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北海道美術ネット別館

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■嶋田観遺作展 (2015年2月16~21日、札幌)

2015年02月20日 01時23分45秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 小樽の版画家、嶋田観さんが昨年がんで亡くなっていたことを、ギャラリーたぴおの「遺作展」を見て、初めて知った。

 2006年に、たぴおで個展を開いていたようだが、拝見していない。
 その後は、たぴおのグループ展に何度か出品されていたが、たぴおの主宰者の竹田博さんが所蔵している品だったりしたので、実際にはこの10年近く、それほど活動していなかったと思う。
 それ以前は、小樽の現代美術シーンを代表する存在として、グループ展の開催や、海外との交流にも積極的だった。

 題を記した紙などが全く壁に貼られていないため、紙の下側に鉛筆で記入された文字から読み取るしかないのだが、冒頭画像のうち、正面の左は「SNAP ON THE PAPER 87-26」、中央は「SNAP ON THE PAPER 87-7a^b」と読める。右側の作品には、まったく記載がない。

 この「SNAP ON THE PAPER」シリーズは、大工道具の墨壺を用いた作品。
 説明によると
<画面全体に密に線を引くことで線の美しさはそれ自体を越えて、いつしか墨一色の画面に移行、最後は膨大な時間だけが表出する。>
とある。

 行為を重視した抽象作品。これはモノタイプというより、タブローというべきかもしれない。




 右から「VIEW POINT GA No.1」「VIEW POINT GA №4」「VIEW POINT GA №2」。
 いずれも2003年の作品。
 同じ小樽の版画家であった一原有徳さんの影響はあきらかであろう。
 嶋田さんは一原さんから譲り受けたプレス機を使っていたという。

 ただ、嶋田さんのおもしろいところは、造形の話よりも、化学の話が好きだったところだという印象がある。薬品や画材をどう混ぜ合わせるとどんな効果が出るかということを、2001年の個展の際に力説していた。
 だからフォルムがクリアに表現されるというより、もっとどろどろした感じが出ている。




 こちらは80年と81年という記入がある。
 ポップな仕上がりだ。なんとなく、画面の雰囲気は、ジョナサン・ボロフスキーとかデイヴィッド・ホックニーがよく美術雑誌に登場していた時代だよな、という気がする。

 こちらのツイート( https://twitter.com/s_art_beans/status/567713344245612545 )によると、「生前にニュージーランドで版画指導した教え子の作品」もあるそうだが、どれがそうなのか、わからない。


 嶋田さんは1955年、後志管内余市町生まれ。大阪芸大で写真を学ぶ。
 その後、小樽に移り、小樽や米国の作家による国際展「パシフィック・リム」開催に尽力したり、小樽版画協会展に出品したり、さらには米国で一原さんと2人展を開いたり、さかんに活動していた。

 97年春の北海道新聞夕刊文化面から。

 小樽在住の嶋田観さんは、銅板の代わりに鉄板やトタン板、アルミニウム板を腐食させて制作したエッチングの近作を、札幌での個展で展示している。いずれもモノクロームの抽象作品だ。

 鉄板を雪の中に何カ月も埋めて発生した微妙なさびをそのままプレスしたり、松やササの葉に腐食液を付けて金属板と同時にプレスするなど、さまざまな手法を駆使。

 トタン板を用いた縦一・八メートル、横二・七メートルの大作では、縦の直線を何本も彫った木版と重ね刷りし、腐食したトタンから浮き出た横線模様と交錯させた。「厚いインクの質感を出したかった」と嶋田さん。(以下略)


 ほかの出品作は次のとおり。
MONDORIAAN (81)
VIEW POINTS GA No.5 (2003)
98-10-9 B.V.C 
SNAP ON THE PAPER 87-10

HAND IN POINTS (81)
OH! WOOPY (80)
BASE BALL (81)
Jumping Screen (81)


 ご冥福をお祈りします。


2015年2月16日(月)~21日(土)午前11時~午後7時
ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)

嶋田観個展 (2004)
嶋田観展 (2002年)
SPRITED CANVASES 2 -KAN SHIMADA EXHIBITION- (2001)



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