Blog~続・トイレの雑記帳

鉄道画像メインの「ゆる鉄写真ブログ」のつもりでしたが、
政治社会の事共について記したくなり、現在に至ります。

戦後荒廃と学問の危機

2015-07-12 11:31:58 | 社会・経済

2015=平成27年7月も第2週、昨日辺りより、梅雨の晴れ間に入って日中は暑くなって来た当地愛知である。南方にはこの時季の主役 梅雨前線と複数の台風が控え、悪くすると台風第11号が我国本土近くを通り、広い地域にて荒天となる事も懸念されるとか。今週後半は、可能なら日本海側へ遠出のつもりもあるので、空模様とも相談の上になりそうだ。

政治社会の事共は、内外共に難しい状況が続く。今年初来の懸案、安全保障法制案は、目玉とも言える、集団的自衛権の限定容認を巡って揺れ続け、今週後半に見込まれる衆院採決も難航しそうだ。政府与党の説明が依然不十分もさる事ながら、野党側の調査研究不足から来る無理解と無用な反発も目立つ。報道メディアにしても、本当に国民市民が理解できる様配慮した伝え方が不足している印象もある。十分な議論もそれは必要だろうが、「何が一番大事か」と言う、いわば真理の見極めの様な心がけが圧倒的に不足しているのではないか。この様な国民的課題の解決には、(左派野党の嫌う)挙国一致的な取り組み姿勢が是非とも必要だと心得る。それがあってこそ、国民的合意・コンセンサスも得られると愚考するのだが。

安保法制問題一つ取っても、与野党双方の主張合戦はあっても、必要な場面での一致協力が少な過ぎるのではないか。この様な無用な対立が多過ぎる様に見えるのは、やはり戦後教育の弊害と見て良いと思う。過日の新聞記事で恐縮だが、京都大名誉教授 佐伯啓思さんと地元紙 C新聞論説委員 大西 隆さんの対談記事後半を引用して、以下見て参りたい。両氏は対談の前半で、20世紀の先の大戦後、米合衆国主導で全世界的に強行されて来た、理工系など自然科学分野での統計数字や成果を崇拝する実証主義科学史観が、その尺度では測れない人文社会科学分野を脅かし続けて来た事実を指弾した上で、その悪弊が国際テロや凶悪な少年非行、遺伝子操作などの生命倫理の欠落などに繋がっている事を指摘されている。

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「なぜ『学問の危機なのか』~見えぬ『知』に真理宿る」

大西委員「本当の教養とは、幅広い知識を身につけ、英語を操ることではなく、自分なりの考え方や視座、価値観を獲得することと言えそうですね。そうすると、人文社会系の学問を冷遇する大学改革はむしろ害悪でしょう。」

佐伯教授「最も深刻だと思うのは、学問のグローバル競争の中で、人文社会系の知識には国籍があるということが忘れ去られていることです。情報としては確かに国境を越えますが、それが生まれた国の文化的な蓄積と無縁なはずがないのです。西欧の学問のベースには、古代ギリシャ以来の哲学やキリスト教的精神が伝統的価値として流れています。だからこそ、かつて明治の知識人たちは、慌ただしく輸入した西欧の科学や知識を日本の文脈にどう位置づけるのか、学ぶ意味はどこにあるのかと葛藤したと思います。

例えば、西欧化を訴えた福沢諭吉も『独立心』を唱え、古いものを捨て去ることが文明開化ではなく、日本人が自らの頭で考えられるようにならなくては無意味だという立場を取りました。留学組だった森 鴎外は武士道に回帰したし、夏目漱石は『(所謂エゴイズムでない)自己本位』という考えにたどり着いた。西田幾太郎が創始した京都学派はまさにそうですが、東洋思想と西洋哲学の融合に腐心したわけです。そうした背景には漢学や朱子学、儒教、仏教、神道といった精神風土、土着の文化や習俗の中で連綿と培われてきた日本人の感受性というものがあった。学問とは国や地域の歴史観や宗教観、自然観と切り離せないのです。」

