
自ら絵筆を執らない人でも絵画展に足を運ぶのが好きな人は多い。しかし、これが書道となると、習っていないのに展覧会へ行く人は少ないのではないだろうか。
キャンバスに塗られた油絵の具がターコイズブルーなのかインディゴブルーなのか分からなくても見ることはできるのと同様に、書展で文字が読めないからといって鑑賞が禁じられるわけではない。むろん、読めるのにこしたことはないけれど、筆の勢いや全体の構図などは、たとえ読めなくても味わえるのではないか。
とはいえ、道内で見られる書展といえば、やたらと大規模な北海道書道展、毎日書道展、読売書法展などの団体公募展と、師匠・弟子による社中展が大半で、その中間にあたる個展やグループ展が意外とない。だが、最近では、社中や団体の枠を超えたグループ展も少しずつ増えてきた。今回の「10人の書展」は、全員が北海道書道展の会員ということ以外には、所属する団体はバラバラで、展示作も漢字、かな、近代詩文とバラエティーに富んでいる。ふらっと足を運んで、ちょうどいい分量の書を味わうには、絶好の機会だと思う。

出品者は、漢字が青木空豁、太田欽舟、高橋祥雲、羽毛蒼洲、松山朴羊、渡部天外の5氏。かなが安喰のり子、阿部和加子、大川壽美子の3氏。近代詩文が須田廣充氏。
須田さんは漢字作品も出品している。
ひとり1~3点で、大作が多い。

羽毛さんによると、壁面をおおむね6メートル、大作出品とだけ決めて、あとは会場でやりくりして収めたとのこと。
「開催まで1カ月半から2カ月という短い期間でしたが、みなさん新作です」
おもしろいのは、安喰さんが「繭ごもり」という題で、大川さんが「蒼穹」という題で、それぞれ書法などを変えて同じ歌を3点ずつ書いているのだが、これは示し合わせたのではなく、まったく偶然とのこと。
また、太田さんと松山さんが「森羅万象」でそろい踏みになったのも、会場でわかった事という。
こうして見ると、かなや漢字といっても、いろいろな書きっぷりがあるのだな~と、あらためて感心する。
羽毛さんの「風雪」。最後まで墨継ぎを我慢した感じが伝わってくるようで、見ているこちらも力が入ってしまった。
2010年6月1日(火)~6日(日)10:00~7:00(最終日~5:00)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階 地図B)
ただ、基盤はやはり文字ですね。