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北海道美術ネット別館

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渋谷栄一さん死去(札幌の版画家) ※追記あり

2011年08月18日 23時33分03秒 | 情報・おしらせ
 札幌在住で、道内を代表する版画家のひとり、渋谷栄一さんが8月12日に亡くなっていたことが、けさ(18日)の北海道新聞おくやみ欄でわかりました。82歳でした。
 すでに葬儀は終了しています。

 渋谷さんは帯広生まれ。
 その後、道学芸大(現道教育大)を卒業し、1959年の北海道版画協会の旗揚げに参画しています。
 春陽会、日本版画協会、全道展(全道美術協会)でもそれぞれ会員として活躍しました(春陽会は晩年退会)。

※追記。全道展では1960年奨励賞、61年会友推薦、62年会員推挙

 また1975年には、岡部昌生、玉村拓也、花田和治、矢崎勝美、渡会純价の各氏(いずれも道内の美術界を代表する面々!)とともに「版と6人」を結成。いわゆる版画にとどまらない、ジャンル越境的な展覧会を展開します。
 このグループは翌76年、國松明日香、堀内掬夫の両氏を加え、さらに79年には石垣光雄(故人)、上野憲男の両氏も入って、70年代後半の道内美術シーンを代表するグループ展となります。
 さらに、これが90~96年の「10人空間展」に発展します。
(この段落は、吉田豪介さんの名著「北海道の美術史」に拠る)

 2003年には道立帯広美術館で「渋谷栄一展」も企画されました。
 同館は「ある女」「モニュマンC」などを所蔵しています。

 2009年春には、北広島の林の中に、渋谷さんの作品を常設する私設の美術館「黒い森美術館」がオープンしています。


 筆者が知っている渋谷さんの作品は、パリの風景を詩情豊かに描いた多色刷りのエッチングですが、最大の特徴は、モティーフとは無関係な黒い曲線がぐるぐると画面を覆っていることです。
 最初見たときは、正直言って「なんじゃ、この線は」と思いましたが、この線が画面全体に生き生きとした躍動感を与えていたのでした。
 版を6~8枚重ね、淡い色調もたくみに表現していました。

 後年、カラーコピーを組み合わせた抽象作品を手がけていたとのことですが、こちらは拝見したことがありません。


 もうかなり以前のことになりますが、渋谷さんは筆者に、パリに滞在して版画技法を学んでいた時に国立の図書館に通ったときの思い出を話してくださいました。
 いまでは事情も変わっているそうですが、当時は、タブローやペインティングは美術館、プリントは図書館という区分けがされていて、どんなに有名な画家のものでも、版画であれば図書館が管轄していました。むろん閉架なのですが、係員に申し出れば、レンブラントの作品を奥から出してきて、それを誰でも手にとって見ることができたというのです。
 渋谷さんはそのようにしてさまざまな作品を鑑賞し、それがパリのいちばんの思い出になっているというお話でした。

 なぜかどの新聞にも死亡記事が載っていないようです。
 この数年はあまり作品を発表していなかったためかもしれません。

 ご冥福をお祈りいたします。


黒い森美術館訪問(2010年)
北広島に「黒い森美術館」オープン(2009年)
渋谷栄一版画小品展(2002年、画像なし)


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