大西委員「戦後、戦争イデオロギーとして封印されたり、米国の占領政策で放逐されたりしたものも多かった。でも、今は縮小時代です。生きる意味より生きる糧、教養より仕事が先決だという声も強いですね。」

佐伯教授「もちろん、お金は大事です。けれども、競争主義社会では自分が勝つことは相手の足を引っ張ることだし、年収1億円を稼いでも、家族離散とか子どもの非行とか痛い目に遭う場合もあるでしょう。すると1億円という統計的事実は残りますが、誰かの足を引っ張ったことや家族の悲劇は数値化されないから個人の責任、価値判断の誤りに帰されてしまう。それで幸せで豊かでしょうか。人々が将来共生していけるのでしょうか。戦前戦後を通じ、日本の学問の中心は欧米からの輸入ものばかりでした。日本人は自らの頭で考えるのでなく、欧米の文脈でできた知識や思想をあたかも自ら考えたように扱ってきたのです。グローバル競争が激しくなる中で、日本人の目に見えない感受性、心に響く学問を創り出さなくてはなりません。日本を故郷とする学問こそが最も必要とされる時代だと思うのです。」

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お二方の記事を拝見していると、要するに文教の分野でも、米国流の営利や成果志向とか、費用対効果に代表される効率志向などが、そうした価値観で成り立ってはいない哲学や宗教、人の良心などの分野までも判断基準として押し切ってしまい、為に精神的基盤が崩壊してしまった、正に「戦後の不幸」の姿が窺える。「力で押し切る」のは米合衆国の、他国支配の常套手段である。国際経済の「グローバリズム」も結局は「アメリカニズム」なのだ。正に日本国憲法第23条「学問の自由」が脅威に晒されていると言う事だ。

戦後の荒廃は、この「東京裁判」以来の、社会経済におけるアメリカニズムの暴力的蔓延と誤った自由主義、それに日教組こと日本教職員組合主導の「一見平和教育、実はお人好し仲良し教育」によって、明らさまに罷り通って来た。その結果、内政面では件数こそ減ったものの、深刻さの度合いを増した未成年者による凶悪事件や、こちらは一向に減らない深刻な飲酒交通事故などとか、外交面では朝鮮民主主義人民共和国による日本人拉致事件、それに過激な反捕鯨勢力による我国遠洋漁船攻撃事件などとなって表れているのである。余談かもだが、中高年層を標的にした、続発する特殊詐欺被害も、その様な不良教育と無縁ではないかも知れない。

中国大陸や大韓民国の国民市民は、外交などで相手国に訴え、アピールする「ロビー活動能力」に優れていると言われる。これなどは、小学生など早い段階から、自国民の子弟向けに、こうした活動の重要さを教えているからである可能性が高い。或いは、我国との歴史問題などが、一際異様に加熱する所があるのかも知れないが。「相手国に自国の事共を理解させ、外交を有利に運ぶ事は、大切だし面白い」事を、上手に教えているのだろう。実際に、米大陸に住む中国人や韓国人の団体が、犬を食用としている事実に、現地の動物愛護勢力が攻撃して来る事を抑え込むなど、一定の効果を上げている様だ。勿論、同時に愛国心も大いに教化している事だろう。そうであれば、親や教師がうるさく注意せずとも、子供達は自ずと勉強に打ち込むはずだ。我国の価値基準は、ここの所が首でも切られたかの様に抜け落ちてしまっている。「必ず国籍があり、その事を大切に思う心」が再建されない限り、我国の子供達や若者達は永遠に幸せにはなれないし、閉塞した社会状況も改善しないであろう。そしてそれを妨げているのは、勿論、日本国憲法や、今はないはずの1947=昭和22年教育基本法を後ろ盾にした「米国追随戦後レジーム」である事申すまでもない。残滓は大いに残っている。安倍政権も、その払拭を公約に揚げてはいるが、これは多くの国民市民の自覚がなくては遂げられない事と心得る。

