
渡辺良一さんはオホーツク管内美幌町在住で、主体美術会員。
9日から開かれているオホーツク美術展にも会員として平面作品を発表している。
札幌で数年に一度開かれる個展や、主体美術北海道の展覧会では、空間と時間の広がりと厚みを感じさせる絵画を発表しており、ご覧になった方もいるだろう。
その渡辺さんが、写真を素材とした個展を、美幌の隣町の北見で開いているという。
案内状には次のような文章が載っていた。
そういう発想で制作されたのが、冒頭画像の「yuragi」シリーズ10点なんだろう。
カメラは、すごく近い距離のものにはピントが合いづらいけれど、カメラに装着して至近距離の撮影を容易にする「接写リング」とか「クローズアップレンズ」を取り付けて、遠くの風景などを撮った。
わざとピンボケにして撮られた写真は、抽象画のような、それでいて人の姿などがぼんやりとわかる、ふしぎな世界をつくりだしている。
支持体は水彩画の用紙で、いっそう絵のような雰囲気をかもし出している。
写真をモノクロプリントして、ちりばめた作品もある。

「trace」と題された連作から。
左右とも、画材のアルミ箔に、銅版画で使う腐蝕液を付けて透明度を調節し、何枚も重ねている。
コンピュータのイラストレーターなどのソフトウエアを使ったことのある人はわかると思うが、透明度を何%かにしてレイヤー(層)を重ねていく、あの発想と同じだ。
画像右側の2点は、小さいモノクロプリントをちりばめている。
渡辺さんが最近撮影したのに、40年も前のアルバムからベタ焼きを掘り出してきたもののように見える。
左の作品「Trace9」は、よく見ると、支持体というか、レイヤーのいちばん下の層に、カラー写真が使われている。
ちょくちょく訪れる十勝管内中札内村で撮りためたものとのこと。
表面の、傷のような直線の模様は、中札内市街地の道路の形状だ。
「Trace5」や、「Translucent」の1から5まではおもに、古文書の紙と、トレーシングペーパーにレーザープリンターで出力した写真を組み合わせている。
古文書は裏返しになっていて読めない(まあ、表になっていても読めませんが)。

右側は、レコードのラベルの部分に写真をプリントして貼り合わせた。
30センチと17センチの中間の大きさで、60年代までは出回っていたレコードである。
レコードも写真も、記録の媒体であり、いわば記憶の化石のような存在である。
半透明な層の重なりも、そういう記録と記憶の層の重なりや、時間の経過のようなものを思わせる。
今回、渡辺さんが展示した小品は、写真も使った余技というものではないだろう。絵画での問題意識と、通じるところがあるからだ。
時間の積み重なりと経過について、それを安直な象徴的技法で図解したり、詠嘆してみせたりした作品では決してないだけに、いろいろ考えさせられる個展なのであった。
2012年9月5日(水)~11日(火)9:30am~5:30pm(最終日~2pm)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2)
□サイト「ナベさんの自遊館」
【告知】渡辺良一プチ個展(2011年)
■第34回春季オホーツク美術展(2011年)
■渡辺良一個展(2010年)=画像あり
■第7回主体美術北海道グループ展(2009年6月)
■石崎哲男個展・齋藤典久展・渡辺良一展(2006年)
■第5回主体美術北海道グループ展(2003年)
9日から開かれているオホーツク美術展にも会員として平面作品を発表している。
札幌で数年に一度開かれる個展や、主体美術北海道の展覧会では、空間と時間の広がりと厚みを感じさせる絵画を発表しており、ご覧になった方もいるだろう。
その渡辺さんが、写真を素材とした個展を、美幌の隣町の北見で開いているという。
案内状には次のような文章が載っていた。
写真(光画)は作品と云うより記録として長年
使用してきた。フイルムからデジタルに移り変わ
り、暗室から日の光の下で現像プリント出来るよ
うになってきた。徐々に私の中で記録から気の合
う表現手段へとなってきた。油彩・アクリル・ミ
ックスドメディア・写真(光画)、自分の間合い
で表現出来る方法があればいいと変化する環境の
中で思うようになった。
今、写真というより光画という視点で光の揺ら
ぎのなかの形を求めシャッターを切り続けている。
ある半透明な光景の中の揺らぎを求めて。
そういう発想で制作されたのが、冒頭画像の「yuragi」シリーズ10点なんだろう。
カメラは、すごく近い距離のものにはピントが合いづらいけれど、カメラに装着して至近距離の撮影を容易にする「接写リング」とか「クローズアップレンズ」を取り付けて、遠くの風景などを撮った。
わざとピンボケにして撮られた写真は、抽象画のような、それでいて人の姿などがぼんやりとわかる、ふしぎな世界をつくりだしている。
支持体は水彩画の用紙で、いっそう絵のような雰囲気をかもし出している。
写真をモノクロプリントして、ちりばめた作品もある。

「trace」と題された連作から。
左右とも、画材のアルミ箔に、銅版画で使う腐蝕液を付けて透明度を調節し、何枚も重ねている。
コンピュータのイラストレーターなどのソフトウエアを使ったことのある人はわかると思うが、透明度を何%かにしてレイヤー(層)を重ねていく、あの発想と同じだ。
画像右側の2点は、小さいモノクロプリントをちりばめている。
渡辺さんが最近撮影したのに、40年も前のアルバムからベタ焼きを掘り出してきたもののように見える。
左の作品「Trace9」は、よく見ると、支持体というか、レイヤーのいちばん下の層に、カラー写真が使われている。
ちょくちょく訪れる十勝管内中札内村で撮りためたものとのこと。
表面の、傷のような直線の模様は、中札内市街地の道路の形状だ。
「Trace5」や、「Translucent」の1から5まではおもに、古文書の紙と、トレーシングペーパーにレーザープリンターで出力した写真を組み合わせている。
古文書は裏返しになっていて読めない(まあ、表になっていても読めませんが)。

右側は、レコードのラベルの部分に写真をプリントして貼り合わせた。
30センチと17センチの中間の大きさで、60年代までは出回っていたレコードである。
レコードも写真も、記録の媒体であり、いわば記憶の化石のような存在である。
半透明な層の重なりも、そういう記録と記憶の層の重なりや、時間の経過のようなものを思わせる。
今回、渡辺さんが展示した小品は、写真も使った余技というものではないだろう。絵画での問題意識と、通じるところがあるからだ。
時間の積み重なりと経過について、それを安直な象徴的技法で図解したり、詠嘆してみせたりした作品では決してないだけに、いろいろ考えさせられる個展なのであった。
2012年9月5日(水)~11日(火)9:30am~5:30pm(最終日~2pm)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2)
□サイト「ナベさんの自遊館」
【告知】渡辺良一プチ個展(2011年)
■第34回春季オホーツク美術展(2011年)
■渡辺良一個展(2010年)=画像あり
■第7回主体美術北海道グループ展(2009年6月)
■石崎哲男個展・齋藤典久展・渡辺良一展(2006年)
■第5回主体美術北海道グループ展(2003年)
アトリエ作業から展示へと自作と対峙する空間が変化する事から受ける微妙な感触を、次なる自作へ受け継がれればと思っています。
会場に詰めていると、自作と向き合う時間になりますよね。
興味深い展覧会だったと思います。伺うことができて良かったです。