はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

世界と繋がっていることを実感

2014年01月01日 | 日々のよしなしごと
出張中の夫と電話で話をした。夫が今、担当している講座の受講生は様々な国から来ているらしい。ルワンダ、モルディブ、ツバル、ミクロネシア、バルバドス。

ルワンダと言ったら、私は真っ先に映画『ホテル・ルワンダ』で描かれた大虐殺を思い出す。今、来日している研修員は、その惨禍を生き延びた人々なのだ。また、ツバルと言えば、地球温暖化の影響で海面上昇の為に国土の水没が危ぶまれている国である。

私が彼らに会うことはないが、夫を通じて、彼らと繋がっているのを感じる。夫が伝える日本の技術が、彼の国で生かされるよう祈るばかりだ。夫にも「しっかり伝えてね」と頼んだ。

ルワンダはコンゴ、ウガンダ、ブルンジに囲まれた小国

【ルワンダにおける大虐殺を描いた映画『ホテル・ルワンダ』】

国連を動かしている大国とて、一義的には自国の利益のために動いている。人道的見地の優先順位は思いの外低い。利害関係がないと見るや、見て見ぬ振りも辞さない。そして非大国は自国を守るのに必死で、他を顧みる余裕すらない。

1994年のルワンダにおける大量虐殺は、そんな世界がルワンダを見殺しにした結果だ。

映画『ホテル・ルワンダ』は、事実に基づいた物語だ。

世界の非情ぶりが、そして容赦ない虐殺の経過が、ホテル・ミル・コリンの支配人ポール・ルセサバギナの言動を軸につぶさに語られている。

ホテル・ミル・コリン。1泊の宿泊代金が当時のルワンダ国民の年収の半分に相当するほどの高級ホテだ。

そこでフランス人上司の下で支配人として働くポールは、対立する民族フツ族・ツチ族の両方に巧みに取り入って、何とか家族の平穏無事だけでも守ろうと日々必死だ。機転のきく利発さと、時には権力者と堂々と渉り合うしたたかさが何とも頼もしい。ポールの一挙手一投足を目で追いながら、自分だったら、夫なら、どうするのだろうと想像を巡らせた。

危うい民族間の力の均衡が破られた時、ポールや彼の家族、そしてルワンダの無辜の民は、どのような試練に立たされ、いかにしてそれを乗り越えたのか?この映画は、それを目撃する作品である。

そもそもルワンダという国は多民族国家だが、長く民族間の諍いもなく、平和に共存していたらしい。それが18世紀以降王宮の影響力拡大に伴い、民族間で階級格差などが生じたのをきっかけに
民族間の対立が起きたと言うのだ。

それを悪化させたのが、第一次世界大戦後のベルギーによる支配だ。国家としてまとまっていたルワンダを分裂させるべく、民族の容姿の違いをことさら言い立て、差別意識を植え付け、対立感情を煽ったのだ。

同じ所に住み、同じ言葉を喋り、同じ宗教を信じ、人種間結婚もしているフツ・ツチ両民族は、異なる民族集団としては捉えられない、というのが歴史家、民族学者の見解である。

ここにも、かつての帝国主義国家の植民地政策のツケをいまだに支払わされ続けているアフリカの不幸がある。

霧の中、突き進むバン。道路は起伏が激しく、バンは前後左右に大きく揺れる。その感触の一種異様さは画面からも伝わって来る。それが何なのか、あなた自身の目で確認して欲しい。

自分の無知・無関心に、刃のように突き刺さる映画。自分の偽善や浅慮に容赦ない批判が浴びせられるような感覚を覚える。でも目をそむけてはいけないのだと思う。




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