北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

ストリートマップでめぐる伊藤整の「幽鬼の街」展(2024年8月10日~10月20日、小樽)●10月17日続き

2024年10月20日 14時38分38秒 | つれづれ読書録
(承前)  2016年に『若い詩人の肖像』などを読んだ頃から、「幽鬼の街」に描写された小樽巡りをしてみたいと思っていた筆者。  まさに自分の関心にどんぴしゃりな企画展で、文学館と博物館の合同企画でもあり、シンポジウムなども開かれていたのですが、あまりの多忙さのために小樽行きを何度も先延ばしし、会期終了の直前になってしまいました。  伊藤整 い とうせい(1905~69)は、松前生まれ、小樽育ち . . . 本文を読む

MIKA AOKI Starting from light, Coming back to light

2024年02月19日 19時19分19秒 | つれづれ読書録
 札幌国際芸術祭SIAF2024の未来劇場(東1丁目劇場施設)の地下で美しいガラス作品が展示されている青木美歌さん。  彼女が生前の2021年春(と奥付に記してある)に出した作品写真集が、札幌市資料館(中央区大通西13)のSIAF ラウンジで販売されています。  2006年から20年までの個展やグループ展で撮影された会場や作品の写真が並びます。  07年に道立近代美術館で開かれた「Born in . . . 本文を読む

最近買った本

2024年02月18日 21時00分08秒 | つれづれ読書録
 先日、北海道新聞本社北1条館1階の「DO-BOX」で、出版関係部門による、展示品・訳あり品などの即売会がありました。  1冊200円という安さに目がくらみ、写真集など15冊を買ってきました。  北海道新聞社はアート関係の本もけっこう出版していますが、ここでは出品は少なめで、「ミュージアム新書」にいたっては皆無でした(まあ、ほとんど所蔵しているわけですが、手元に無いのもあるので&# . . . 本文を読む

■特別展「左川ちか 黒衣の明星」 (2023年11月18日~2024年1月21日、札幌)

2024年01月18日 21時52分54秒 | つれづれ読書録
 後志管内余市町出身の詩人左川ちか(1911~1936年)。  正直なところ、以前はアンソロジーなどには採録されてはいても一般的な知名度は高くなく、筆者も 「伊藤整の友人の妹」 ぐらいの認識でした。  それが、ここ数年の評価の高まりといったら、どうでしょう。  全集は版を重ね、昨年秋にはついに岩波文庫に入るまでになりました。  ただ、個人的には、戸惑いも大きいです。  これまで戦前のモダニスムを代 . . . 本文を読む

2023年に読んだ本

2023年12月31日 01時23分45秒 | つれづれ読書録
 ことし読んだ書物は107冊。  2018年あたりだと年35冊などひどい年もあるので、それに比べればマシですが、仕事絡みの本が大半で、自分が読みたいアート関係の書籍がほとんど積ん読になっています。  おもしろかった本をざっと挙げていきます。  「笛吹き男」の正体(浜本隆志、筑摩選書)  世界史。阿部謹也の名著「ハーメルンの笛吹き男」の業績を引き継ぎ、中世ドイツに起きた大量の児童失踪事件の真相に . . . 本文を読む

「美術の窓」12月号と「芸術新潮」増刊号を買ってきたけれど…

2023年12月04日 21時08分15秒 | つれづれ読書録
 月刊誌「美術の窓」恒例の、年間展覧会特集号を買ってきました。  しかし「圧倒的情報量」をうたっている割には、取り上げられている展覧会は106。  昨年の200、一昨年の300に比べると少なすぎます。  和歌山県立美術館の学芸員もツイッター(X)で嘆いていましたが、やはり発行が早すぎるのではないかと思います。  公立美術館の場合、新年度予算が都道府県や市町村の議会を通過するのは3月。そこで初めて . . . 本文を読む

「川俣正「アパートメント・プロジェクト」1982-86 ドキュメント展 ~ TETRA-HOUSE を中心に」のパンフレット

2023年09月05日 16時15分23秒 | つれづれ読書録
 表題の展覧会(英語名は「KAWAMATA TADASHI Apartment Project 1982-86」)は2023年7月7日(金)から9月7日(木)まで、東京都江東区の竹中工務店東京本店にあるギャラリー エー クワッドで開かれた(つまり、このテキストを書いている時点ではまだ会期中である)。  この展覧会のゲストキュレーター正木基さん(道立近代美術館→目黒区美術館の元学芸員)から連絡をもら . . . 本文を読む

一般社団法人北海道労働文化協会が「五十年史」を出した

2023年07月27日 19時15分00秒 | つれづれ読書録
 「労文協」という団体があります。  もとは、日本最大の労働組合の集合体だった「総評(日本労働組合総評議会)」の肝いりで1955年、進歩派文化人や働く人々が「国民文化会議」を旗揚げし(代表は日高六郎)、その道内版として72年に「北海道労働文化協会」、略して労文協が発足しました。  その後、労働運動の退潮に伴い、国民文化会議や各都府県にあった同様の団体は解散しましたが、道内の労文協は、毎年のリレー講 . . . 本文を読む

