スクール・ギャラリートークでは、ボランティアはあくまでも児童生徒の作品鑑賞のサポーターとして、彼らが作品を見て感じた思いや考えに耳を傾けることに力を注ぎます。とは言え、西洋美術全般に関する基礎的知識はもちろんのこと、ツアーで案内する作品についても事前に調べて、トークに臨んでいます。
調べる際に特に参考になるのは、美術館が発行している「年報」で、それには作品所蔵年度に担当学芸員による調査結果がまとめられています。しかしページ数にして2~3ページなので、それで完璧というわけには行きません。やはり、それを基本にボランティアが自分で情報を集め、肉付けして行くことになります。どうしてもわからない場合は、教育普及室の担当者を通じて担当学芸員に質問も可能なのですが、立場上そう気易く尋ねることはできません。
さて、昨日ですが、先日こちらでも取り上げた、17世紀オランダの画家エドワールト・コリール作のヴァニタス画《ヴァニタス~髑髏と書物のある静物》の中で、上述の年報記事でも言及がなく、かねてより不明であったモチーフについて、私なりに調べてみました。昨今のネットは便利ですね。世界中でマニアックな事柄についてまとめて、ネット上で公開して下さっている方がいます。おかげで、自宅にいながらにして世界中の資料に目を通し、調べることができました。今度ばかりはネット社会に感謝&感謝です。
今回調べたのは、拡大写真の、ろうそく立ての手前にある細い筒状の容器に紐で繋がれた手前の黒い円筒形の物体と、その背後にある、筒状の容れ物にびっしりと詰め込まれた金属様(よう)の物。これらが何なのかについて、年報記事では一切言及されていないので、最初日本語で書かれた文献資料をいろいろと調べてみたのですが、答えとなるような記述は見つかりませんでした。ただ、ひとつのヒントとして、昨年、国立新美術館で開催された静物画の展覧会カタログに掲載されている、オランダの画家ピーテル・クラースゾーンの静物画《ヴァニタス》に類似した物体があったこと。しかも文献資料によれば、コリールは初期にこのクラースゾーンに影響を受けたとあります。以上のことから、下記の手順でアプローチして行きました。
1.ネット上で公開されているエドワールト・コリールの作品を検索し、片っ端から調べてみる
→西美にある作品と同様のモチーフを描いた作品はなかった。
2.ネット上で公開されているピーテル・クラースゾーンの作品を検索し、片っ端から調べてみる
→西美にある作品と同様のモチーフを描いた作品が以下の通り見つかった。
◆ピーテル・クラースゾーン作品1
◆ピーテル・クラースゾーン作品2
→該当するモチーフと常に一緒に「はねペン」が描かれている。キャプション(作品解説)でも、「筆記用具」と記されている。
3.17世紀以前の筆記用具について検索する
→17世紀頃の筆記用具の写真が見つかった。
◆筆記用具の写真
砂時計の傍らにあるこしょう入れのような容器は、インクの滲みを防ぐ為に、字を書いた直後に降りかけるイカの骨?(甲?~みがき粉や鳥のえさにも用いられるようである)の粉を入れる容器らしい。今の時代にこのような筆記用具があるのだろうか?時代によって物の用途や形が変わるという点が実に興味深い。
4.該当する筆記用具が描き込まれた作品及び、その製作風景が描かれた作品を検索する
→主にオランダと近似の文化圏?であるドイツのサイトで、多数の作品が見つかった。
◆図版1
◆図版2
◆図版3
◆図版4
また、以下のようなイラストも見つかった。ペン先とはねの製品広告のようである。
◆図版5
以上の図版の数々から、西美所蔵のエドワールト・コリール作のヴァニタス画に描かれたモチーフで正体不明だった物体は、当時の筆記用具(a writing quill)~インク壺(an inkwell or an inkpot (with an inkhorn?))とペンケース(a penner)~であったと推察される。
【当ブログ内関連記事】
◆映画レビュー『椿山課長の7日間』
◆講演会聴講記録『フェルメールとオランダ風俗画』
◆嬉しかったこと
調べる際に特に参考になるのは、美術館が発行している「年報」で、それには作品所蔵年度に担当学芸員による調査結果がまとめられています。しかしページ数にして2~3ページなので、それで完璧というわけには行きません。やはり、それを基本にボランティアが自分で情報を集め、肉付けして行くことになります。どうしてもわからない場合は、教育普及室の担当者を通じて担当学芸員に質問も可能なのですが、立場上そう気易く尋ねることはできません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/9f/f0f0906f30650c71dd3df08977e14441.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/3c/2c3e24b43f031c0f7c4827de220ef23a.jpg)
1.ネット上で公開されているエドワールト・コリールの作品を検索し、片っ端から調べてみる
→西美にある作品と同様のモチーフを描いた作品はなかった。
2.ネット上で公開されているピーテル・クラースゾーンの作品を検索し、片っ端から調べてみる
→西美にある作品と同様のモチーフを描いた作品が以下の通り見つかった。
◆ピーテル・クラースゾーン作品1
◆ピーテル・クラースゾーン作品2
→該当するモチーフと常に一緒に「はねペン」が描かれている。キャプション(作品解説)でも、「筆記用具」と記されている。
3.17世紀以前の筆記用具について検索する
→17世紀頃の筆記用具の写真が見つかった。
◆筆記用具の写真
砂時計の傍らにあるこしょう入れのような容器は、インクの滲みを防ぐ為に、字を書いた直後に降りかけるイカの骨?(甲?~みがき粉や鳥のえさにも用いられるようである)の粉を入れる容器らしい。今の時代にこのような筆記用具があるのだろうか?時代によって物の用途や形が変わるという点が実に興味深い。
4.該当する筆記用具が描き込まれた作品及び、その製作風景が描かれた作品を検索する
→主にオランダと近似の文化圏?であるドイツのサイトで、多数の作品が見つかった。
◆図版1
◆図版2
◆図版3
◆図版4
また、以下のようなイラストも見つかった。ペン先とはねの製品広告のようである。
◆図版5
以上の図版の数々から、西美所蔵のエドワールト・コリール作のヴァニタス画に描かれたモチーフで正体不明だった物体は、当時の筆記用具(a writing quill)~インク壺(an inkwell or an inkpot (with an inkhorn?))とペンケース(a penner)~であったと推察される。
【当ブログ内関連記事】
◆映画レビュー『椿山課長の7日間』
◆講演会聴講記録『フェルメールとオランダ風俗画』
◆嬉しかったこと