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北海道美術ネット別館

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■行動展北海道地区作家展 (3月6日まで)

2010年03月05日 17時43分04秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 第二次世界大戦の末期、日本の美術団体は事実上の解散状態に追い込まれていた。東京は空襲で焼け野原となり、展覧会どころではなくなっていたのだ。
 知名度の高い団体公募展である「二科」も例外ではなかったが、戦争の終結とともに、日本の美術にも新しい動きを起こそうという二科のメンバーらが発足させたのが「行動美術」と「二紀」である。旗揚げに加わらなかった作家もいたので、戦前までの「二科」は、三分裂することになった。

 行動美術は、二科にくらべると、一般的な知名度は低いけれども、筆者はわりと好感を抱きつつ見ている。
 絵画と彫刻の2部門で、型破りの作品も受け入れる幅の広さがあるように感じられる。絵画は、具象と抽象がだいたい半分ずつで、エネルギッシュなところは独立美術とも共通しているけれども、やはり作風は違う。

 発足会員に、ふたりの北海道出身者(田中忠雄、田辺三重松)が名を連ねていたこともあり、以前から道内ゆかりの会員も多い。
 函館では毎年巡回展も開かれていたが、会員の高齢化などに伴い2006年で長い歴史に幕を下ろした。
(しんじられない話だが、これに伴い、毎年道内に巡回している団体公募展は、「春の院展」をのぞけばゼロになった。地元会員や出品者による地区展は、今回のように盛んに開かれているが)
 今回も、旭川地方の会員は出品しているが、函館の会員の作品がすくないのは残念だ。

 会員は、石原佑一(函館)、神田一明(旭川)、岸本裕躬(札幌)、斎藤矢寸子(旭川)、高橋三加子(旭川)、富田知子(札幌)、矢元政行(登別)の7人が出品している。
 ちなみに、岸本以外の6人は全道展会員でもある。
 ベテラン神田の「狂女」は、例によって、散らかった部屋に人物がすわっているという図。近年は、心あたたまる母子像などを配したこともあったけれど、今作は、山吹色のスカートをはいた女が画面右で、両腕を抱えながら所在なげに、いすに腰かけていて、部屋の様子とあいまって、ただならぬ雰囲気を感じさせる。
 床に散らばっているのは大きな掛け時計、グラス、パソコン、新聞紙など。猫もいる。大半はイエローオーカー系の色で塗りつぶされ、言いようのない悲哀と空虚感が画面を覆う。
 斎藤は、気球に乗る女性と犬がモティーフ。眼下の風景が開放感をもたらしているが、犬は体の一部が欠落しているように見える。

 会友。
 伊藤幸子「天壌無窮」にひかれる。
 小舟のような形のスペースに、仰向けに横たわる女性を、真上から描いた図。頭部が下になるが、ペンクのように、宙づりの人物というわけではない。
 茶系をメーンにした配色や、垂直を強調した構図は、どこか小谷博貞が具象に転じたかのような印象を受ける。そして、小谷と同様、重い精神性のようなものを漂わせる。

 重いと言えば、小笠原実好「復活」もあいかわらず重厚。
 金属板などを貼りつけた画面が黒いのは、火で焦がしたためだろう。

 一般では、抽象に力作が多いと思った。
 若手の石川潤が「呼吸」シリーズをさらに発展させている。
 「呼吸 II」は、細い三角形の茂みの穴が細長くなり、なまめかしさのようなものを感じさせる。「呼吸 I」は、モノトーンの世界である。
 
 和泉よう子もコラージュである。
 紙や布、板を貼りつけて荒く重い画面をつくる技法自体はもはや新しくも何ともないが、
全体から緊張感が漂う。
 古澤綾子は、紫や青の結晶が森を形成しているような世界。あるいは、エルンストが油彩に取り組んだら、こんな絵ができるのかもしれない。


 出品作は次の通り。
会員
石原佑一 人間家族2010-1(F150)
神田一明 狂女(F150)
岸本裕躬 両棲類夏之池端(F130)
斎藤矢寸子 卵形都市-飛航(F150)
高橋三加子 森のひと(F130)
富田知子 渇いた伝言(何処へ) (S100)
矢元政行 飛行船I (M100)

会友
伊藤幸子 天壌無窮(P150)
小笠原実好 復活(F150)
菊地章子 メモリーI(F130) メモリーII(F130)
北村葉子 回想録(F150)
近藤みどり 私の花飾学(F130)
佐々木治 無告の人(F130)
星エイ子 忘れ得ぬ日々、2010 (F150)
松木眞智子 新生(P150)

一般
石川潤 呼吸I(S100) 呼吸II(S100)
和泉よう子 '09刻の記憶 I(182×227センチ) '09刻の記憶 II(168×171センチ)
梅津美香 真夜中の食卓(F100)
北村京子 家族の肖像(記憶の中で・・・) (F100)
斉藤靖彦 遙かに山を望む林間地 (10×10×10センチ 真鍮)
佐藤静子 作品1(F130)
小林和子 讃歌(F130)
中江孝子 ルリの花束(1)(S100) ルリの花束(2) (S100)
古澤綾子 幻華 I(F120) 幻華II(F120)
真鍋和子 ゆりかごから墓場まで(F100) 最終回廊 (F100)


2010年3月1日(月)~6日(土)10:00~6:00(最終日~5:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A



□行動美術協会 http://www.kodo-bijutsu.jp/

関係エントリ
2008年の行動展北海道地区作家展


岸本裕躬 絵画自選展 生への限りなき哀歌1955-2009 (2009年12月)
松木眞智子展(2008年)
北村葉子展 (2007年)
神田一明個展 (2006年)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
行動展の小笠原実好さん (根保孝栄・石塚邦男)
2013-01-24 00:42:27
ダイナミックですね。
彼も無差別級柔道家のように巨人ですが、実に竹を割ったようないい性格。

若いときからセンスありましたね。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2013-01-24 20:49:01
久しぶりにコメント、ありがとうございます。
小笠原さんの作品って、重そうですよね。以前、夕張市美術館で個展を拝見しましたが、ずしんずしんと迫ってくるようでした。
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