
全国的な団体公募展の中では高い知名度を誇る二科会。
北海道にも支部があり、毎年春に大同ギャラリーで支部展を開いています。
この15年を振り返ると、それなりに顔ぶれが変わってきたことがわかります。
2人だけだった会員のうち、エキゾチックな人物画で知られた帯広の園田郁夫さんはすでに退会し、抽象画を描く田中睦子さん(オホーツク管内遠軽町)も今回の案内状に名前が記載されているものの、今回は出品していません。
田中さんのほかに、案内状に載っているのは、次の方々です。
柴崎康男、飯田由美子、大築笙子、山田美代子、中田登、三浦ミツヱ、佐藤孝子、中三保子、皆川俊邦
皆川さんは出品を始めたばかりの人。
冒頭の画像で、左側の壁にある風景画2点の作者。
あえて平面的、図式的な処理をしているあたりがユニークです。木々も丸っこい形状にデフォルメし、色調も淡くして統一感をもたせているようです。

飯田由美子さんの「夏よぶ鳥(麦野)」(左)と「夏よぶ鳥」。
モスグリーンや落ち着いた青、黄色など、中間色の配置が絶妙です。
また、いったん色を置いたあとで、白をかぶせた部分も多く、わずかに下の色が透けて見えます。
一見、派手さのない絵ですが、じっくり見ていくと、考え抜かれた色とかたちの配置に、ベテランの技がうかがえる2点です。まさに、油彩らしい油彩画だと思います。

以前は明るくはなやかな絵を描いていたという印象のある大築笙子さんは、暗色の部分が多くなる一方で、構成が緊密さを増しています。
上は2点とも「窓」という題。
右の絵のほうが、黒い線の一見自在に見えて、矩形がいくつか合わさったような画面全体を引き締めているのが目を引きます。おそらく完成度は高いのでしょうが、類似作が無いということでは、左の絵のほうに軍配を上げたくなります。
左の窓は、緊張感は少しやわらいでいる一方で、人の顔のような曲線が画面を支配し、やわらかい調子で線をひいているように見えます。

柴崎康男さんの「船のある風景」シリーズ。
以前は、目を凝らすと、船のマストや船体が密集しているさまがうかがえたのですが、線の集積のなかに物体のかたちは消えてしまい、近年は鋭角の線がすばやく往復する画面になっています。
最後に、中田登さんの「ART in ART '15」を紹介します。
中田さんはこれまで、絵の中に、花を描いた絵を配するという、いわば「メタ的」な作品を手がけてきた。
今回は、上半分がユリの花、下半分がさっぽろテレビ塔から見た、大通公園の俯瞰図です。後者は、ニュース番組のバックの映像などで、道民にはおなじみですね。
すでに完成している石屋製菓・秋田銀行のビルの屋上にまだ建設用クレーンが伸びているのを見ると、2年ほど前の状態のようです。
中田さんは、最近デジタル絵画を見る機会があり、アナログとデジタルの対比という狙いをこめて、今回の作品を手がけました。
もちろん、ユリがアナログ、札幌の俯瞰図がデジタルです。
ビルの輪郭や道路の白線、大通公園の街路樹などが、白や赤、緑など限られた色で描かれています。この部分がすごいのは、それぞれの建物や道路の白線が一筆がきで描かれていること。
「ほんとうは、すべてを一筆で描ければよかったんですが、時間切れで…」
と中田さんは話します。
中田さんの絵は、理論でスパッと割り切れる現代美術とはいえないと思いますが、だからといって、その試行錯誤を無意味なものだと切り捨てるつもりは、筆者にはありません。むしろ、21世紀にあえて「絵画って何だろう」という問いを抱えつつ制作に臨む姿には、敬服の念を抱きます。
2015年4月23日(木)~28日(火)午前10時~午後6時(最終日~4:30)
大同ギャラリー(札幌市中央区北3西3 大同生命ビル3、4階)
□二科会 http://www.nika.or.jp/
■第10回 二科(絵画)北海道支部展 (2010)
■第9回二科北海道支部展(絵画)
■柴康男個展 (2014)
■亀井由利個展■柴崎康男個展 (2007)
中田登さんの絵画と「メトロギャラリー」 (2015年3月)
■North_Khaos展 (2009)
■京都造形芸術大学OB「North-Khaos展」(2008)
※以下、画像なし
■第8回(2008年4月)
■第7回
■第6回
■第4回(3月21日の項)
■第3回
■第2回(16日の項)
■第1回(16日の項)
LEBENS(生命・人生)展 2006=柴崎さん出品
■柴崎康男・亀井由利2人展 (2004)
北海道にも支部があり、毎年春に大同ギャラリーで支部展を開いています。
この15年を振り返ると、それなりに顔ぶれが変わってきたことがわかります。
2人だけだった会員のうち、エキゾチックな人物画で知られた帯広の園田郁夫さんはすでに退会し、抽象画を描く田中睦子さん(オホーツク管内遠軽町)も今回の案内状に名前が記載されているものの、今回は出品していません。
田中さんのほかに、案内状に載っているのは、次の方々です。
柴崎康男、飯田由美子、大築笙子、山田美代子、中田登、三浦ミツヱ、佐藤孝子、中三保子、皆川俊邦
皆川さんは出品を始めたばかりの人。
冒頭の画像で、左側の壁にある風景画2点の作者。
あえて平面的、図式的な処理をしているあたりがユニークです。木々も丸っこい形状にデフォルメし、色調も淡くして統一感をもたせているようです。

