
最近、美術関係者と話していて驚かされるのは、札幌国際芸術祭を見ていないという人が意外と多いことである。
ちょっと信じられない。
地元だぞ。
美術だぞ。
自分は、遠くの音楽祭へ行けといっているのではない。
地元の芸術祭に行かずに、どこに行くというのだ。
たとえ「現代アート畑」ではなくても、絵画でも陶芸でも書でも、美術に携わっている人は、全員見たほうがいいと断言したい。
北海道で、国際的な水準が標準になっている展示というのは、ほとんどこれが初めてといっていい。
東京であれば、世界各国を巡回する大型展が開催されることもあろうし、横浜などのトリエンナーレも以前から開かれている(あいちも、越後妻有も、比較的近い)。
しかし札幌でこの展覧会を見逃す手はないと思う。
とはいえ、もう会期末も迫っている。そして、この札幌国際芸術祭の最大の欠点は、会場が相互に離れていて、回るのが大変だということであり、今からすべてを見て回るのは不可能だ、という人もいるだろう。
そこで、「北海道美術ネット別館」では、独断と偏見、そして耳にした口コミを総合して、どこの会場を優先するべきかを考えてみることにする。
かつて首都圏のタウン誌として「ぴあ」と人気を二分した「シティロード」の映画クロスレビューに倣って、各会場を星の数でランク付けしてみた。
これは
★★★★★ 絶対に見る価値あり
★★★★ かなり面白かったです
★★★
★★ 面白さは個人の発見だから
★ どういうふうに見るかだね
というようなものだったが、どうしても一つが思い出せない(ご存知の方は教えてください)。
あと、各項目に記した時間は、筆者のかかった時間です。
1.道立近代美術館 ★★★★ (45分)
メーン会場は二つあるが、今回のテーマが「都市と自然」なので、まず「都市」サイドから見るのが望ましい。
しかし、これは別に、芸術の森美術館から見ることが絶対にダメだと言っているわけではない。
この会場は、ひとつひとつの作品が大きい分、「えっ、もう終わり?」感も大きく、いささか物足りなさも感じる。
そりゃね、筆者は、これまでの岡部やキーファーや畠山直哉の過去の仕事を知っているので、脳内のそれらを参照しながら「ふむふむ」と感心することもできる。
ただ、一般の人は、キーファーのすごさを知らない。この会場では、参照のしようがない。
うるさい説明文は、鑑賞の妨げになる。
かといって、手がかりがないのもつらいものである。
今回に限った話ではないが、なかなかむつかしい。
2.札幌芸術の森 ★★★★★ (1時間プラス霧の作品プラス屋外、なので2時間半見ておくと安心)
絶対に行くべきだ。
作品も大小、映像も陶芸も写真もあり、バラエティーに富んでいる。
考えれさせられるし、考えなくても楽しい。
短時間でも見られるし、じっくりでもいい。
屋外のスーザン・フィリップスも体験しておきたいし、そうなると、野外美術館で同時展示している「Sprouting Garden 萌ゆる森」も、いちばん奥の澁谷俊彦作品に感嘆し、佐藤忠良こどもアトリエの果澄さんと会田千夏作品にしみじみしたりして、どんどん時間がすぎていくだろう。もっとも「萌ゆる森」はまだしばらく開催してるので、安心です。
有島武郎旧邸の中と庭にも展示があるので注意。
中谷芙二子さんの霧の彫刻、筆者は4度も見た。必見。
館内の渡り廊下、玄関附近、工房附近と、見る場所によって印象が全く異なる。
3.北3条広場 ★★★★ (数分)
すぐに行けて、24時間見られて、すぐに見終わるんだから、見てない人がもしいたら、ぜひ。
アイヌ民族の聖地から運んできた巨石が、道庁のすぐ前に設置されるということの意味を、考えたい(テストじゃないんだから、答えはない)。
4.道庁赤れんが ★★★★ (30分)
掛川源一郎の写真と、伊福部昭の作曲世界の紹介。
いずれも在野のクリエイターといってよく、そういう2人が、官依存の風潮が意外と強い北海道の総本山みたいな会場で紹介されるというのもなかなかおもしろい。
展示の内容も興味深いが、館内のあちこちに展示された油彩の大作を見て、日本における神宮の絵画館の役割を、北海道でこの赤れんが庁舎が果たしていることが分かるだろう。ここは、北海道というナショナリティの本拠地なのだ。
