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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 733 週間リポート・中日ドラゴンズ

2022年03月30日 | 1977 年 



男・星野の目に涙が光った
開幕戦の巨人戦で手痛い連敗を喫した中日。与那嶺監督はじめ選手らは重い足取りで新幹線に乗り込み名古屋へ戻った。エースの星野投手もその一人だがシュンと落ち込む他の選手とは少し違っていた。星野は「(巨人戦の登板は)2イニングだけだったから名古屋での阪神戦はオレが投げなきゃイカンかもしれない」と自分に言い聞かせていた。新幹線に乗り自分の席に座っている星野のもとに中山投手コーチが近づきこう言った。「センよ、ナゴヤ球場での阪神戦いけるか?」と。「ハイ、いけます。投げさせて下さい」と男意気に感じるタイプの星野は二つ返事でOKした。だがこの時、咄嗟に返事したものの星野は自分が先発で投げて勝てる自信は無かった。

「とにかく連敗を脱してチームに勢いをつけるには何が何でも自分が投げまくる以外ないのだ」これが星野の気持ちだった。こうして星野はナゴヤ球場のマウンドに立った。昨季ケガをした右足はまだ万全ではなく気になったがそれを気力でカバーして投げ5対1で勝利した。阪神最後の打者の遠井選手を併殺打に仕留めると誰かれとなく握手、握手、握手。お立ち台で突き出されたマイクを前にすると両眼から涙がとめどなく溢れ出た。昨年ケガをした8月以来、9ヶ月ぶりの勝ち星は今季チーム初勝利だった。「優勝した時さえ泣かなかったのに…なぜこんなに涙が出るのかなぁ。とにかく嬉しいです。もう、投げられただけで満足です」


頭に当たって目が覚めた?
4月7日の対阪神2回戦で谷村投手の手元が狂った投球が谷沢選手の頭を目がけて飛んで来た。思わず顔を隠すように逃げた谷沢だったが球はヘルメットの後部にゴツン。バッタリと倒れた谷沢はピクリとも動かない。そのまま担架で運び出されて病院へ。チームは開幕以来不調、そこへ昨季の首位打者が倒れたとあって与那嶺監督は真っ青に。思わずベンチから飛び出してマウンドの谷村に掴みかかろうとするところを周りがどうにか抑えて事なきを得た。

ヘルメットに当たった球が大きく跳ね返ったのを見た高木選手は「大きく跳ねたから大した怪我にはならないと思うよ。球がポトリと足元に落ちた時が危ないんだ」と自身も巨人の堀内投手から頭部へ死球を受けた経験があるだけに説得力のある発言をした。その言葉通り病院で一夜を過ごしただけで翌日には復帰し練習に加わった。「大きなコブができたけど一晩でだいぶ小さくなった。あれが10cmくらい下に当たっていたら大変だったと医者に言われたよ。運が良かった」と後遺症の心配も無さそうだ。

さて死球から2日後の対巨人3回戦はチームは負けたが、谷沢はライト投手から右翼席へ第1号2ランを放ち一矢を報いた。これが谷沢にとって今季5試合目にして初打点だった。「ランナーがいる時もう一つシックリこなかったが、この一発でスカーッとしました。次は僕が打って勝利したいですね。まぁあのデッドボールは痛かったけど、あれが大当たりのきっかけになれば痛みくらい何でもないです。ハハハ」と。頭にゴツンと喰らって谷沢のバットがようやく目を覚ましたのかも。


堂上は白星プレゼント魔?
勝負の世界は非情なもの。その主役を二度も続けて演じたのは堂上投手と鈴木孝投手。5月10日の対阪神4回戦で今季二度目の先発登板した堂上は8回表まで投げてスコアは2対1。1点のリードで最終回を鈴木孝に託し、ベンチの片隅でジッと立ち尽くし祈るような眼差しで鈴木孝を見つめていた。二死無走者。「よし、これでオレもやっと片目が明くな」と堂上は勝利を確信していた。ところがラインバック選手が二塁打を放ち、続く田淵選手の中前適時打で同点となり、堂上の勝ち星は消えた。

「しまった。またやってしまった」鈴木孝が " また " と言ったのには訳がある。9日前の対広島6回戦で鈴木孝は6回表から同じく堂上をリリーフ登板した。4対1と3点リードだったが7回表に衣笠選手に同点3ランを浴びて堂上の勝ち星を消してしまった。しかも2試合とも中日が9回裏に逆転サヨナラ勝ちして、いずれの試合も勝ち投手は鈴木孝だったのだ。サヨナラ勝ちに沸くロッカールームで2人だけはまるで別世界にいるかのように沈黙を続けた。

「すみません、すみません」堂上の顔を見た鈴木孝は張り付いたような表情でこう言うのがやっとだった。「いいさ、仕方ないよ。でも今日こそは大丈夫だと思ったけどなぁ」と言う堂上の表情もまた硬かった。今季は先発にロングリリーフ、更に昨年と同じような抑えの切り札役まで務める鈴木孝は、今一つ調子が上がらず苦しんでいる。そんな鈴木孝の勝ち星が増え、一方の堂上は調子自体は良いのに勝ち星に恵まれない。違った意味の歯がゆさを感じている2人である。

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