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大リーグに挑む江夏投手に当確のランプが遂に点灯した。難関と思われた夢の大リーガーへ、日本人第2号として江夏が名乗りをあげるのは、ほぼ間違いない。4月4日、アメリカからの朗報を待つばかりである。投げる度に評価を上げ、3月24日のサンシティー球場で昨季のナ・リーグ覇者のパドレス戦に登板した江夏が思わずガッツポーズを作ったのは7回。二死満塁のピンチにケネディ選手を空振り三振に打ち取った瞬間だった。外角低目のチェンジアップで仕留めた。日本を飛び立って50日余り、初めて江夏に自信が溢れ出たようだった。「窮地に立った時にどういう投球をするかで投手の格は決まる。エナツはグレート(すごい)素晴らしい投手だ」と今まで江夏を半信半疑の目で見てきたバンバーガー監督が唸った。
日本を追われ窮地を自分の力だけで脱出し大リーガーへの当確キップを手中にしてしまった。ブ軍の人事権を握っているダルトン副社長は日本人大リーガー誕生を日本の記者から問われると「監督が75%と言うのなら私は76%と言っておこう」と海の向こうからやって来た男に早くもソロバンを弾いている。実はブ軍にとって江夏は縁起の良い選手なのだ。江夏が登板した3試合は全て勝利。今や江夏の存在は日本のマスコミだけでなく全米の注目を集めるようになった。昨夏から妻子と別居し自分の腕だけを頼りに厳しい生き残り競争を勝ち抜いてきた。江夏を直接スカウトしたポイデ・ビント(スカウト部長)も胸を張って「キャンプ当初の50%から今は90%になっている」と明言した。
" 大リーガー・江夏 " の可能性を米国のマスコミもこぞって言い始めた。AP電も当初は日本から来た太った男、くらいに冷ややかに報じてきたが今では投手陣10人の枠に残っていると示唆している。更に米国内では記事の内容が信頼されている雑誌『スポーティング・ニューズ』もここにきて当確のランプを点けている。最初は振り向きもしなかったスポーツマスコミが江夏の左腕に注目し始め「エナツ」の名は日ごとに全米に広がっている。日系人の多い西海岸のロサンゼルス・タイムス紙は4月早々に江夏特集を企画し特別取材体制を敷いている。技術的には通用する事が証明された江夏にこの後、待ち受けている試練はスタミナについての最終確認だ。
大リーグの試合に引き分けはない。そのうえ強行スケジュールが組まれている。試合展開がもつれれば深夜近くまで行なわれ、そのまま移動そしてまた試合が行われる。更に江夏には未体験の時差もある。そうしたものに江夏が耐えられるか否かをテストする。心臓疾患の過去があるだけに間隔を詰めて実施される最終テストをクリアするのは並み大抵ではない。そして例え大リーガーとして契約できても大リーグには「外国籍の選手は必ずマイナーを経由しなければならない」という労使協定が存在する為に晴れて大リーガーとしてマウンドに立てるようになるには時間がかかる。ブ軍の本拠地のミルウォーキーの気温は4月でも低い。江夏の体調を考慮すれば大リーグデビューは5月にずれ込む可能性が高い。