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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 772 後期展望・近鉄バファローズ

2022年12月28日 | 1977 年 



陽の目を見ない人たちの為に戦った
「肩書も付かず安月給でいつの日も陽の目を見ないで寂しい毎日を送っている人。苦労して人一倍働いているのに認められない人は世の中に沢山いる。そんな人たちに、やれば出来るんだという希望の灯を見つけだしてもらう。私はそんな試合をしたい」というのが西本監督の念願なのである。毎年最下位候補と言われたのは昔のことだが西本監督が阪急から近鉄に移った当時は近鉄はまだ万年Bクラスの球団だった。「世の中には屈辱と戦っている人は多い」と西本監督は言うが、阪急時代五度パ・リーグを制しても日本シリーズでは巨人に勝てなかった西本監督もその一人かもしれない。

近鉄は4月29日から1ヶ月間、首位に立ちながら前期終盤に失速し優勝争いから脱落した。「給料の安い、しかも技術の未熟な若い連中が一生懸命に試合に臨んだが及ばなかった」と西本監督は実力不足を素直に認めるが後期では再び優勝へチャレンジを試みる。しかも後期への期待も当然わいてくるところだが、西本近鉄の利点はいろいろとある。➊故障者が少なく選手層が若い ➋絶対的エース・鈴木啓投手の存在 ➌外人勢が夏場に強い ➍阪急や南海はベテランが多く夏場はスタミナ切れの不安がある、など。羽田・平野・栗橋・佐々木恭選手らイキの良い若手選手の進境著しさを考えると阪急や南海打線に負けない強力打線だ。


スタミナの戦いなら任せろ!
近鉄の強みは投手陣の安定だ。前期シーズンは開幕スタートに失敗すると立て直しに苦労する。後期シーズンは夏場の打線の活躍、秋口の投手力の充実が不可欠の要素となってくる。その点で一番整備されているのが近鉄である。「阪急は前期優勝で選手間に安心感が充満しきっている。阪急は前期終盤の苦戦で疲れが残りプレーオフに備える態勢をとるに違いない。ウチが優勝を逃した原因は対阪急戦に大きく負け越した事。無理をしない阪急相手に五分の戦いが出来れば後期優勝のチャンスは大いにある」と近鉄首脳陣は話す。

明けても暮れても練習・練習に余念のない西本式スパルタ訓練で選手のスタミナは充分ついているからチームが夏バテする心配はまずない。それに前期終盤に急上昇した日ハムが雨天中止による日程変更で勢いをそがれてしまったので、近鉄が足をすくわれる心配がなくなった。潜在能力の高い若手選手の台頭もあり物量とスタミナの戦いになれば近鉄有利な展開になるだろう。残る問題はやはり経験不足による大舞台というか雌雄を決する大勝負に弱いという点ではないだろうか。

「ウチの連中は大事な場面になると精神的に委縮してしまう。試合馴れしていない証拠」と西本監督は言うが、後期シーズンで期待しているのはむしろベテラン選手と外人の活躍だそうだ。前期シーズンではここぞという時に登板をかって出たエース・鈴木啓投手の起用を無理やり思いとどめて頑なに先発ローテーションを守り通していた。だが後期シーズンではその鈴木啓投手をフル回転させる覚悟だ。加えて米田・柳田投手の出番を増やし、外人の長打力に賭ける戦法に転向する腹づもりだ。不安材料の少ない近鉄に注目が集まっている。

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