日展系の絵画や、伝統工芸が多い-というイメージのある三越ギャラリー。現代美術を正面から掲げた展覧会はめずらしい。
ところで「現代美術」って、何なんだろう。
あらためて考えてみる。
たとえば、べつの分野の話になるけれど、「純文学」「大衆文学」という区別がある。
いろいろな定義は可能だろうが、ごく下世話にいってしまうと、「文学界」「新潮」「群像」「すばる」などに掲載されて芥川賞・三島賞の候補になるのが「純文学」であり、「オール読物」「小説新潮」「小説現代」「小説すばる」「別冊文芸春秋」などに原稿を書いている作家で直木賞や山本賞の対象になるのが「大衆文学」である。
じつは、小説の中身ではない。
「現代美術」というのも実情はこれと似ている。
つまり、「現代美術」を掲げるギャラリー(たとえば小山登美夫ギャラリーやミヅマアート・ギャラリーなど)で発表されて「美術手帖」「artscape」で紹介されるのが「現代美術」であり、銀座などの画廊や公募展で発表されて「月刊美術」「美術の窓」に図版が掲載されるのが、現代美術ではない「画壇系の美術」である。
たとえば、もし舟越桂が二科展に出品していたら、この展覧会には出品されていないだろう。
今回は出ていないが、小林孝亘や奈良美智などでも事情は同じだろう。
そして、美術館で個展が開かれることもないだろう。
すくなくとも筆者にはそう思われる。
話がややこしいのは、いわゆる画壇系の作家は、国立新美術館や東京都美術館での公募展に出品する作品と、銀座の画廊や百貨店でならべる作品とは、もっぱらサイズだけが違う(もちろん公募展のほうがでかい)のに対し、「現代美術」の場合は、作品の種類がそもそも異なることがあることだ。
つまり「現代美術」が、美術館や国際美術展で発表されるときは、インスタレーションや映像、インタラクティブアート(鑑賞者が参加する作品)といったかたちをとる場合が多いのだが、それでは、売ることができない。したがって、画廊やアートフェアに出品するときは、おなじ作家でも、ドローイングやシルクスクリーンといった「売りやすい」形態をとるのだろう。
今回の三越の展覧会は、もろに後者である。映像やインスタレーションはまったくない。
出品されているのは舟越のドローイングのほか、先ごろオークションで驚異的な高値で立体作品が落札されて話題になった村上隆、会田誠、関根伸夫(ミクストメディアの平面)、草間彌生(例のカボチャのシルクスクリーン)など。三沢厚彦の動物の立体もあった。
村上のは、小さなフィギュアが10点ほど入って透明なケースに収められているもの。たしか10万円ぐらいで、意外と安いなあ(買わないけど)と思ったが、係の人の説明だと、エディションが3万ぐらいあるらしい。ひえー、じゃ、何年か前に「美術手帖」の付録についていたフィギュアのほうが稀少価値あるじゃんかと思う。
高校生が手首を切っている絵もあった。
ああいうの、じぶんも若いころかいてたよなあと思う。
あの程度のスキルしかなくて、20歳過ぎたらどうするつもりなんだろうって、余計なお世話かな。
というわけで、現代美術そのものを理解するためではなく、「売るスタイルの現代美術」とはどんなあんばいなのかを見るためにいくのもいい展覧会だろう。
08年5月13日(火)-19日(月)10:00-20:00(日曜-19:30、最終日-17:00)
三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3)
ところで「現代美術」って、何なんだろう。
あらためて考えてみる。
たとえば、べつの分野の話になるけれど、「純文学」「大衆文学」という区別がある。
いろいろな定義は可能だろうが、ごく下世話にいってしまうと、「文学界」「新潮」「群像」「すばる」などに掲載されて芥川賞・三島賞の候補になるのが「純文学」であり、「オール読物」「小説新潮」「小説現代」「小説すばる」「別冊文芸春秋」などに原稿を書いている作家で直木賞や山本賞の対象になるのが「大衆文学」である。
じつは、小説の中身ではない。
「現代美術」というのも実情はこれと似ている。
つまり、「現代美術」を掲げるギャラリー(たとえば小山登美夫ギャラリーやミヅマアート・ギャラリーなど)で発表されて「美術手帖」「artscape」で紹介されるのが「現代美術」であり、銀座などの画廊や公募展で発表されて「月刊美術」「美術の窓」に図版が掲載されるのが、現代美術ではない「画壇系の美術」である。
たとえば、もし舟越桂が二科展に出品していたら、この展覧会には出品されていないだろう。
