健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

学歴と病気

2013-07-10 08:30:54 | 研究
多発性硬化症について興味深い記事がありました(QLife Pro)。多発性硬化症とは、脳や脊髄の神経の病気で、炎症によって神経細胞の一部が壊される「脱髄」という状態が起こることで、神経細胞同士のコミュニケーションがうまく出来なくなってしまうもので、その結果麻痺やしびれが起こりるもの。炎症と脱髄のメカニズムはまだ明らかになっていませんが、免疫の異常と考えられています。日本では、5000人前後の患者さんが苦しんでいる特定疾患認定の難病。女性に多く、八割方が10代後半から20代で発症。認知機能に障害が起こることも知られています。これまでの調査で、ボキャブラリーが豊富な人では、障害の度合いが少ないことが知られていましたそうですが、今回イタリアの調査結果で、学歴が高くなるにつれて多発性硬化症の症状の度合いが低くなるという事実が指摘されましたそうでう。日常生活での頭(脳)の使い方にも影響があるのではないかと目をつけた調査チームは、今回は、ボキャブラリーではなく、学歴や職歴に注目したそうです。仕事の内容に関しては頭脳労働者は、アルツハイマー病のリスクを減らすという報告もあるため、認知機能に対するプラスの影響があると考えたそうです。50人の多発性硬化症の患者さんを対象に調査を行った結果、50人のうち、高校教育かこれより低い学歴の人が17人、33人が大学教育を受けていました。また、全員が、座り仕事についていましたそうですが、単純作業をしている人と、頭脳労働をしている人がいたそうです。高卒以下で単純作業、高卒以下で頭脳労働、大卒以上で頭脳労働の3つに分けたところ、高卒以下の人たちは単純作業でも、頭脳労働でも、認知機能の評価の結果に差は見られなかったそうですが、同じ頭脳労働をしている人たちでは大卒以上の人の方が認知機能の評価結果が良かったというのです。したがって、仕事での頭の使い方とは別に学歴が何らかの影響を及ぼすことが分かったというもの。なぜ、学歴が影響するのかは明らかではないそうです。10代に戻って勉強することは、大人となった私たちにはかなわないことですが、将来の多発性硬化症にかかるリスクを予測したり、自覚症状について前もって知識を得て、病気の早期発見に努めるなど、今後様々な方法で健康管理に活かすことができるかも。また、これを機に他の脳神経の病気についても、学歴や仕事、そして頭の使い方といった日常生活の一面と病気との関係に関する調査も進む可能性が指摘されています。これまで学歴は、将来の仕事や安定や収入のためと考える人が多くいましたが、実は健康のためにもなるのかもしれなというのです。
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