はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

医者の世襲に思うこと

2007年01月09日 | はなこのMEMO
渋谷で起きた兄による妹殺害事件はマスコミで逐一報道がなされ、
巷間でも話題になっています。


新年早々、マスコミは格好の餌食を得て、
毎日のように被害者・加害者の周辺部に聞き込みをする等して、
さして重要とも思えない些末な情報まで垂れ流しにしています。
今朝たまたま目にした被害者と仕事を共にしたと言う女優の卵。
口では「残念」と言いながら、顔は終始笑っていました。
売名のチャンスと思ってつい笑みがこぼれてしまうのか、
或いは田中律子と若槻千夏を足して2で割ったようなその顔は
美容整形の賜で手術の後遺症で顔の筋肉が動かないのか、
「悲しい」と言いながら微笑み続けるその女性の表情が
不気味で不思議でなりませんでした。

しかし、これまでの数多の猟奇的な事件、残虐な事件の真相が
明らかになっていないように、この事件も結局漏れ伝わる情報の
断片だけを頼りに、部外者は勝手に想像するしかないのです。
人の心の中なんてそう簡単に測れるものじゃないし、
誰の心にも正気と狂気は併存しているのかもしれない。
正気と狂気はもしかしたらコインの表裏のようなもので、
それがいつ、どのようなきっかけで反転するやも知れないのです。
それに個々の要因は単独ではそれほど重大事でなくても、
それが悪いタイミングで重なったり、
複雑に絡み合ったりしたが為に、
不測の事態が起きることは、事件・事故にはままあること。
起きたこと、結果は事実として事件簿に記録されはしても、
その原因を「これだ!」と特定することは難しいんでしょうね。

私自身がこの事件でもっぱら興味を抱いたのは、
医者という職業の世襲性です。
医者の家に生まれた子供は医者になるのが当たり前という
コンセンサス?は特に開業医の家庭では顕著でしょう。
どの地域にも代々医者の家系というのは存在する。
作家の森鴎外など、その典型でしたね。
今回の事件の加害者には、「歯科医」という1本のレールしか
敷かれていなかった不幸を感じました。
親がそれ以外の道を許さなかったのか?だとしても彼には
親の敷いたレールに逆らう反発力もなかったのか?
子育て真っ最中の親のひとりとしては考えさせられます。

九州の甥っ子が自ら中学受験をしたいと言いだし、
普通のサラリーマン家庭の弟の家は専業主婦だった義妹が
外に働きに出て塾代を捻出しました。
彼女いわく、6年生で入塾した当初、甥っ子の成績は下位。
しかし本人の頑張りもあって
先行する他の塾生らに次第に追いついて来て、今では上位クラス。
周りの塾生は皆、私立小学校に通う医者の子供ばかりだそうです。
彼らは「医者になるのよ」と幼い頃から言い聞かされて育った
子供達ばかり。当然母親の意識も違う。
その為か、義妹はいつも塾講師に「お母さんの自覚が足りません」
と釘を刺されるのだとか。

しかし、医者の子供は必ず医者になるべきものなのでしょうか?
医者の子供だからと言って、その資質を必ず備えているとは
限らないのではありませんか?
周囲を見渡しても、立派な学歴を持った親の子供が、
必ずしも皆、学力優秀児とは限りません。その逆もまた然り。
たとえ学力的にはクリアしたとしても、
人の病を治療する医者としての人間性はまた別の話です。
長く地域医療を担って来た責任感の強い開業医の子弟なら、
その背中を見て育つだけにまだ見込みがあるかもしれませんが。

以前かかったことのある某医師は、
診察の際にウンともスンとも言わない。ただ処方箋を書くだけ。
変な医者だなあと思っていたら、その後トンデモナイ事件を
度々起こし、何度となく警察沙汰になっています。
学力的にはクリアしても医者失格の典型例だと思う。
いえ、彼の場合、医者である以前に社会人として失格です。
(そういう人が医師免許を持っていること自体恐ろしい!)

まず人間に興味のない人、人間が好きでない人~
人を人と思わない人には医者になって欲しくないですね。
そして、他人ときちんとコミュニケーションをとれない人。
臨床医には向いていないですね。

現在、日本では高リスクで訴訟沙汰が絶えない産科医、
それこそ24時間体制で対応しなけらばならない小児科医は、
その絶対数が不足しているそうですね。
数が足りない為に、地域でお産ができなかったり、
高リスク出産に十分対応できずに医療事故が発生したり、
救急患者がたらい回しにされたり、
激務の小児科医が過労死したりと問題が多いらしい。
そういう医療ニーズを考えたら、今後は特に
「我こそは産科医に、小児科医に」という人こそ、
医師を目指して欲しい、或いは医師を目指すなら
産科医療や小児科医療にもっと目を向けて欲しいです。
それを第一義に考えたら、医者の家庭以外の子供がどんどん
医学部にチャレンジできる学習環境が整って欲しい。

(名医の誉れ高い鎌田實医師も父親はタクシー運転手で、
苦学して医者になられたそうですね)
医療行政も、小児科治療の保険点数の改善などを実施して、
日本の医学界の歪みを是正するような方向性を示して欲しいです。

蛇足ながら、地方で特にその傾向が強いと思うのですが、
学業成績が良いから医者に、という図式にも私は疑問を感じます。
優秀な頭脳を生かす場は他にも幾らでもあるのではないか?
(地方だから選択肢が少ないのかもしれません)
以前(これは地方ではなかったですが)、
数学オリンピックで金メダルを獲得した高校生が、
将来、世界的数学者を嘱望されたにも関わらず、
結局医学部に進学し、数学者らがその才能を惜しんだ、
という例もありました。

能力は多様で、それを生かす道もけっしてひとつではなく、
若者達の前途は大きく開かれているのだということを、
大人は常に忘れてはいけないのだと思います。
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