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北海道美術ネット別館

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■今明美写真展 (2013年10月25日~11月30日、札幌)

2013年11月27日 01時23分45秒 | 展覧会の紹介-写真
 ブログ「エピキュリアン」で知って、行ってきました。
 今さんは2002年から写真を始め、各種コンテストで相次ぎ入選、入賞を重ねています。
 写真道展では、異なる部門でまったく違う作風の写真を上位入賞させていたことを、筆者も記憶しています。

 今回、壁面に並んでいるのは18点(うち1点モノクロ)で、そのすべてが入選、入賞作。これ以外にも、コンテスト入選作が、アルバムに収録されているのですから、驚きです。
 写真の楽しみ方はいろいろで、コンテスト出品やカメラ雑誌への投稿が唯一ではありませんが、それらでの入選・入賞を狙っている人は、この写真展に行ったほうがいいかもしれません。

 初心者がよく指摘されるのは、「的を一つに絞れ」ということです。
 ひとつのフレームにあれもこれも入れようとして、要するに何を写したいのか、わからない写真になりがちなのです。
 といって、被写体を絞り込むと、こんどは、ほかの人の作品と差異をつけるのがむずかしくなってきます。
 今さんの写真、たとえば「盆踊り」などは、金魚すくいでゲットした金魚を手前にインサートし、奥に、踊りの輪と、太鼓の塔を入れるという、欲張りな作品になっています。
 あるいは「夢の空間」は、モエレ沼公園と、手前の空間を飛ぶシャボン玉を入れることで、斬新な画面をつくりだしています。

 では、なぜ今さんの作品が散漫なものにならないのか。
 それは、初心者の場合、複数の被写体を互いに離したまま画面に入れるので、左の被写体を撮りたいのか、右を撮りたいのか、わからない1枚になりがちなのに対し、今さんは複数の被写体を、うまく重ね合わせるように入れているのです。したがって、構図に無駄がありません。おそらく、作品以外に、膨大な数のシャッターを切っているに違いありません。
 そして、前後の被写体に同時にピントが合うようにするためには、被写界深度を深くする(F値を大きくする)必要があります。このあたりも、三脚を用いるなどしてブレを防いでいるのではないかと想像します。

 もう1点、今さんのすごさを挙げるとすれば、露出の確かさです。
 「幸福の窓」という作品を見て、筆者は驚きました。
 舞台は、かつて全国的ブームを巻き起こした、帯広の幸福駅です(題のつけかたも、うまいんだよなあ)。
 冬の昼間。赤と緑の二人の女性が立ち話をしているのが、窓越しに見えます。窓の手前の壁には、切符がびっしりと貼られています。
 雪の積もった屋外に露出をあわせれば、手前の壁は真っ暗になるでしょうし、壁に貼られた切符が見えるようにすれば、雪の屋外は白く飛んでしまう恐れが強いです。にもかかわらず、屋外は自然な明るさだし、切符もちゃんと見えます。これが、いかに大変なことか、カメラを持ったことのある人なら分かると思います。

 いずれにしても、漫然とカメラを向けたり、他人とおなじ作品を撮ったりするのではなく、複数の異なる要素を入れることで斬新な画面をつくろうとする意欲には、敬服した写真展でした。


2013年10月25日(土)~11月30日(土)午前10時半~午後10時、木曜休み
EARTH COFFEE(札幌市豊平区月寒西1の11)



・地下鉄東豊線「月寒中央」駅の4番出口から約720メートル、徒歩9分
・中央バス「月寒中央通10丁目」から約400メートル、徒歩6分
・中央バス「西岡市営住宅」から約510メートル、徒歩7分


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