はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

"名画で読み解く"シリーズ

2015年02月23日 | 読書記録(本の感想)
 最近、中野京子さんに嵌っていて、彼女の"名画で読み解く"シリーズ(光文社新書)を立て続けに読んでいる。

 きっかけは中欧旅行から帰って来て以来、中欧を起点に600年の長きに渡りヨーロッパ全土で権勢を振るったハプスブルグ家について興味を覚え、その関連の著作を読み始めたからだ。その過程で中野さんの著書『名画で読み解く ハプスブルグ家12の物語』を知り、同シリーズの『ブルボン王朝12の物語』と続いて、現在は『ロマノフ家 12の物語』を読み始めたところだ。

 中野さんが一躍名を馳せたのは、意味深な女性の表情が印象的なジョルジュ・ド・ラ・トゥール作の《いかさま師》(ルーヴル美術館蔵)が装丁に採用されている『怖い絵』シリーズらしいが、私は周回遅れに嵌ったファンと言える。

 中野さんの"名画で読み解く"シリーズは、描かれた絵画を切り口に(しかもカラー図版なのが嬉しい)、複雑多岐に入り組んだ複数の王朝の歴史を時に連係して、軽妙洒脱な文章で紐解いてくれているのが何よりの魅力だ。おそらく語り部として、数多ある史実から取捨選択する能力にも長けているのだろう。そして、テンポ良く言葉が紡ぎ出される彼女の巧みな表現にかかれば、歴史上の人物達があたかも今、リアルタイムに生きているかのように活き活きと目の前で動き出すのだ。たまに軽はずみとも取れる弾けた表現がなきにしもあらずだが、そこはご愛嬌。

 特に、戦争なき覇権で他国の王族と政略結婚を繰り返し、王朝の権威維持の為には濃厚な血族結婚も辞さなかったハプスブルグ家は、フランスのブルボン家とも浅からぬ縁がある。『ハプスブルグ家』と『ブルボン家』の二冊には、両著を行き来しながら読む楽しさもあった。

 また、過去に見たヨーロッパが舞台の歴史映画の数々が、本シリーズを読むことで、「王朝の栄枯盛衰を通して見るヨーロッパ史」と言う1本の筋に繋がったのも嬉しい。

 その意味では『ロマノフ家』は前2著とは些か趣きを異にする印象だ。本の冒頭に折り込まれた家系図を見ても、国外の王室とは英国王室との姻族関係が唯一あるのみで、基本的にロシア国内で自己完結しているのが特徴的だ。さて、どのような12の物語をこれから展開させて行くのか、中野女史の手腕をとくと拝見しよう。

 そして、『ロマノフ家』読了後も、『印象派で近代を読む』『「怖い絵」で人間を読む』『はじめてのルーヴル』(←ルーヴル美術館は既に数回訪れているのだが、中野さんがどのように解説しているのか興味があって購入。一昨年も6時間滞在したが、結局、半分見るのがやっとだった…)の3冊が控えており、私が中野ワールドに嵌る日々は暫く続く…

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