会場を出ると、まっすぐ前に、北3条広場に設置された島袋さんの「一石を投じる」が目に入るのも、なかなか感動的な一瞬。
あと、朝早く(8時45分)から開いているというのは、1日をフルに活用したい人にとっては、ポイント高いと思う。
5.清華亭 ★★★★ (10~30分)
会期の長い展覧会だと、じわじわと口コミで人気を増していく作品というのがある。
清華亭の毛利悠子作品が、今回はまさにそれ。
古い空間で、札幌の歴史に思いをはせるのにぴったりのインスタレーション。穴場です。
6.モエレ沼公園 ★★★ (30分)
「坂本 龍一 + 真鍋 大度」は、参加型の作品で、相当の迫力と強度をもった作品だ。
じゃ、なぜ星3個なの? と言われそうだが、それは会場が遠すぎるから。
道外などの人で、モエレ沼公園自体を訪れることが目的ならいい(イサム・ノグチ基本設計というのは、それだけ集客力があるのだ)が、地元の人が行くと、作品を見るのに必要な時間に比べて、往復に時間がかかりすぎるのが難点。
7.500m美術館 ★★★★ (1時間)
これは大通 → バスセンターの順番で見よう。
解説文はそんなに一生懸命読まなくてもいいと思う。
8.チ・カ・ホ ★★★ (40分)
もう何らかの形で目にしている人が大半だと思うが、立ち止まってみたい。
露口啓二さんのスライドショーは、機会があったら、見てほしい。いまは、意味がわからなくても。
9.札幌市資料館
あ、ここで何をやってるのか、いまになるまでよくわかってないので、採点はパス。
10.暮らしかた冒険家 ★★ (不定)
現地に実際に足を運ぶよりも、道新夕刊の連載記事を読んだり、サイトのコラムを読んだりして、どうしてこういう、ぜーんぜんアートっぽくない夫婦のリノベーション物語が、国際芸術祭の正式な催しにカウントされているのかを、つらつらと考えるほうがためになるだろう。もちろん、時間に余裕のある人に「行くな」というつもりもないですが。
というわけで、9月28日までです。
急げ~!! なるべくたくさん見るのだ~!
ちょっと信じられない。
地元だぞ。
美術だぞ。
自分は、遠くの音楽祭へ行けといっているのではない。
地元の芸術祭に行かずに、どこに行くというのだ。
たとえ「現代アート畑」ではなくても、絵画でも陶芸でも書でも、美術に携わっている人は、全員見たほうがいいと断言したい。
北海道で、国際的な水準が標準になっている展示というのは、ほとんどこれが初めてといっていい。
東京であれば、世界各国を巡回する大型展が開催されることもあろうし、横浜などのトリエンナーレも以前から開かれている(あいちも、越後妻有も、比較的近い)。
しかし札幌でこの展覧会を見逃す手はないと思う。
とはいえ、もう会期末も迫っている。そして、この札幌国際芸術祭の最大の欠点は、会場が相互に離れていて、回るのが大変だということであり、今からすべてを見て回るのは不可能だ、という人もいるだろう。
そこで、「北海道美術ネット別館」では、独断と偏見、そして耳にした口コミを総合して、どこの会場を優先するべきかを考えてみることにする。
かつて首都圏のタウン誌として「ぴあ」と人気を二分した「シティロード」の映画クロスレビューに倣って、各会場を星の数でランク付けしてみた。
これは
★★★★★ 絶対に見る価値あり
★★★★ かなり面白かったです
★★★
★★ 面白さは個人の発見だから
★ どういうふうに見るかだね
というようなものだったが、どうしても一つが思い出せない(ご存知の方は教えてください)。
あと、各項目に記した時間は、筆者のかかった時間です。
1.道立近代美術館 ★★★★ (45分)
メーン会場は二つあるが、今回のテーマが「都市と自然」なので、まず「都市」サイドから見るのが望ましい。
しかし、これは別に、芸術の森美術館から見ることが絶対にダメだと言っているわけではない。
この会場は、ひとつひとつの作品が大きい分、「えっ、もう終わり?」感も大きく、いささか物足りなさも感じる。
