(承前)
2016年に『若い詩人の肖像』などを読んだ頃から、「幽鬼の街」に描写された小樽巡りをしてみたいと思っていた筆者。
まさに自分の関心にどんぴしゃりな企画展で、文学館と博物館の合同企画でもあり、シンポジウムなども開かれていたのですが、あまりの多忙さのために小樽行きを何度も先延ばしし、会期終了の直前になってしまいました。
伊藤整 い とうせい(1905~69)は、松前生まれ、小樽育ち . . . 本文を読む
札幌国際芸術祭SIAF2024の未来劇場(東1丁目劇場施設)の地下で美しいガラス作品が展示されている青木美歌さん。
彼女が生前の2021年春(と奥付に記してある)に出した作品写真集が、札幌市資料館(中央区大通西13)のSIAF ラウンジで販売されています。
2006年から20年までの個展やグループ展で撮影された会場や作品の写真が並びます。
07年に道立近代美術館で開かれた「Born in . . . 本文を読む
先日、北海道新聞本社北1条館1階の「DO-BOX」で、出版関係部門による、展示品・訳あり品などの即売会がありました。
1冊200円という安さに目がくらみ、写真集など15冊を買ってきました。
北海道新聞社はアート関係の本もけっこう出版していますが、ここでは出品は少なめで、「ミュージアム新書」にいたっては皆無でした(まあ、ほとんど所蔵しているわけですが、手元に無いのもあるので . . . 本文を読む
後志管内余市町出身の詩人左川ちか(1911~1936年)。
正直なところ、以前はアンソロジーなどには採録されてはいても一般的な知名度は高くなく、筆者も
「伊藤整の友人の妹」
ぐらいの認識でした。
それが、ここ数年の評価の高まりといったら、どうでしょう。
全集は版を重ね、昨年秋にはついに岩波文庫に入るまでになりました。
ただ、個人的には、戸惑いも大きいです。
これまで戦前のモダニスムを代 . . . 本文を読む
ことし読んだ書物は107冊。
2018年あたりだと年35冊などひどい年もあるので、それに比べればマシですが、仕事絡みの本が大半で、自分が読みたいアート関係の書籍がほとんど積ん読になっています。
おもしろかった本をざっと挙げていきます。
「笛吹き男」の正体(浜本隆志、筑摩選書)
世界史。阿部謹也の名著「ハーメルンの笛吹き男」の業績を引き継ぎ、中世ドイツに起きた大量の児童失踪事件の真相に . . . 本文を読む
月刊誌「美術の窓」恒例の、年間展覧会特集号を買ってきました。
しかし「圧倒的情報量」をうたっている割には、取り上げられている展覧会は106。
昨年の200、一昨年の300に比べると少なすぎます。
和歌山県立美術館の学芸員もツイッター(X)で嘆いていましたが、やはり発行が早すぎるのではないかと思います。
公立美術館の場合、新年度予算が都道府県や市町村の議会を通過するのは3月。そこで初めて . . . 本文を読む
表題の展覧会(英語名は「KAWAMATA TADASHI Apartment Project 1982-86」)は2023年7月7日(金)から9月7日(木)まで、東京都江東区の竹中工務店東京本店にあるギャラリー エー クワッドで開かれた(つまり、このテキストを書いている時点ではまだ会期中である)。
この展覧会のゲストキュレーター正木基さん(道立近代美術館→目黒区美術館の元学芸員)から連絡をもら . . . 本文を読む
「労文協」という団体があります。
もとは、日本最大の労働組合の集合体だった「総評(日本労働組合総評議会)」の肝いりで1955年、進歩派文化人や働く人々が「国民文化会議」を旗揚げし(代表は日高六郎)、その道内版として72年に「北海道労働文化協会」、略して労文協が発足しました。
その後、労働運動の退潮に伴い、国民文化会議や各都府県にあった同様の団体は解散しましたが、道内の労文協は、毎年のリレー講 . . . 本文を読む
意外な方面から野外彫刻の本が出ました。
これまでの彫刻の本というと、マッスがどうのボリュームがどうのと論じたり、作者について書いたりする専門家向けの批評が多く、そこに歴史や社会の視点を持ち込んだ斬新な切り口の文筆を展開している代表的な書き手が小田原のどかさんといえます。
ところがこの本は、そのいずれでもありません。いわば、彫刻を建立しようと奔走した裏方の奮闘に焦点を絞っている、たいへんユニー . . . 本文を読む
昨年の今ごろは
「オラオラ、おまえら、来年はフェルメール様が北海道に上陸するんだぞ! 『美術の窓』誌を買って、この目で確認せんかい」
というようなノリでしたが、今年の「美術の窓」12月号、恒例の美術展特集には、それに匹敵するような展覧会情報は残念ながら載っていません。
道内の展覧会で掲載されているのは次の通り。
・木原和敏特別展 2022年12月1日~8月14日 置戸ぽっぽ絵画館
・北網 . . . 本文を読む
この1週間余り、なんだかやたらと本を買っています。
きっかけは卯城竜太著『活動芸術論』のまえがきを読んで、赤瀬川原平『反芸術アンパン』(旧名『もはやアクションあるのみ!』)を読みたいなと思って書棚を見たら、おなじ著者の『東京ミキサー計画』はあったのに『反芸術アンパン』(いずれもちくま文庫)はなかったので、急に探し始めたのです。
8月26日にまず、南1西1のブックオフに行ったのですが見当た . . . 本文を読む
おもしろかったです。
十数年前、東京で雪舟展を見ましたが、その前に読んでおきたかったです。
雪舟といえば、言わずと知れた室町時代の画僧で、日本水墨画の最高峰とされる人です。
ただ国宝「秋冬山水図」などが名高いものの、その伝記的生涯についてはかならずしも明らかにされていなかったと思います。
この本は、画風や構図など、美術書的な記述は思い切って省略し、関連史料を駆使して雪舟の生涯を浮き彫 . . . 本文を読む
前作の写真集「カムイの大地 北海道・新風景」出版とそれを記念した写真展の開催から3年。
野生生物を主なモティーフにした写真集が北海道新聞社から出版されました(奥付は3月26日)。
3千円プラス税。計101点のカラー写真を収録しています。
前作と最も異なるのは「鼓動する野生」という副題からもうかがえるように、生命の循環に肉薄していること。
母親にすがるコギツネなどの愛らしい姿だけではなく . . . 本文を読む
※9日、タイトルを少し変えました
「ことしはどんな展覧会があるのかな」
と楽しみに買うことの多い月刊誌「美術の窓」(生活の友社)恒例の特集号は、2021年版までは1月号で、さらにそれ以前は2月号だったのですが、さらに1カ月繰り上がりました。
「来年はどんな展覧会が…」
となったわけです。
同様の特集を組んでいる「芸術新潮」誌などへの対抗という意味合いもあるのでしょうが、編集部の作業は大変だろ . . . 本文を読む
『北海道美術史』は1970年に道立美術館から出版されました。筆者は調べ物などで拾い読みをしたことはあるものの、恥ずかしながらこれまで通読したことがありませんでした。
古書店の店頭で見ると1万~1万5千円前後の値がつけられており、手が出なかったのです。このたび、入手できてようやくまるごと読むことができました。
一読して、驚きました。
この本の美術史のとらえ方については以前も批判したことがあ . . . 本文を読む