今回は出ていないが、小林孝亘や奈良美智などでも事情は同じだろう。
そして、美術館で個展が開かれることもないだろう。
すくなくとも筆者にはそう思われる。
話がややこしいのは、いわゆる画壇系の作家は、国立新美術館や東京都美術館での公募展に出品する作品と、銀座の画廊や百貨店でならべる作品とは、もっぱらサイズだけが違う(もちろん公募展のほうがでかい)のに対し、「現代美術」の場合は、作品の種類がそもそも異なることがあることだ。
つまり「現代美術」が、美術館や国際美術展で発表されるときは、インスタレーションや映像、インタラクティブアート(鑑賞者が参加する作品)といったかたちをとる場合が多いのだが、それでは、売ることができない。したがって、画廊やアートフェアに出品するときは、おなじ作家でも、ドローイングやシルクスクリーンといった「売りやすい」形態をとるのだろう。
今回の三越の展覧会は、もろに後者である。映像やインスタレーションはまったくない。
出品されているのは舟越のドローイングのほか、先ごろオークションで驚異的な高値で立体作品が落札されて話題になった村上隆、会田誠、関根伸夫(ミクストメディアの平面)、草間彌生(例のカボチャのシルクスクリーン)など。三沢厚彦の動物の立体もあった。
村上のは、小さなフィギュアが10点ほど入って透明なケースに収められているもの。たしか10万円ぐらいで、意外と安いなあ(買わないけど)と思ったが、係の人の説明だと、エディションが3万ぐらいあるらしい。ひえー、じゃ、何年か前に「美術手帖」の付録についていたフィギュアのほうが稀少価値あるじゃんかと思う。
高校生が手首を切っている絵もあった。
ああいうの、じぶんも若いころかいてたよなあと思う。
あの程度のスキルしかなくて、20歳過ぎたらどうするつもりなんだろうって、余計なお世話かな。
というわけで、現代美術そのものを理解するためではなく、「売るスタイルの現代美術」とはどんなあんばいなのかを見るためにいくのもいい展覧会だろう。
08年5月13日(火)-19日(月)10:00-20:00(日曜-19:30、最終日-17:00)
三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3)
私、この展覧会を見ていましたら、「これは17歳の作家さんが描いたんですよ」と説明されました。
私も間違いなく買わないと思うのです。
しかし、いくら技術が向上したって、いつまでもリスカだのケータイだのじゃなあ。
あんまり若いうちから持ち上げられるのって、たぶん本人のためにならないだろうなあ。
あと、わざとエントリ本文には書かなかったんですが、いちばん感じたのは、1997年ごろに会田誠とかがCAIで展覧会やったんですよ。
「そんときに買っておきゃよかった!」
無理すれば買えるぐらいの値段だったんです。
土曜日に寄ろうかなと考えましたが、これを読んだだけで内容がよく分かりました(笑)。
あ、SHさんセントラルでスレ違いました。
セカンダリーなのか新品なのか、新品だったら仕入先はどのあたりなのか。また最終日の売れ行きなどじっくり鑑賞したかったです。
いや、誇大ではないと思いますよ。
これで「ジャパン コンテンポラリーアートのすべて」とかだったら、怒りますけど(笑)。
>midaregumoさま
さいきんの三越札幌店のわりには、売れてなかったと思います。
あの会場だと、日展の日本画家とかより、割高感があるんですよねえ(笑)。偏見ですいません。
、今回のやないさんの文章とみなさんのコメントは、とても刺激的で面白いですね。
たぶんやなしさんと同じ意見ですが、私は「テクニック」なんてある程度訓練すれば誰でも身につくものだと思っています。たぶんに、発表者にとって重要なのは、「センスの良い研ぎ澄まされたセンサー」な気がします。
もひとつ、「若いうちに・・・」ピカソくらいうまかったら、若いうちに持ち上げてもいいかもですね。w
わたしは「現代美術」は好きなんです。ただ、今回のだけを見て「現代美術ってこんなもんか」などと納得してほしくないんですよねー。
ピカソの若いときはうますぎです。
16歳のときでしたっけ、画家の父親が
「もう教えることはない」
とか言ったのって。
16歳のときでしたっけ、画家の父親が
「もう教えることはない」
とか言ったのって
そうですね!
ちなみに、かれの画家の父親は、息子の絵を見て、自分が書いても無駄だと判断したらしく、絵を描くのを止めてしまったっていう後日談もあるんですよ。
戦後の版画なら、岩内の荒井記念にたくさんありますよ。