飯田由美子さんの「夏よぶ鳥(麦野)」(左)と「夏よぶ鳥」。
モスグリーンや落ち着いた青、黄色など、中間色の配置が絶妙です。
また、いったん色を置いたあとで、白をかぶせた部分も多く、わずかに下の色が透けて見えます。
一見、派手さのない絵ですが、じっくり見ていくと、考え抜かれた色とかたちの配置に、ベテランの技がうかがえる2点です。まさに、油彩らしい油彩画だと思います。

以前は明るくはなやかな絵を描いていたという印象のある大築笙子さんは、暗色の部分が多くなる一方で、構成が緊密さを増しています。
上は2点とも「窓」という題。
右の絵のほうが、黒い線の一見自在に見えて、矩形がいくつか合わさったような画面全体を引き締めているのが目を引きます。おそらく完成度は高いのでしょうが、類似作が無いということでは、左の絵のほうに軍配を上げたくなります。
左の窓は、緊張感は少しやわらいでいる一方で、人の顔のような曲線が画面を支配し、やわらかい調子で線をひいているように見えます。

柴崎康男さんの「船のある風景」シリーズ。
以前は、目を凝らすと、船のマストや船体が密集しているさまがうかがえたのですが、線の集積のなかに物体のかたちは消えてしまい、近年は鋭角の線がすばやく往復する画面になっています。

中田さんはこれまで、絵の中に、花を描いた絵を配するという、いわば「メタ的」な作品を手がけてきた。
今回は、上半分がユリの花、下半分がさっぽろテレビ塔から見た、大通公園の俯瞰図です。後者は、ニュース番組のバックの映像などで、道民にはおなじみですね。
すでに完成している石屋製菓・秋田銀行のビルの屋上にまだ建設用クレーンが伸びているのを見ると、2年ほど前の状態のようです。
中田さんは、最近デジタル絵画を見る機会があり、アナログとデジタルの対比という狙いをこめて、今回の作品を手がけました。
もちろん、ユリがアナログ、札幌の俯瞰図がデジタルです。
ビルの輪郭や道路の白線、大通公園の街路樹などが、白や赤、緑など限られた色で描かれています。この部分がすごいのは、それぞれの建物や道路の白線が一筆がきで描かれていること。
「ほんとうは、すべてを一筆で描ければよかったんですが、時間切れで…」
と中田さんは話します。
中田さんの絵は、理論でスパッと割り切れる現代美術とはいえないと思いますが、だからといって、その試行錯誤を無意味なものだと切り捨てるつもりは、筆者にはありません。むしろ、21世紀にあえて「絵画って何だろう」という問いを抱えつつ制作に臨む姿には、敬服の念を抱きます。
2015年4月23日(木)~28日(火)午前10時~午後6時(最終日~4:30)
大同ギャラリー(札幌市中央区北3西3 大同生命ビル3、4階)
□二科会 http://www.nika.or.jp/
■第10回 二科(絵画)北海道支部展 (2010)
■第9回二科北海道支部展(絵画)
■柴康男個展 (2014)
■亀井由利個展■柴崎康男個展 (2007)
中田登さんの絵画と「メトロギャラリー」 (2015年3月)
■North_Khaos展 (2009)
■京都造形芸術大学OB「North-Khaos展」(2008)
※以下、画像なし
■第8回(2008年4月)
■第7回
■第6回
■第4回(3月21日の項)
■第3回
■第2回(16日の項)
■第1回(16日の項)
LEBENS(生命・人生)展 2006=柴崎さん出品
■柴崎康男・亀井由利2人展 (2004)