鴨南蛮とかの汁ものの蕎麦を注文する。
着丼したら最初に蕎麦を5、6本すくい上げ、フーフーしてからズズズッーとすすりこむ。
ズズズッーしながら横目で何気なくテーブルの上を見ると、七味唐辛子の缶が置いてある。
オッ、そうだ、七味、七味。
と、迷わず缶に手を伸ばし、そして七味をポイポイする。
七味缶さえ目に入らなければ、そのまま七味なしで食べ終えてしまう人でも、七味が目に入ったらもうだめだ。
使わなきゃ損だ、というのとは少し違う、もう本能的というか身体が言うことを聞かないというか、本人が自覚する前に手が出ている。
だが本能的に七味をポイポイしたあと、どのような感想を抱くのであろうか。
ポイポイしてよかった、と思うのであろうか。
意外にポイポイしてよかったと思う人は少ないような気がする。
大抵の人は、ポイポイしてかえって状況が悪化したような、悪化してないような、釈然としない暗い気持ちになっている人が多いような気がする。
七味唐辛子は刺激が強いから、ポイポイしたとたん、汁の味が変わる。
唐辛子がはっきり舌を刺す。
薬味というのは、主役の味を引き立てるためにある。
ラーメンに於けるコショーも、そのことによってスープの味を多少変化させるが、決して圧倒はしない。
ということはわかっているのに、どうしても七味に手が伸びてしまう。
七味唐辛子は厄介な薬味だ。
と思うのでした…