
2006年、札幌芸術の森美術館の「北の創造者たち Lovely」展で道内デビューを果たした岩見沢の堀さん。
それ以前は首都圏で発表をつづけていた。
作品のテーマはウサギだが、かわいらしさとおぞましさとが同居したような独特の作品で、いろいろなことを考えさせる。

ぬいぐるみ系だった前回までとうって変わって今回は、堀さんがたまたま古着店で見つけたウサギの毛皮。安値で投げ売りされていたという。
当初はほぐして平面にするつもりだったが、裏地をはがすと、針金やプラスチックの板が出てきた。途上国の繊維工業の過酷な作業現場のことなども思い出され、コートそのままのかたちで展示することにしたという。
その毛皮に点在しているのが数センチの小さなウサギ。
堀さんが13年ほどかけて集めた野ウサギのふんを、熱い蜜蝋をくぐらすなどして消毒し、のりでかためたもので、ぜんぶで109匹いるという。それを糸で、毛皮に固定している。
原料は、言われなければ、土かなにかのようで、とてもふんとは信じられないほど、ぱさぱさした感じだ。

毛皮をそのまま展示したことで、堀さんの作品に、社会的・人間的な視角が加わったといえそう。
毛皮には、人間の欲みたいなものが凝縮されている。
野生の風習という面と、毛皮の利用という面が、ひとつの作品の中で背中合わせのように表現されているのだ。
堀さんによると、会場が学習参考書売り場に面しているので、若い人も訪れるとのこと。
「10代の男の人がつかつかっと寄ってきて『何匹のウサギを殺したんですか』と訊かれたこともありました」
作者自身は、「毛皮の服は必要ない」と考えているという。もっとも、会場には、ウサギのふしぎな生態について解説した本の一部を透明な樹脂板にコピーしたものが数枚貼られているだけで、作者の考えなどはいっさい説明がないので、誤解したり反撥したりするむきもあるかもしれない。

見方を変えれば、つねに両義的な性質を有し、解釈を見る側にゆだねている堀さんの作品らしいありようだ-と言えそうだ。
これをお読みのみなさんも、実物を見に来て、考えてはいかがだろうか。
2009年6月6日(土)-11日(木)10:00-19:00(最終日-18:00)
紀伊國屋書店札幌本店2階ギャラリー(中央区北5西5 地図A)
■堀かをり展「兎のかたち」(2007年)
■堀かをり造形展(2006年、画像なし)