タイトルを見ただけで、スルーしないで欲しい。
プログラム表紙。
ある意味、地理的距離以上に
遠く離れたこの国と彼の国。
でも空はひと繋がりなんですよね…
この青く澄み切った空を
彼の国の人々も
日々見上げているに違いない。
新聞評に心動かされて、思わず買った前売り券。
それから少し時間が経過し、当初の好奇心も薄れた頃、
もう公開されたし、そろそろ見に行かなきゃね、
とほんの軽い気持ちで足を運んだら、これがなんと!
今年見た中で最も印象深い作品の1本になった。
感銘を受けた。この作品からさまざまなことを学んだ。
なんかこのお父さん、私の父に似ているんだな~、頑固一徹なところ、
外では強面なのに自宅ではステテコ姿だとか…どうやら同年配だし…
まあ、この世代共通のとも言えなくもないけど…と内心思っていたら、
夫に「きみのお父さんに似ているね」と言われた。やっぱり?!
在日朝鮮人二世の映像作家ヤン・ヨンヒ(梁英姫)女史が、
父親との10年間に渡る対話を記録した私的ドキュメンタリー。
彼女は自らカメラを持ち、撮影取材、インタビュー・構成を
手掛ける、いわゆるワンセルフ・ドキュメントスタイルで、
作品を作り続けている作家のひとりだ。
私的ドキュメンタリーの体裁をとりながら、
本作は普遍的な家族愛や夫婦愛を描いていると同時に、
在日朝鮮人という日本社会におけるマイノリティの問題、
帰国事業により北朝鮮へと渡った多くの”帰国者”の現状等、
社会性の高いテーマをその中に含んでいる。
私はこの作品を通して初めて知る朝鮮問題の事実に驚き、
愛情深い家族や夫婦の在りように心打たれた。
と言っても堅苦しさは微塵もない。軽妙な関西弁トークで、
まるで夫婦漫才、親子漫才を聞いているようなノリである。
新潟港に停泊中の万景峰号。何かと話題に上る船ですが、
この船は「帰国者」の命綱でもある。在日の人々はこの船で、
物資に事欠く彼の国に住む親族へ、山のような荷物を運び、届ける。
作品の中で「親しかできへんで」と言いながら梱包する老母。
自業自得という意見もあるかもしれませんが、同じ「親」としては切ない。
作品の冒頭で流れる在日朝鮮人についての概説に、
目から鱗の落ちる、初めて知る事実が多々あった。
1959年から20数年に渡って続いた、いわゆる帰国事業では、
日本社会での差別や貧困に苦しんだ多くの在日朝鮮人が、
”ソ連の後ろ盾を得て飛躍的に発展する”と信じて
”祖国”へと渡ったこと。
その「帰国者」の多くが南朝鮮の出身者であり、
当時の政治的背景から、足を踏み入れたことさえない北朝鮮を
”祖国”に選んだこと(女史の兄3人も30年前に渡朝)。
朝鮮籍の在日朝鮮人は、海外渡航後日本へ戻る際に
難民パスポートで再入国しなければならないこと…
幼い頃のヤン・ヨンヒさんとお父さん。
この頃の父と娘の間に、「思想信条」の違いから来る対立はない。
どこにでもいるような、仲の良い父娘。
ここで北朝鮮問題をとやかく言うつもりはない。
ここでは映像作品について論じているのであり、
映像表現の分野で、日本社会のマイノリティが、
マイノリティの視点で声を上げること、
思いを表現することの重要性を十分認識しているからだ。
それによって、日本社会の健全性が保たれると信じているから。
そして現在の日本の社会がそれを容認する、
さらに一歩進んで受容するだけの”器”であると信じたい。
政治体制が違えども、信じるものが違えども、
この作品で描かれている家族の在り方は、
私達の中にも見てとれるものだ。
理解しがたい国家の中にも、
血の通った人間が住んでおり、その日々の営みがある。
そのことは心に留めておきたい。
歴史のどこかで掛け違えたボタンのせいで、
互いに憎しみあい、理解しあえない国々、
その国家間の諍いに巻き込まれ、翻弄され続ける人々。
大海の木の葉のように
ちっぽけな存在に過ぎない個々の人間を
誰が責められようか?
皆それぞれに与えられた環境の中で、
必死に生きて来たであろうから。
強いて言うなら、責めを負うべきは、
国の舵取りをするリーダーだろう。
昨日テレビから聞こえて来た言葉が今も耳に残っている。
先の大戦で日系部隊に所属し、多くの戦友を失いつつも
自身は九死に一生を得たハワイ在住日系人のご老人の言葉だ。
「自分のような悲しい思いはもうたくさんです。
戦争を二度と起こさない立派な政治家が日本に現れることを
切に希望致します」
帰り道、多くの人でごった返す渋谷駅前で、
折しもある政治家の立ち会い演説会が開かれようとしていた。
その主役はなかなか到着せず、つなぎに都議会議員らが
代わる代わるマイクを持ち、その政治家の支持を訴えていた。
私が今まさに改札口を抜けようという瞬間、背後で、
「只今、到着しました~」という声がした。
それは安倍晋三氏の到着を告げるアナウンスだった。
『ディア・ピョンヤン』公式サイト
プログラム表紙。
ある意味、地理的距離以上に
遠く離れたこの国と彼の国。
でも空はひと繋がりなんですよね…
この青く澄み切った空を
彼の国の人々も
日々見上げているに違いない。
新聞評に心動かされて、思わず買った前売り券。
それから少し時間が経過し、当初の好奇心も薄れた頃、
もう公開されたし、そろそろ見に行かなきゃね、
とほんの軽い気持ちで足を運んだら、これがなんと!
