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これも書き損ねていたもの。AOL招待の試写会で見ました。
世界的なベストセラーの映画化作品ですが、
奇想天外なストーリーにビックリ。こんなことアリ?という驚きでした。
ただし描かれているのは、自らの目的の為なら殺人も厭わぬ、
罪悪感の希薄な犯罪者の人生です。
罪の自覚のない犯罪者に、どう罪を贖わせたら良いのか?
彼らには自らの死を以て罪を償うという発想すらない。
現実問題として、被害者、残された被害者の遺族は
どうしたら救われるのか?現時点では法制度も、社会も、誰も、
明快な答えを見出せないでいます。
◆
生まれながらに恐ろしく嗅覚が鋭い主人公。
五感のうち、何れかが障害などでその機能を失った場合に
その欠損を補うべく他の感覚がより鋭敏になるならともかく、
生まれながらにひとつの感覚が突出して鋭敏というのは、
あまり聞いたことがありません(絶対音感くらいかな?)。
しかし、だからこそ、彼は一般の人間より野性的(非文明的)で、
本能が理性に勝ってしまったのか?
それとも教育の欠如によって、彼は衝動を抑える術を
身に付けることができなかった、ということなのか?
或いは、彼を心から慈しむ存在に出会えなかったことが、
彼を残酷なシリアル・キラーにしてしまったのか?
ところで、香りや臭いというものは、本能的に
「これは心地よい」「これは不快」と理解できるものなのか?
命を守る為に、腐敗臭は生まれながらに認識できるものなのかも
しれないけど、それでは花の香りもかぐわしいものとして最初から
認識できるものなのか?(調べれば分かることかもしれないけど)
そして調香という繊細な作業に用いる嗅覚を、
あの悪臭漂う魚市場で産み落とされた主人公が持ち得るのか?
そこのところが疑問ではあります。
産み落とされた瞬間に嗅いだ匂い(臭い)が、
嗅覚の基準値になるような気がして…
だとしたら彼は調香師としては最悪のスタート。
現にチラシの解説には、名香”ミツコ”で知られた仏ゲラン社では、
ある一族が代々調香師を務めているとありました。
私が主宰するBBSのスレッドには、香りの専門家からの興味深い
感想が寄せられました。調香師ではなくアロマテラピーの専門家。
香りには人一倍関心があり、専門的知識もある。
その方も言われたように、その場(映画館)にはあるはずのない
「香り」や「匂い」を強烈に感じる、不思議な映画でしたね。
視覚的に嗅覚を刺激することが可能なのか?
”感じた”ということは、”可能だ”ということなのでしょうね。
冒頭の魚市場の生臭い臭い。皮なめし工場の皮や薬品の臭い。
街やセーヌ川のすえた臭い。その対極の香水店のかぐわしい香り。
地下倉庫の種々の香料が入り交じった香り。
そして主人公を魅了して止まない若い女性の甘い?体臭。
たまに、何とも言えない心地よい香りを放っている若い女性に
出会うことがあります。それは香水とも石鹸の香りとも違う。
加齢臭はその成分も明らかにされて、存在が認知されていますが、
若い女性独特のかぐわしい体臭を生み出している成分とは、
何なのでしょう?(フェロモンの一種でしょうか?)
実際にはあり得ない手法(植物に対しては有効のようですが)で、
主人公が殺人を続けてまで完成させた究極の香水。
いったいどんな香りなのでしょうね?
ともあれ、香水の発達は、”衛生状態”と相関関係がありますね。
当時のパリは世界随一の大都会ながら下水設備も整っておらず、
不衛生極まりなかった。道はぬかるみ、悪臭が漂っていたらしい。
さらに様々な迷信が流布し、また水が貴重であったこともあり、
入浴習慣も殆どない。となればパリ市民の状態は推してしるべし。
香水はその体臭を花の香りで隠す役割を担っていたと言える。
同時代なら、江戸の方がよほど排泄物の処理システムも整い、
清潔な都市だったようです。しかも日本人は風呂好きときてる…
◆
その奇想天外なストーリーは、
かつて『ガープの世界』を見た時の驚きにも似て…
この映画、クライマックスの2つのエピソードには、
とにかく驚かされる。ネタバレしたら興ざめしてしまう肝の部分。
まさに”見てのお楽しみ”です。原作小説を既に読んだ方は、
小説の世界観がどのように映像化されているのかが
気になるところでしょうか。
物語として楽しい作品とは言い難いけど(むしろ怖い?)、
映像美とその視覚効果は素晴らしく、脳が興奮を覚えました。
特に女性の鮮やかな赤毛と深紅の薔薇が印象的でした。