はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

イノセント・ボイス~12歳の戦場

2006年03月02日 | 映画(2005-06年公開)

↑公式サイトより。

2004年のメキシコ映画です。
某サイトの鑑賞満足度で、一時は5点満点が100%
(つまり鑑賞者全員が満点の評価したということ)
という驚異的な数字を出しました。
今もなお90%近い高水準を維持しており、
見る人の心を揺さぶる何かが、この映画にはあるようです。 
公式サイト⇒残念ながら既になくなってしまったようです。
以前のアドレスでは、なぜか企業サイトに繋がってしまう。
 

12歳になると、政府軍に徴兵される男の子達。
それも予告なく突然政府軍がトラックで学校にやって来て、
校庭で名前を読み上げて否応なく連れ去るのだから、
親にとっても子にとっても残酷極まりない仕打ち。

誕生日を素直に喜べない子供の姿が切ない。
大人達が起こした戦争ゆえに、早く大人になることを
余儀なくされる子供達。
いつだったか、少年兵や幼くしてレイプされて子供を
産まされた少女の姿を映像で見たことがあります。
それは、アフリカのウガンダからのレポートでした
(あのルワンダの隣国ですね。ビクトリア湖沿岸に位置し
アミン大統領の独裁政治でも有名になった)。
生まれた国がウガンダだったら、あるいはこの作品の舞台
エル・サルバドルだったら、自分の人生はどうなっていたか。
そんな風に考えると、子供の最低限の幸福(命を守り、子供
時代を奪わない)を保証するのは大人の責任だよな、と思う。

あ~、しかしこんなことを書きながら思い出されるのは、
映画「ホテル・ルワンダ」のワンシーンなのです。
ルワンダにおける大虐殺の映像を世界に流せば、
世界が助けに来てくれると信じる主人公に、
西欧の人間は自嘲ぎみにこう応えるのです。
「『ひどいわね』と言いながら、ステーキを食べるのさ」

この作品はメキシコ映画ですが、
ハリウッドが製作に大きく関わっています。
製作総指揮を執ったのは、『パルプ・フィクション』
『グッドウィル・ハンティング』『キル・ビル』等を
手掛けた大物プロデューサー、ローレンス・ベンダー。
監督兼共同脚本はメキシコ出身の、現在はハリウッドを
拠点に活躍するルイス・マンドーキ。
マンドーキは、この映画製作のために、
15年以上ぶりに故国メキシコでメガホンをとったのだとか。
原作(脚本)の何が、ハリウッド人を動かしたのか?
この作品を見るとよくわかる。

チラシ裏のレビューの中には、コロンビアの偉大な作家
ガルシア・マルケスの言葉が。
「子どもの視点から描かれた戦争の中には、
優しさや愛情も存在します。
それが私たちの胸を強く打つのです。
現在世界で起きているすべての戦争、
軍隊に徴兵されている子どもがいるという現実に
目を向けずにはいられないでしょう」

この作品や『ホテル・ルワンダ』にも共通して
描かれているのは、悲惨な状況下にあってもなお、
人間の中にある輝きです。
ひどい状況を作り出すのは人間だけど、
同時に、どんな状況の中でさえ
生きることの素晴らしさを体現できるのも人間。
意外に戦争とは久しく縁遠い日本で、
人間本来の輝きが失われていたりして・・・
戦争、あるいはそれに近い状況を待望するわけではないけど、
”必死に生きること、生きながらえること”
を実感できない状況は、生きることの充実感から、
人間を遠ざけているのでしょうか?
「誰も好きで生まれて来たんじゃねえ~よ」
なんてバチ当りな言葉、戦時下では言えないよね。

以下はネタバレにつき、見終わった後にでも。
と言ってもたいしたことは書いてないんだけど(^_^;)。
脚本を手がけたオスカー・トレスの実体験に基づく物語の
ようですが、彼が徴兵を逃れられ、命を救われ、
アメリカに渡ることができたのは、
彼自身が少年時代に見たこと、経験したことを、
この作品で描き、世に知らしめるためだったのかな、
などと思いました。
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