今年見た中で最も印象深い作品の1本になった。
感銘を受けた。この作品からさまざまなことを学んだ。
なんかこのお父さん、私の父に似ているんだな~、頑固一徹なところ、
外では強面なのに自宅ではステテコ姿だとか…どうやら同年配だし…
まあ、この世代共通のとも言えなくもないけど…と内心思っていたら、
夫に「きみのお父さんに似ているね」と言われた。やっぱり?!
在日朝鮮人二世の映像作家ヤン・ヨンヒ(梁英姫)女史が、
父親との10年間に渡る対話を記録した私的ドキュメンタリー。
彼女は自らカメラを持ち、撮影取材、インタビュー・構成を
手掛ける、いわゆるワンセルフ・ドキュメントスタイルで、
作品を作り続けている作家のひとりだ。
私的ドキュメンタリーの体裁をとりながら、
本作は普遍的な家族愛や夫婦愛を描いていると同時に、
在日朝鮮人という日本社会におけるマイノリティの問題、
帰国事業により北朝鮮へと渡った多くの”帰国者”の現状等、
社会性の高いテーマをその中に含んでいる。
私はこの作品を通して初めて知る朝鮮問題の事実に驚き、
愛情深い家族や夫婦の在りように心打たれた。
と言っても堅苦しさは微塵もない。軽妙な関西弁トークで、
まるで夫婦漫才、親子漫才を聞いているようなノリである。
新潟港に停泊中の万景峰号。何かと話題に上る船ですが、
この船は「帰国者」の命綱でもある。在日の人々はこの船で、
物資に事欠く彼の国に住む親族へ、山のような荷物を運び、届ける。
作品の中で「親しかできへんで」と言いながら梱包する老母。
自業自得という意見もあるかもしれませんが、同じ「親」としては切ない。
作品の冒頭で流れる在日朝鮮人についての概説に、
目から鱗の落ちる、初めて知る事実が多々あった。
1959年から20数年に渡って続いた、いわゆる帰国事業では、
日本社会での差別や貧困に苦しんだ多くの在日朝鮮人が、
”ソ連の後ろ盾を得て飛躍的に発展する”と信じて
”祖国”へと渡ったこと。
その「帰国者」の多くが南朝鮮の出身者であり、
当時の政治的背景から、足を踏み入れたことさえない北朝鮮を
”祖国”に選んだこと(女史の兄3人も30年前に渡朝)。
朝鮮籍の在日朝鮮人は、海外渡航後日本へ戻る際に
難民パスポートで再入国しなければならないこと…
幼い頃のヤン・ヨンヒさんとお父さん。
この頃の父と娘の間に、「思想信条」の違いから来る対立はない。
どこにでもいるような、仲の良い父娘。
ここで北朝鮮問題をとやかく言うつもりはない。
ここでは映像作品について論じているのであり、
映像表現の分野で、日本社会のマイノリティが、
マイノリティの視点で声を上げること、
思いを表現することの重要性を十分認識しているからだ。
それによって、日本社会の健全性が保たれると信じているから。
そして現在の日本の社会がそれを容認する、
さらに一歩進んで受容するだけの”器”であると信じたい。
政治体制が違えども、信じるものが違えども、
この作品で描かれている家族の在り方は、
私達の中にも見てとれるものだ。
理解しがたい国家の中にも、
血の通った人間が住んでおり、その日々の営みがある。
そのことは心に留めておきたい。
歴史のどこかで掛け違えたボタンのせいで、
互いに憎しみあい、理解しあえない国々、
その国家間の諍いに巻き込まれ、翻弄され続ける人々。
大海の木の葉のように
ちっぽけな存在に過ぎない個々の人間を
誰が責められようか?
皆それぞれに与えられた環境の中で、
必死に生きて来たであろうから。
強いて言うなら、責めを負うべきは、
国の舵取りをするリーダーだろう。
昨日テレビから聞こえて来た言葉が今も耳に残っている。
先の大戦で日系部隊に所属し、多くの戦友を失いつつも
自身は九死に一生を得たハワイ在住日系人のご老人の言葉だ。
「自分のような悲しい思いはもうたくさんです。
戦争を二度と起こさない立派な政治家が日本に現れることを
切に希望致します」
帰り道、多くの人でごった返す渋谷駅前で、
折しもある政治家の立ち会い演説会が開かれようとしていた。
その主役はなかなか到着せず、つなぎに都議会議員らが
代わる代わるマイクを持ち、その政治家の支持を訴えていた。
私が今まさに改札口を抜けようという瞬間、背後で、
「只今、到着しました~」という声がした。
それは安倍晋三氏の到着を告げるアナウンスだった。
『ディア・ピョンヤン』公式サイト