今回画像は先月後半、滋賀県下の琵琶湖東岸で見かけた、美しい田園と、それを横目で応援する様に駆け抜ける、北方を目指す満載の貨物便の様子。この時季の琵琶湖辺りは、どこも田植えを終わった鮮やかな水田が魅力有です。この日本的な風情が永続して欲しいと願うのは、決して俺だけではないと思うのですが。

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6 コメント

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Unknown (ココ)
2015-07-16 00:10:11
先に後半部分から ・・・ 「必ず国籍があり、その事を大切に思う心」が再建されない限り、我国の子供達や若者達は永遠に幸せにはなれない
その通りだと思います。自国を愛する・・・こんな単純明快な事が何故に日本では、難題になっているのか??
そして前半の安全保障法制案やっと衆議院を通過!
ハカセさんは 政府与党の説明が依然不十分 と書かれてますが私は 解ろうとしない、頭から反対で聞く耳を持たない人達にいくら説明をしても無理!
逆に説明し過ぎた、議論の場を持ち過ぎたために
マスコミ等の 安全保障法案=戦争=徴兵制
みたいなゆがんだ報道を垂れ流す原因になったようにも思えます。

阿比留留比氏が書かれているように
たとえ、その時点ではまだ「国民の十分な理解を得られていない」(首相)としても、
政治家は「今、そこにある危機」から目をそらしてはいけないというのが首相の信念なんだろう。

首相は今になって急に、事を進めようとしたわけではない。

安倍首相は危機感に直視されて支持率下落覚悟で国民を守るという信念を貫かれたと・・・
今、バカみたいに戦争反対!っと叫んでる人達も
何年か後にきっと
あの時、安倍さんで良かった!って思える時が来ると私は信じてます。
返信する
気になる政治の空模様と日本海の空模様 ( mie...*)
2015-07-16 09:59:23
安全保障関連法案
昨日、衆議院の特別委員会で可決しましたね。
特別委員会での野党の攻防等は
まぁ想像通り
そして想像通りの結果に・・・

ン?