小沢信行「こうしてできた北の銅像」

2023年06月19日 22時44分44秒 | つれづれ読書録
 意外な方面から野外彫刻の本が出ました。  これまでの彫刻の本というと、マッスがどうのボリュームがどうのと論じたり、作者について書いたりする専門家向けの批評が多く、そこに歴史や社会の視点を持ち込んだ斬新な切り口の文筆を展開している代表的な書き手が小田原のどかさんといえます。  ところがこの本は、そのいずれでもありません。いわば、彫刻を建立しようと奔走した裏方の奮闘に焦点を絞っている、たいへんユニー . . . 本文を読む

訂正あり●「美術の窓」12月号をようやく買ってきた

2022年12月11日 18時18分24秒 | つれづれ読書録
 昨年の今ごろは 「オラオラ、おまえら、来年はフェルメール様が北海道に上陸するんだぞ! 『美術の窓』誌を買って、この目で確認せんかい」 というようなノリでしたが、今年の「美術の窓」12月号、恒例の美術展特集には、それに匹敵するような展覧会情報は残念ながら載っていません。  道内の展覧会で掲載されているのは次の通り。 ・木原和敏特別展 2022年12月1日~8月14日 置戸ぽっぽ絵画館 ・北網 . . . 本文を読む

最近買った本

2022年09月05日 19時07分07秒 | つれづれ読書録
 この1週間余り、なんだかやたらと本を買っています。  きっかけは卯城竜太著『活動芸術論』のまえがきを読んで、赤瀬川原平『反芸術アンパン』(旧名『もはやアクションあるのみ!』)を読みたいなと思って書棚を見たら、おなじ著者の『東京ミキサー計画』はあったのに『反芸術アンパン』(いずれもちくま文庫)はなかったので、急に探し始めたのです。  8月26日にまず、南1西1のブックオフに行ったのですが見当た . . . 本文を読む

島尾新『画聖 雪舟の素顔 天橋立図に隠された謎』(朝日新書)

2022年06月13日 11時27分05秒 | つれづれ読書録
 おもしろかったです。  十数年前、東京で雪舟展を見ましたが、その前に読んでおきたかったです。  雪舟といえば、言わずと知れた室町時代の画僧で、日本水墨画の最高峰とされる人です。  ただ国宝「秋冬山水図」などが名高いものの、その伝記的生涯についてはかならずしも明らかにされていなかったと思います。  この本は、画風や構図など、美術書的な記述は思い切って省略し、関連史料を駆使して雪舟の生涯を浮き彫 . . . 本文を読む

山本純一写真集『カムイの生命(いのち)鼓動する野生』=写真展は2022年4月7~12日、札幌

2022年04月12日 09時06分00秒 | つれづれ読書録
 前作の写真集「カムイの大地 北海道・新風景」出版とそれを記念した写真展の開催から3年。  野生生物を主なモティーフにした写真集が北海道新聞社から出版されました(奥付は3月26日)。  3千円プラス税。計101点のカラー写真を収録しています。  前作と最も異なるのは「鼓動する野生」という副題からもうかがえるように、生命の循環に肉薄していること。  母親にすがるコギツネなどの愛らしい姿だけではなく . . . 本文を読む

北海道にフェルメール作品がやって来る! 「美術の窓」12月号の特集は「2022年の美術展 300」

2021年12月08日 08時29分51秒 | つれづれ読書録
※9日、タイトルを少し変えました  「ことしはどんな展覧会があるのかな」 と楽しみに買うことの多い月刊誌「美術の窓」(生活の友社)恒例の特集号は、2021年版までは1月号で、さらにそれ以前は2月号だったのですが、さらに1カ月繰り上がりました。 「来年はどんな展覧会が…」 となったわけです。  同様の特集を組んでいる「芸術新潮」誌などへの対抗という意味合いもあるのでしょうが、編集部の作業は大変だろ . . . 本文を読む

今田敬一編著『北海道美術史 地域文化の積み上げ』は貴重な資料だが、すでに乗り越えられるべき書物である

2021年10月05日 08時46分15秒 | つれづれ読書録
 『北海道美術史』は1970年に道立美術館から出版されました。筆者は調べ物などで拾い読みをしたことはあるものの、恥ずかしながらこれまで通読したことがありませんでした。  古書店の店頭で見ると1万~1万5千円前後の値がつけられており、手が出なかったのです。このたび、入手できてようやくまるごと読むことができました。  一読して、驚きました。  この本の美術史のとらえ方については以前も批判したことがあ . . . 本文を読む