そりゃね、筆者は、これまでの岡部やキーファーや畠山直哉の過去の仕事を知っているので、脳内のそれらを参照しながら「ふむふむ」と感心することもできる。
ただ、一般の人は、キーファーのすごさを知らない。この会場では、参照のしようがない。
うるさい説明文は、鑑賞の妨げになる。
かといって、手がかりがないのもつらいものである。
今回に限った話ではないが、なかなかむつかしい。
2.札幌芸術の森 ★★★★★ (1時間プラス霧の作品プラス屋外、なので2時間半見ておくと安心)
絶対に行くべきだ。
作品も大小、映像も陶芸も写真もあり、バラエティーに富んでいる。
考えれさせられるし、考えなくても楽しい。
短時間でも見られるし、じっくりでもいい。
屋外のスーザン・フィリップスも体験しておきたいし、そうなると、野外美術館で同時展示している「Sprouting Garden 萌ゆる森」も、いちばん奥の澁谷俊彦作品に感嘆し、佐藤忠良こどもアトリエの果澄さんと会田千夏作品にしみじみしたりして、どんどん時間がすぎていくだろう。もっとも「萌ゆる森」はまだしばらく開催してるので、安心です。
有島武郎旧邸の中と庭にも展示があるので注意。
中谷芙二子さんの霧の彫刻、筆者は4度も見た。必見。
館内の渡り廊下、玄関附近、工房附近と、見る場所によって印象が全く異なる。
3.北3条広場 ★★★★ (数分)
すぐに行けて、24時間見られて、すぐに見終わるんだから、見てない人がもしいたら、ぜひ。
アイヌ民族の聖地から運んできた巨石が、道庁のすぐ前に設置されるということの意味を、考えたい(テストじゃないんだから、答えはない)。
4.道庁赤れんが ★★★★ (30分)
掛川源一郎の写真と、伊福部昭の作曲世界の紹介。
いずれも在野のクリエイターといってよく、そういう2人が、官依存の風潮が意外と強い北海道の総本山みたいな会場で紹介されるというのもなかなかおもしろい。
展示の内容も興味深いが、館内のあちこちに展示された油彩の大作を見て、日本における神宮の絵画館の役割を、北海道でこの赤れんが庁舎が果たしていることが分かるだろう。ここは、北海道というナショナリティの本拠地なのだ。
会場を出ると、まっすぐ前に、北3条広場に設置された島袋さんの「一石を投じる」が目に入るのも、なかなか感動的な一瞬。
あと、朝早く(8時45分)から開いているというのは、1日をフルに活用したい人にとっては、ポイント高いと思う。
5.清華亭 ★★★★ (10~30分)
会期の長い展覧会だと、じわじわと口コミで人気を増していく作品というのがある。
清華亭の毛利悠子作品が、今回はまさにそれ。
古い空間で、札幌の歴史に思いをはせるのにぴったりのインスタレーション。穴場です。
6.モエレ沼公園 ★★★ (30分)
「坂本 龍一 + 真鍋 大度」は、参加型の作品で、相当の迫力と強度をもった作品だ。
じゃ、なぜ星3個なの? と言われそうだが、それは会場が遠すぎるから。
道外などの人で、モエレ沼公園自体を訪れることが目的ならいい(イサム・ノグチ基本設計というのは、それだけ集客力があるのだ)が、地元の人が行くと、作品を見るのに必要な時間に比べて、往復に時間がかかりすぎるのが難点。
7.500m美術館 ★★★★ (1時間)
これは大通 → バスセンターの順番で見よう。
解説文はそんなに一生懸命読まなくてもいいと思う。
8.チ・カ・ホ ★★★ (40分)
もう何らかの形で目にしている人が大半だと思うが、立ち止まってみたい。
露口啓二さんのスライドショーは、機会があったら、見てほしい。いまは、意味がわからなくても。
9.札幌市資料館
あ、ここで何をやってるのか、いまになるまでよくわかってないので、採点はパス。
10.暮らしかた冒険家 ★★ (不定)
現地に実際に足を運ぶよりも、道新夕刊の連載記事を読んだり、サイトのコラムを読んだりして、どうしてこういう、ぜーんぜんアートっぽくない夫婦のリノベーション物語が、国際芸術祭の正式な催しにカウントされているのかを、つらつらと考えるほうがためになるだろう。もちろん、時間に余裕のある人に「行くな」というつもりもないですが。
というわけで、9月28日までです。
急げ~!! なるべくたくさん見るのだ~!