三越札幌店9階では、高水準の工芸の展覧会が二つ開かれています。
いずれも札幌圏在住の作り手によるもので、道内の工芸作家も本州の本場に負けない作品をつくりあげる人がいることに、意を強くします。
島田晶夫さんは1971年、苫小牧生まれ。
上川管内音威子府村のおといねっぷ美術工芸高、高岡短大産業工芸科(現・富山大芸術文化部)を卒業し、石狩管内当別町にアトリエを構えます。
ゼロ年代には一輪挿しなど、いまよりもっと軽い都会的な感覚の木工品を手がけていたという印象がありますが、2019年からは日本伝統工芸展に入選を続けており、21年には「第61回東日本伝統工芸展朝日新聞社賞」を得ています。この展覧会で道内から賞を受けることは、きわめて珍しいことです。
今回の個展の出品作のうち多くを占めるのが「象嵌」の手法による額絵や文箱などです。
絵といっても絵の具を塗るのではなく、木の種類により色合いが異なるのを利用して、絵柄を表現しています。
0.5ミリほどの薄い板を、木工家がよく用いる糸のこではなく、カッターナイフで切り抜いていくそうです。
寸分違わぬ正確さが要求されることは想像に難くありません。
とくに島田晶夫さんがすごいのは、たとえば案内状に用いられている「木象嵌箪笥『葉音』」にはシラカバやホオノキ、センなどが描かれていますが、可能な限り、その絵の部分にはその樹種の板が用いられていること。つまり、シラカバの葉の絵にシラカバの板をはめ込んでいるのです。ドングリの額絵にも、ナラ類が用いられています。
伝統工芸展の出品者ではありますが、額絵の多くは、北海道の作家らしい、西洋的な明快さが漂います。これは、本州と植生が異なるのも一因でしょう。
「南瓜」という作品は、縦197×横135センチ。こんなに大きな象嵌の作品は、筆者は見たことがありません。ツルが描く曲線の複雑さには、驚くしかありません。
となりの部屋では、北海道陶芸会でベテラン・中堅メンバーとして活躍する女性3人の陶芸展が開かれています。
多田昌代さんは、呉須や面取りの器のほか、「新生」と題したオブジェ、天使の羽をモチーフとした額絵などもあり、洗練された美しさを感じます。
福盛田眞智子さんは、線紋マグカップ、青灰釉の器など。ほおずきをかたどったあかり、キャベツのかたちの香合など、植物に材を得たユニークな作品もあります。
三橋エリさんといえば、あたたかみのあるスリップウエアが代表的ですが、今回は、白化粧土に炭酸銅をまぜたもので表面にさっと線を描いた皿などが目を引きます。マンガンと化学反応を起こし、金色になるのです。平たい形状の花器は表と裏で模様が異なるリバーシブル。ピンク色の食器も。
2022年11月1日(火)~7日(月)午前10時~午後7時(最終日~4時)
三越ギャラリー(札幌市中央区南1西3、三越札幌店本館9階)
□島田晶夫 木のアート https://d-s-shimada.com/
□北海道陶芸会 https://hokkaido-pottery-society.jimdofree.com/
□陶 studio TADA https://studiotada.exblog.jp/
過去の関連記事へのリンク
■法邑芸術文化振興会企画展〔滲-shin-〕(2008)
■「My Chairs」―北海道の木工家による木の椅子展― (2007)
■サッポロクラフトTAG 10人展〔絆-もの・ひと・こころ〕 (2007、画像なし)
■島田晶夫・藤沢レオ2人展 (2004、画像なし)
■北海道陶芸会展 (2022年7月)
■米川由美子・川上のぶよ・植田ようこ・多田昌代4人展(2022年5月)
■北海道陶芸会50周年記念 陶・創造者たち-北の大地と共に (2018年10月)
■ 多田昌代 陶展 あたたかなあお やわらかなしろ (2018)
■北海道陶芸会展 (2017)
■COCORO・Mi 多田昌代/陶展 × nakky/写真展 (2015)
■多田昌代 UTSUWA あ・た・た・ま・ろ (2015年2月)
■多田昌代 U・TSU・WA展-やわらかな白・のびやかな黒- (2008)
■多田昌代U・TSU・WA展 (2006)
■多田昌代陶芸展(2006、画像なし)
■下澤敏也・多田昌代二人展(03年、画像なし)
■第10回記念 凍土会展2018ー北土を綴る
