柔、強さと脆さ・・・品性までを求めたら酷でしょうか。
先人たちはこういうことを、第一画と第二画の交差の仕方、
線質や線の太細や長短による味付け等々で表現しているのですから驚きです。
ある特定の方のお手本からはちょっと離れて、
複数の書家の字を集字し、対比しながら書いてみる・・・
あるいは、ある漢字をどう表現するか考えてみる・・・
こういう試みも偶にはいいかなと思います。
長文、失礼をばいたしました。
[補記]
所要のため(病気ではありません)、
しばらくブログのアップを休ませていただきます。
(次回アップは10.28(月)を予定しています)
コメントを読んでまたびっくり、すごい発想で文字を極めてゆく、求道者の雰囲気を感じます。
天・地・人、この半生折に触れ接してきた言葉ですが、コメントを読みその深い洞察に感心しきりです。
改めての掲載を楽しみにしています。
それから人、天の2画の字の持つ意味には言われるとおり、感心しました。