折に触れて、今年の初夏にがんで逝ったSさんのことを思い出す。8年もの不妊治療を経て授かった一粒種の息子さんを残しての旅立ちは、さぞかし心残りだったと思う。常に笑みを絶やさず、物腰が柔らかく、彼女が、例えば怒りの感情を露わにした姿など見たことがない。本当にいつも周囲に穏やかな空気を湛えた、たおやかな女性だった。それだけに、残されたご家族の悲しみも深いものだろう。わずか6年の付き合いだった私でさえ、彼女を失った喪失感が、彼女の思い出と共に蘇っては、私を気落ちさせるのだから(そんなことを言っていてはダメなんだけれど…)。
今朝のNHKのニュースで、元がん患者の女性が考案した「希望の帽子~Wishing Cap」についてのレポートを見た。去る9月29日~10月1日に東京ビッグサイトで開催された「第36回国際福祉機器展」にも出展されたらしい。
昔から「髪は女の命」と言われて来たように、髪の毛は女性にとって欠くことのできない、大事な身体の一部である。髪の毛は女性の顔の輪郭を縁取り、容貌の印象を大きく左右する。男性以上に多彩な女性の髪形のバリエーションが、そのことを如実に物語っている。だからこそ、治療に伴う副作用による脱毛は、がん患者の女性にとって、さぞかし辛いことだろう。
おしゃれなSさんが、息子達の卒業式の時にかつらを装着していたことも、後日、電話でお話した時に知ったことである。その時は、あまりの衝撃に私は返す言葉がなかった。そして通夜の席で、ご主人が「一時は治療で髪の毛がなくなったんだけれども、最後はかなり生えて来て良かった…」と仰っていたことを思い出す。
そのSさんと同様の体験をされ、幸いにも生還された東京都の伊佐美佐さんが、自らの体験を踏まえて開発したのが、「希望の帽子~Wishing Cap」なのである。握力の弱った患者の為に帽子とつけ毛をスナップで着脱しやすくしたり、素材は伸縮性のあるジャージーを使用し、脱げにくいようにサイズ調整ができるゴムも付けたり、頭部が蒸れないようにメッシュ仕立てにしたりするなど、経験者ならではの工夫が随所に施されている。
レポートでは開発に着手してから6年、販売を始めて4年で、今では600人の利用者がいると伝えていた(←数値は聞き間違いがあるかもしれません。悪しからず)。自らががんと知って一時は死を覚悟したという伊佐さんが、退院後、「希望の帽子」の開発・販売を通して、それまで知り得なかった人と出会い、生き甲斐を見いだしている。今後は、販売後に改めてその需要の多さを知ったと言う、子供用の帽子の開発にも力を注ぎたいと語る伊佐さん。「必要は発明の母」と言うが、体験者ならではの発想から、その仕事はさらに広がりを見せようとしている。人間の心の強さとしなやかさを改めて感じる話だ。素直に「素晴らしいこと」だと思う。伊佐さんの明るく前向きな生き様に、普段「人間、死ぬ時には死ぬ。人生、なるようにしかならない」とうそぶいている自分が何だか気恥ずかしくなった。
そう言えば、若くして白血病で逝った女優の夏目雅子さんの遺族も、がん患者の為の「かつらレンタル」事業を行っていたように記憶している。人々の善意がさまざまな形で社会を照らす一灯となっているのを知ることは、暗いニュースが多い中で、心励まされることだと思う。
◆参考サイト:がん患者のために…(MSN産経ニュースより)
リンクの記事は、時間が経てば削除されることもあるので、以下に問い合わせ先を記しておきます。必要とされる方のお役に立てれば幸いです。
ISAMISAデザイン・スタジオ(電話):042-584-1053
◆ホームページ:Wishing Cap
【追記 09.10.30】
今日、偶然にも東京都の広報番組で、医療用つけ眉毛についての紹介がありました。それを製作しているのはカトリと言う会社で、ヘア関連商品で幾つもの特許を持つ会社のようです。
◆ホームページ:カトリの本物志向のつけまゆげ
【追記 09.11.01】
がん検診 向上しない受診率
過去2年間にがん検診を受けた人はわずか3、4割にとどまり、受診率が殆ど向上していないことが31日、内閣府の世論調査(有効回答:成人1935人)で分かった。国は2012年までに受診率50%以上を目指しているが、、検診を受ける習慣は浸透していないようだ。各がんの受診率は以下の通り。