■続き・北海道陶芸会50周年記念 陶・創造者たち-北の大地と共に (2018)
■北海道陶芸会展=続き (2017)
■日下華子・福盛田眞智子・江崎千春・平子貴俊4人展「新緑の香りに誘われて」 (2016)
■陶芸作家・onna・四人展 (2016)
■野の花が似合う花器 (2007)
■福盛田眞智子 作陶展(2004、画像なし)
■北海道陶芸会展 (2022年7月)
■続き・北海道陶芸会50周年記念 陶・創造者たち-北の大地と共に (2018)
■北海道陶芸会展 (2017)
■第49回 道美展 (2016、画像なし)
いずれも札幌圏在住の作り手によるもので、道内の工芸作家も本州の本場に負けない作品をつくりあげる人がいることに、意を強くします。
島田晶夫さんは1971年、苫小牧生まれ。
上川管内音威子府村のおといねっぷ美術工芸高、高岡短大産業工芸科(現・富山大芸術文化部)を卒業し、石狩管内当別町にアトリエを構えます。
ゼロ年代には一輪挿しなど、いまよりもっと軽い都会的な感覚の木工品を手がけていたという印象がありますが、2019年からは日本伝統工芸展に入選を続けており、21年には「第61回東日本伝統工芸展朝日新聞社賞」を得ています。この展覧会で道内から賞を受けることは、きわめて珍しいことです。
今回の個展の出品作のうち多くを占めるのが「象嵌」の手法による額絵や文箱などです。
絵といっても絵の具を塗るのではなく、木の種類により色合いが異なるのを利用して、絵柄を表現しています。
0.5ミリほどの薄い板を、木工家がよく用いる糸のこではなく、カッターナイフで切り抜いていくそうです。
寸分違わぬ正確さが要求されることは想像に難くありません。
とくに島田晶夫さんがすごいのは、たとえば案内状に用いられている「木象嵌箪笥『葉音』」にはシラカバやホオノキ、センなどが描かれていますが、可能な限り、その絵の部分にはその樹種の板が用いられていること。つまり、シラカバの葉の絵にシラカバの板をはめ込んでいるのです。ドングリの額絵にも、ナラ類が用いられています。
伝統工芸展の出品者ではありますが、額絵の多くは、北海道の作家らしい、西洋的な明快さが漂います。これは、本州と植生が異なるのも一因でしょう。
「南瓜」という作品は、縦197×横135センチ。こんなに大きな象嵌の作品は、筆者は見たことがありません。ツルが描く曲線の複雑さには、驚くしかありません。
となりの部屋では、北海道陶芸会でベテラン・中堅メンバーとして活躍する女性3人の陶芸展が開かれています。
多田昌代さんは、呉須や面取りの器のほか、「新生」と題したオブジェ、天使の羽をモチーフとした額絵などもあり、洗練された美しさを感じます。
福盛田眞智子さんは、線紋マグカップ、青灰釉の器など。ほおずきをかたどったあかり、キャベツのかたちの香合など、植物に材を得たユニークな作品もあります。
三橋エリさんといえば、あたたかみのあるスリップウエアが代表的ですが、今回は、白化粧土に炭酸銅をまぜたもので表面にさっと線を描いた皿などが目を引きます。マンガンと化学反応を起こし、金色になるのです。平たい形状の花器は表と裏で模様が異なるリバーシブル。ピンク色の食器も。
2022年11月1日(火)~7日(月)午前10時~午後7時(最終日~4時)
三越ギャラリー(札幌市中央区南1西3、三越札幌店本館9階)
□島田晶夫 木のアート https://d-s-shimada.com/
□北海道陶芸会 https://hokkaido-pottery-society.jimdofree.com/
□陶 studio TADA https://studiotada.exblog.jp/
過去の関連記事へのリンク
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■「My Chairs」―北海道の木工家による木の椅子展― (2007)
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■福盛田眞智子 作陶展(2004、画像なし)
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■北海道陶芸会展 (2017)
■第49回 道美展 (2016、画像なし)