昨日はレディースデイと言うことで映画を見て来た。ちょうど県立図書館から借りた本の返却日でもあったので、映画の前に図書館(分館)に寄ってからランチを食べた後、映画を見た。
本作はフランス近代文学の文豪フローベール作『ボヴァリー夫人』に想を得た、英国人絵本作家のコミック?が原作らしい。
舞台はフランス北西部の自然豊かなノルマンディー地方で、そこに英国ロンドンから越して来た一組の夫婦を巡る顛末を、フランス人映画監督(アンヌ・フォンテーヌ)が仏英文化の違いから来る齟齬やおかしみを巧みに描きつつ、大人向けのちょっとエロチックなコメディに仕立て上げた、と言った趣(だから、良い子は見てはいけません)。
原題は"GEMMA BOVERY"で、女性ヒロインの名前だ。
とにかく、映画の語り手であり、隣人の英国婦人の執拗な観察者(ストーカー?・笑)である、地元パン屋の主人マルタン(ファブリス・ルキーニ)の妄想ぶりが笑える。彼は地元ノルマンディーの出身ながら、十年前まではパリの出版社に勤務していた人物だ。父親の死去に伴い家族で地元に戻り、父親のパン屋を引き継いだ次第。
退屈な田舎暮らしに思いがけない刺激を与えてくれるに違いない、隣人の若い人妻ジェマ(ジェマ・アータートン)の登場。年の離れた夫との穏やかな田舎暮らしに、はちきれんばかりの若い肉体を持て余しているかのようにも見えるその姿は、初老のマルタンには眩しく映る。
さらに地元ノルマンディーを舞台に繰り広げられた物語『ボヴァリー夫人』を愛読する彼からすれば、同じボヴァリー姓を名乗る目の前の女性は、小説のヒロインに重なって見えて仕方がないのだ。そして、彼の期待に違わず、次第に若妻ジェマは生来の奔放さを発揮し始める。斯くて彼女をヒロインに、彼の妄想はどんどん膨らんで行くのであった
しかし、まあ、米国人は華の都パリ、英国人はノルマンディー(そもそも、この地名自体、北方人=ケルト人の土地と言う意味があるらしく、古来よりグレート・ブリテン島とは縁が深いのだ)のような地方と言う違いこそあれ、彼らのフランスへの憧れが並大抵のものでないことは分かった(一部日本人も人のことは言えないけれど…)。それを十分分かった上でのフランス人監督の演出は、時にコミカルで、時にシニカルだ。
物語の意外な展開には笑えない部分もあるが、それもドライにサラッと流して、あくまでもコメディで幕引きを図るのがブラックで、いかにも英国人作家が書いた物語らしいと言えばらしい。とにかく見ている間は終始、マルタンの、妻も呆れるほどの妄執狂ぶりにクスクス笑いがこみ上げてくる。人生の酸いも甘いも知る大人だからこそ楽しめるコメディだと思う。
さて、ランチは最近お気に入りのイタリアン、ガリレオさんで、パスタ・ランチ。まずはグリーン・サラダ。葉野菜の盛り合わせに、定番のバルサミコ酢とオリーブオイルとモッツァレラ・チーズの風味が効いています。
今回は3種のパスタの中から、Spaghetti alle Vongole in Biancoをチョイス。これはもうニンニクの香ばしい風味と、ボンゴレ(あさり)から滲み出る旨味が絶妙で、プクッとしたボンゴレの身の食感も適度に歯ごたえがあり、本場イタリアのボンゴレ・スパゲティにも勝るとも劣らない味でした(作っているのは日本人シェフ)。
因みに私が家で作る時は、あさりはレンジで酒蒸しにして、最後にパスタ・ペペロンチーノにササッと混ぜ合わせます。今回のように唐辛子がなくても、十分旨味があっておいしいんですけれどね。
以前、ローマに1週間滞在した時に、ホテルの人に教えて貰ったトラットリアに3日間通いつめて、食べ続けたのが、このSpaghetti alle Vongole in Biancoでした。それぐらい大好きなパスタ。まあ、地元の人からすればメインの前の一皿なんでしょうけれど、日本人はサラダとパスタでお腹いっぱいになってしまう?!
食後のドルチェは映画鑑賞サービスで付いて来る物で、イチゴ・ソースがけチョコレート・ムースMousse di Cioccorato?のマスカルポーネ・チーズ添え。
そう言えば、マスカルポーネ・チーズは栄養価が高いらしく、このチーズを使ったティラミスと言うドルチェの名前には、私を元気にさせる、と言う意味が含まれているのだとか。
以前も食べた物だけれど、小ぶりのグラス入りになって、以前よりボリュームダウン。ちょっと残念だけれど、おいしいことには変わりない。
これにソフト・ドリンクがついて、しめて1,300円也。普段は専ら質素倹約なお昼ご飯の私にとって、外食ランチは週イチの贅沢です。
帰り際、レジで思わず「今日もおいしかったです」と言ったら、「またのお越しをお待ちしています」と返されたのですが、私が利用するのはランチ・オンリーだし、地元に友達が少ない故、新たなお客をどんどん連れて来るわけでもないので、お店にとってはけっして有難い客ではないんですよね、たぶん。でも、グルメ不毛の地で数少ないパスタのおいしい店なので、また利用させて下さいな