はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

『和風総本家』(テレビ東京)

2014年11月13日 | はなこのMEMO
最近は殆どテレビ番組を見なくなって、午前7時から1時間、NHK地上派とBSのニュース番組を二画面で見た後は、午後6時過ぎまでテレビとは縁のない生活を送っている(会社勤めの人なら当たり前のことだろうが…)

夜の1~2時間程度、好んで見るのはニュースか情報バラエティ?番組である。中でもお気に入りなのが表題の番組『和風総本家』で、毎週木曜日の午後9時からテレビ東京での放映だ。

この番組の何がお気に入りかと言えば、日本の職人にスポットライトを当ててくれることだ。私の不勉強のせいもあるが、この番組で初めてその存在を知る職人仕事が少なくない。この島国には、一体どれだけの職人がいるのだろう?地味で根気の要る手仕事に、何十年と従事して来た職人は、一様に味のある魅力的な顔をしている。そして、驚く程謙虚だ。

ただひたすらに、伝統の技を守る覚悟を持って、或いは、より良い物を作りたいと言う心意気で、ひとつの製品が出来上がるまでの行程に、真摯に丁寧に取り組んでいる。所謂「労働生産性」と言う観点で見れば、「労多くして実入りの少ない」仕事が多いのだろう。その仕事ぶりは効率性とは対極に位置するものであり、金儲けを第一に考えたら、選ばない仕事のひとつだろう。

職人とは、敢えて愚直に、不器用な生き様を選んだ人々のように見える。しかし、同時に人一倍モノ作りへの拘りは強く、自らの仕事に誇りを持ってる人々のようにも見える。そして、この職人気質は本来、多くの日本人が持っていたのだと思う。


『和風総本家』と言う番組の素晴らしいところは、その職人達と、職人達が世に送り出した製品の使い手を結びつけたところにある。本来なら出会うことのなかったであろう作り手と使い手。その両者が番組の計らいで、ビデオを通して互いの顔を知る。使い手は自分が普段愛用している品が、誰によって、どのような工程を経て出来上がったのかを知り、一方作り手は、自分が作り上げたものが、誰の為に、どのような形で役立っているのかを知るのだ。その時の両者の表情を見るのが、私は番組の中で最も好きなところであり、しばしば感涙してしまう。

使い手は、職人の丁寧な仕事ぶりと、その工程の複雑さ、大変さに驚き(特に外国人は、製品が殆ど職人の手仕事によって作り出されることに驚くようだ)、職人に尊敬の念を抱くと同時に、製品への愛着をより一層深める。それに呼応して、自分が作り上げた製品が実際に使われる様子を目の当たりにした職人は、使い手に大変感謝されていること、時には自分も想像だにしない所で自分の作ったものが役だっていることを知って驚くと同時に、それらの事実を知ったことで、自らの仕事に係るさまざまな苦労が一瞬にして報われたかのような感激の面持ちを見せる。そして、殆どすべての職人が、こう口にするのだ。「これまで(いろいろ苦労はあったけれど)、この仕事を続けて来て良かった」

こういう"人々の真心の交換に立ち会える瞬間"は、日々の暮らしの中でそうそうあるものではない。見終わった後に、人間の善良な部分に触れられたような心地よさを感じる番組である。

【追記】

昨日の放送で、美術に少しばかり関わる者として特に興味深かったのは、日本に移住して32年間、木版画に取り組んでいるカナダ人アーティストの発言である。「日本の木版画は、かつて作られた時代の光の下でこそ、その美しさが際立つのです。つまり、現代のような上からの照明の光ではなく、行灯や窓から入ってくる横からの光。これによって、木版画作品の彫りの立体感が際立って、本来の美しさを堪能できるのです。」

これは、美術館における日本の伝統的な木版画の従来の展示形式を再考させるに十分な、作家からの提言ではないだろうか?
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