今週末は日本海側へお出かけですか?
台風の影響が気になるころですが
お天気がいいといいですね^^
返信する
今、そこにある危機 (HAKASE(jnkt32))
2015-07-16 14:05:56
ココSAN、今回も率直なご見解を有難うございます。
貴指摘で一つ分かった事がありまして。
阿比留さんのご見解中「今、そこにある危機」の所ですね。
安倍政権の、今回の安保法制案への取り組みは、正に「今、そこにある危機」に向けたものやったと心得ます。
近場では尖閣諸島問題、遠くでは、海外の仕事で赴かれた日本人各位の安全確保でしょう。
仰る様に、誠実に丁寧に繰り返し説明しても、一部左派みたく、
頑として理解を示さない向きずあるのも事実。拙方は、
少しでも身近な事例を多用して、より多くの国民の理解を得るべきと思い、説明不足を記した次第です。
安倍大臣は、先月出た雑誌にても安保法制の説明を試みられ、
拙方もそのお蔭で少しは集団的自衛権行使への理解ができた様な感じですが、
より「今、そこにある危機」を身近な形で取り上げて下されば、
より理解が進むし、続く参院での議論にも備えて頂きたいと思いますね。まずはお礼まで。
返信する
空模様ニ題御礼 (HAKASE(jnkt32))
2015-07-16 14:18:04
ミーSANも、ご見解を有難うございます。安全保障関連法案は、とりあえず衆院を通過、参院での議論を待つ事となります。
今国会で成立・・・云々はまだ控えます。何たって、まだ廃案の可能性も捨てきれませんから。
ただ、これまでの流れは、ほぼ予想された事の様ですね。
「予定調和」って言うんですか。昨日の国会委員会の混乱も、半分は分っていた様な。
違憲の疑いも指摘されますが、確かに本筋からすれば、
後一年位は期間を作り、国政選挙~改憲発議~国民投票
~憲法改正を経て安保法制整備へと進むのが正道とは思います。
ただ、現実問題として、改憲の事共に踏込み、真摯に
考えて来なかったツケがこの様な形で回って来たと理解すべきも事実です。
衆院通過は尊重しますが、引き続いての「取扱い注意」はお願いしたいですね。
日本海側への行程、台風の荒天が予想され、延期する事としました。今月末の予定です。
まずはお礼まで。
返信する
Unknown (天声)
2015-07-16 16:31:19
ハカセさんの得意とする分野と私の分野はちょっと異なっており、なかなかコメントするチャンスがなく、すみません。
今回も政治の話で苦手ですがちょっと感じることもあり、コメントさせてください。集団的自衛権が必須なことは当たり前です。
集団的自衛権に反対する人は中国に食い物にされることを望んでいるとしか思えません。
中国の暴力的南沙諸島進出を見れば、誰でも分かることです。日本も日米安保があればこそ辛うじてくい止まっています。
そんなアメリカも世界の警察的立場から退こうとしている今、アメリカが期待している集団的自衛権を日本が受け入れないなど、
中国が手ぐすね引いて待っていますよ。今や、やられたらやり返す個別的自衛権など何の意味もありません。
軍事大国アメリカの後ろ盾がなければ、日本の自衛などせせら笑いながら尖閣を始めとして、沖縄までも侵攻してきますよ。
これは決して大げさではありません。太平洋戦争の犠牲者である沖縄県民の戦争反対の気持ちも分かりますが、
本当に戦争を避けたかったら、もうちょっと考えてもらわねばなりません。戦争に巻き込まれるという意見は、杞憂と思います。
たとえ僅かながらでも可能性があったとしても、それを回避する手段がない訳ではないし、中国の日本を食いものする
危険率の方が遥かに高いし、差し迫っています。国民の街頭インタビューでは何もわかってなさそうなおばちゃんまで
「審議が足りない」等と、偉そうに主張する始末です。与党に反対することを第一と思っている今の野党との審議・議論など
非生産的です。むしろ百害あって一利なしですね。戦争反対という理由の法案の拒否など、ナンセンスな綺麗ごとで、
バカな国民を扇動させるだけです。迷路にはまります。核は反対ですが、核と同じように抑止力が戦争を防ぐのです。
綺麗ごとの「戦争放棄」だけでは、頭のおかしい中国に食いものされるだけです。日本の自衛隊だけでは全く抑止できません。
アメリカも日本がやられたら助けてやると言っているのに、アメリカがやられても知らんふりはないでしょう。
日本も姿勢だけでも示さなきゃ。そうなるとやはりアメリカと仲良く手を組むしかありませんよね。
日本が、話が通じない中国や南北朝鮮の脅威に晒されれいることを忘れてはいけません。ちょっと言い過ぎましたか?

返信する
お言葉通りです! (HAKASE(jnkt32))
2015-07-16 21:20:44
天の声様も、率直なご見解を有難うございます。
集団的自衛権行使の方向性そのものは、拙方も同感であります。
勿論、不当な拡大解釈を許せば、戦前の様な暴走懸念が
ゼロとは言えませんから、公明党や維新の会が主張する
、安全装置としての一定の歯止めは必要かと心得ます。
本当に、中国大陸の露骨な南沙諸島進出の所業を見ても、貴懸念は本当だなと思います。
世界における米合衆国の、警察的立場は仰る様に近年低下しており、
その面よりも、我国の自衛力が適正なものとなる様、努めなければなりません。
抑止力が戦争を防ぐとのご見解は、拙方も全く同感で
、誠実な説明があれば、大抵の国民は理解下さると信じます。
大体、現行の日本国憲法だって、集団的自衛権を是とする、
国連憲章に沿って制定されているのです。徒に安保法制に
反対する向きは、そこの所を正しく理解していない様に思われます。
立憲国家の原則よりすれば、確かに改憲の後、集団的自衛権に
言及するのが望ましいが、これまでの我国は、憲法見直しへの努力を怠りました。
そのツケが、こんな風に噴出しているのかもですね。
貴見解、ちっとも言い過ぎではありません。中庸さ、健全さに脱帽です。まずはお礼まで。
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