肺がん:42.4%(前回2007年調査比 +3.2)
胃がん:38.1%(+0.6)
子宮がん:37.2%(▲1.8)
大腸がん:34.6%(+2.2)
乳がん:32.3%(▲0.1)
(以上、記事抜粋はサンケイ・エクスプレス紙より)
今朝のNHKのニュースで、元がん患者の女性が考案した「希望の帽子~Wishing Cap」についてのレポートを見た。去る9月29日~10月1日に東京ビッグサイトで開催された「第36回国際福祉機器展」にも出展されたらしい。
昔から「髪は女の命」と言われて来たように、髪の毛は女性にとって欠くことのできない、大事な身体の一部である。髪の毛は女性の顔の輪郭を縁取り、容貌の印象を大きく左右する。男性以上に多彩な女性の髪形のバリエーションが、そのことを如実に物語っている。だからこそ、治療に伴う副作用による脱毛は、がん患者の女性にとって、さぞかし辛いことだろう。
おしゃれなSさんが、息子達の卒業式の時にかつらを装着していたことも、後日、電話でお話した時に知ったことである。その時は、あまりの衝撃に私は返す言葉がなかった。そして通夜の席で、ご主人が「一時は治療で髪の毛がなくなったんだけれども、最後はかなり生えて来て良かった…」と仰っていたことを思い出す。
そのSさんと同様の体験をされ、幸いにも生還された東京都の伊佐美佐さんが、自らの体験を踏まえて開発したのが、「希望の帽子~Wishing Cap」なのである。握力の弱った患者の為に帽子とつけ毛をスナップで着脱しやすくしたり、素材は伸縮性のあるジャージーを使用し、脱げにくいようにサイズ調整ができるゴムも付けたり、頭部が蒸れないようにメッシュ仕立てにしたりするなど、経験者ならではの工夫が随所に施されている。
レポートでは開発に着手してから6年、販売を始めて4年で、今では600人の利用者がいると伝えていた(←数値は聞き間違いがあるかもしれません。悪しからず)。自らががんと知って一時は死を覚悟したという伊佐さんが、退院後、「希望の帽子」の開発・販売を通して、それまで知り得なかった人と出会い、生き甲斐を見いだしている。今後は、販売後に改めてその需要の多さを知ったと言う、子供用の帽子の開発にも力を注ぎたいと語る伊佐さん。「必要は発明の母」と言うが、体験者ならではの発想から、その仕事はさらに広がりを見せようとしている。人間の心の強さとしなやかさを改めて感じる話だ。素直に「素晴らしいこと」だと思う。伊佐さんの明るく前向きな生き様に、普段「人間、死ぬ時には死ぬ。人生、なるようにしかならない」とうそぶいている自分が何だか気恥ずかしくなった。
そう言えば、若くして白血病で逝った女優の夏目雅子さんの遺族も、がん患者の為の「かつらレンタル」事業を行っていたように記憶している。人々の善意がさまざまな形で社会を照らす一灯となっているのを知ることは、暗いニュースが多い中で、心励まされることだと思う。
◆参考サイト:がん患者のために…(MSN産経ニュースより)
リンクの記事は、時間が経てば削除されることもあるので、以下に問い合わせ先を記しておきます。必要とされる方のお役に立てれば幸いです。
ISAMISAデザイン・スタジオ(電話):042-584-1053
◆ホームページ:Wishing Cap
【追記 09.10.30】
今日、偶然にも東京都の広報番組で、医療用つけ眉毛についての紹介がありました。それを製作しているのはカトリと言う会社で、ヘア関連商品で幾つもの特許を持つ会社のようです。
◆ホームページ:カトリの本物志向のつけまゆげ
【追記 09.11.01】
がん検診 向上しない受診率
過去2年間にがん検診を受けた人はわずか3、4割にとどまり、受診率が殆ど向上していないことが31日、内閣府の世論調査(有効回答:成人1935人)で分かった。国は2012年までに受診率50%以上を目指しているが、、検診を受ける習慣は浸透していないようだ。各がんの受診率は以下の通り。
肺がん:42.4%(前回2007年調査比 +3.2)
胃がん:38.1%(+0.6)
子宮がん:37.2%(▲1.8)
大腸がん:34.6%(+2.2)
乳がん:32.3%(▲0.1)
(以上、記事抜粋はサンケイ・エクスプレス紙より)