はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

(6)ジャンパー(原題:Jumper)

2008年03月03日 | 映画(2007-08年公開)


 プロアマ共に作品評が芳しくなかった本作。SF大作を謳う割には上映時間が88分と短く、背景説明が不十分な上に、散りばめられた謎は殆ど明らかにされないまま、まるで連続ドラマの「つづく…」のような終わり方の為に、観客は物足りなさを禁じ得ないのが難点でしょうか?
 どうも制作サイドは最初から続編制作を年頭に置いて本作を作ったフシが見られます。最近流行の三部作にでもするつもりでしょうか?原作小説はDV(家庭内暴力)など今日的問題も絡めたSF小説の傑作の誉れ高いのですが、映画は物語のテーマ性よりも映像的面白さやスケール感を狙った作りになっているので、目の肥えた映画ファンには「底が浅い」と思われるかもしれませんね。あまり本作の評価が低いと、次回作の構想は絵に描いた餅になるかもしれません。

 キャスティングはなかなか魅力的なだけに、私自身は次回作を期待したいのですが…『リトルダンサー』のジェイミー・ベル君がいつの間にか一端の青年になっていて、歳月の流れを感じます。私も年を取るわけだ。

映画『ジャンパー』データ(allcinema online)
映画『ジャンパー』公式サイト

 謎めいた存在のジェイミー・ベル君
次回作が作られなければ、彼の存在は謎めいたままで終わってしまいます…


 予告編を見て私が期待したのは(映画を楽しむ本筋からは外れますが)かつて訪ねた場所を大スクリーンで見ること。それが低調な下馬評にも関わらず、私を映画館へと向かわせました。NYのエンパイアーステートビルの展望階を皮切りに、ロンドンのビッグベン、エジプト・ギザのプラミッド群、ローマのコロッセオ、パリのエッフェル塔等、懐かしい映像が続きました。それらと共に呼び覚まされる様々な記憶。

 エンパイアーステートビルでは、訪ねる数週間前に起きた展望階での銃乱射事件の影響で、エレベーター搭乗前に飛行機搭乗時並みのセキュリティ・チェックを受けたのが印象的でした。日本では考えられないことですからね。展望階では映画でも描かれていたような強風に驚きました。もちろん見晴らしは最高!

 通算5度目のロンドンだった2年前の旅行では、最初に訪ね記念写真に納めたのがビッグベンでした。約10年ぶりの再訪、しかも母子だけの旅で内心緊張しきりでした。しかしロンドンは心配したほど変わってはいませんでした。ビッグベンから徒歩でバッキンガム宮殿へ向かうと既に衛兵のパレードは終わっていて、それなら宮殿内の美術館でも見学しようとその入り口を捜して、結局宮殿の外周を一回りしてしまったのが今では笑い話になっています。限られた日程なのに初っ端からこれです。でも、旅行ではこういう失敗が結構楽しかったりする。


左)ビッグベンにて 右)バッキンガム宮殿塀の上の鉄柵…鋭い! 

 エジプトのギザへは、中東駐在時に夫の出張についていった最終日に現地ツアーに参加して行きました。この時も私達が訪ねる2週間前にエジプト考古学博物館駐車場でドイツ人観光客を狙ったテロで多数のドイツ人が死亡したばかりで、観光客が激減というビミョーなタイミングでした。しかも同行していた男性スタッフが、私達の心配をよそに(私達は現地では寄生虫の危険性を考え、絶対に生食はしなかった)初日に現地の韓国料理店で生肉料理を食べたのが原因か、ツアー当日激しい下痢に見舞われ急遽ツアーをキャンセル。

 ツアーバスに乗ると、なんと参加者は私達家族だけでした。マイクロバスには運転手とエジプト人ガイドと私達家族のみ。それだけでも心細いのに、現地の助け合い精神なのか、ギザへ向かう途中、現地の人を次々と相乗りさせる運転手。もし、その中にテロリストが混じっていたらどうするねん?しかし、私達夫婦も夫婦で、2番目に高いカフラー王(クフ王の息子)のピラミッドの内部見学では、結構な勾配で、身をかがめないと歩けないような天井の低い通路を歩かなければならないと言われ、1歳半の息子をガイド(女性)に預けてしまいました。貴重な経験だったけれど、息子の安全を考えたら無謀極まりない行為だったと、今でも思い出すたびに夫と反省しています。それにしても映画で主人公がスフィンクスの頭部に乗ったのはCG合成なのかな?ダグ・リーマン監督はあくまでも本物に拘ったと記事にはあったけれど、世界的に貴重な遺跡ではあり得ないロケですよね。

 イタリアへは3回行っていますが、行く度にコロッセオを訪ねました。最初は新婚旅行で。その時は団体ツアーで慌ただしい見学だった為あまり印象に残っていませんが、2回目以降は息子も加わって、時間をかけて歩けるところは全部歩いたのが嬉しかったですね。映画では、通常観光客は立ち入れない場所も映し出され羨ましかった。何でも映画ロケでそこが使われたのは史上初だそうです。イタリアも思い切ったことをしたものです。

 フランスへも何度か行っていますがエッフェル塔は3度目の旅行で最上層の展望室まで上りました。私達は国内外の旅先でこうした街のランドマークに上っては、街を俯瞰するのが好きです。真夏に行ったのですが、エレベーターの中でスペイン人の団体ツアーと乗り合わせて、その内の一人からスペイン語で話しかけられてドキマギしたのを覚えています。当時は痩せていたので、背格好や顔立ちからスペイン人に間違えられても不思議ではなかったのかもしれません。と言っても台湾に言ったら台湾人に、タイにいったらタイ人に間違われる私は一体何なのでしょう?現地人に見られるのは、ある意味安全なのかもしれませんが…(^_^;)。
 
 原作者のスティーブン・ジェイ・グールドは現代生物進化学の大家としても知られ、昨今人間社会を悩ます”科学と宗教を巡る問題”に、”対立論”とは異なった視点で論を展開した以下のような著書を残しています。解説文を読む限り、面白そうですね。 

スティーブン・J・グールド『神と科学は共存できるか』

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