英英仏西、演技賞は欧州勢が独占
WOWOWで授賞式を見ました。振り返れば昨年の第79回は、マーティン・スコセッシ監督の長年の映画界への貢献を称える論功賞的意味合いが強かった。始まる前から「『ディパーテッド』で【作品賞】は決まり!」というような出来レースの様相を呈していて、『ディパーテッド』自体にあまり魅力を感じなかった私には些か納得の行かないものでした。その意味で今年は予想外の展開(下馬評を覆しての受賞等…)もあって、昨年より面白かったですね。コーエン兄弟の『ノーカントリー(原題:NO COUNTRY FOR OLD MEN)』は日本未公開(3月15日日本公開予定)ですが、監督のネームバリュー、魅力的なキャスティング(トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム他)、公開されている断片映像等から、期待大の作品です。まあ犯罪サスペンス(バイオレンス・ムービー?)というのが少々気になりますが…
例年そうですが、俎上に載せられている作品の大半は日本未公開です。よって日本の視聴者はどの作品が受賞するのかの予想もままなりません。まさに”蚊帳の外”。授賞式会場はもちろん、番組司会者やゲストらの盛り上がりから、”置いてけぼり”を喰らったのような寂しさを感じつつの視聴ではないでしょうか?それともそんなことはとっくに納得づくで”品定め”に余念がないのかな?
個人的には作品賞にノミネートされた全作品に興味津々です。特に『JUNO/ジュノ』は見逃せませんね。『ハード・キャンディ』での小悪魔ぶりが印象的だったエレン・ペイジ(やっぱり見れば見るほどカナダの大竹しのぶ!)が頭角を現し早くも主演女優賞にノミネートされるとは予想だにしなかったこと。今後も目が離せません。『マイ・レフトフット』(これも熱演だったなあ。役柄になり切っていた)以来の主演男優賞受賞であるダニエル・デイ=ルイスの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も楽しみです。ゴシップ記事には「寡作の人(過去10年間で出演作は4本のみ)で大工仕事は玄人はだし」と書かれていましたが、もっともっと活躍して欲しい俳優の一人ですね。
マリオン・コティヤールの主演女優賞受賞は嬉しい誤算?でした。彼女自身予想していなかったのか、受賞スピーチで喜びを爆発させていましたね。母国語でない英語でのスピーチだったからか、かわいらしい表現だった(「LAにはやっぱり天使がいるんですね!」)のが印象的。彼女に関しては『エディット・ピアフ』に先だって、『南仏プロヴァンスの贈り物』で、特殊メイクなしの本来の伸び伸びとした表情と肢体を見ていたので、あえて醜くしたピアフ役にはビックリでした。やっぱり美女が見てくれを敢えて悪くしての熱演には、アカデミー会員も弱いのかしらね。
あ、そうそう、助演男優賞のハビエル・バルデムは作品中の”ダサイ”髪型(長髪の七三分け)で撮影中はずっと憂鬱だったらしいですが、実際の彼はスペインの伊達男。授賞式では格好良く決めていましたね。彼を初めて認めたのは『海を飛ぶ夢』。これからはこれまで以上に引く手あまたなんだろうなあ…。クリント・イーストウッドもそうでしたが、母親と一緒に授賞式に出席するスタイル、息子を持つ母親からしたら胸キュンものですね。聴衆に向けての英語のスピーチの後、母親の為に早口でまくしたてたスペイン語のメッセージ。あれは素敵でした。あんな親孝行な息子を持ったら、母親冥利に尽きるでしょう。
感激の面持ちのマルケタとグレン
他に【歌曲賞】に『ONCE ダブリンの街角で』の“Falling Slowly”が選ばれたのが嬉しかったですね。主演二人(グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロバ)のステージ・パフォーマンスは清々しさに溢れ、マルケタの無名ミュージシャンへ向けた励ましのスピーチも感動的でした。
80周年と言うことで、過去の受賞作品、受賞者の映像もふんだんに披露され、永久保存版と言っても良い内容でした。追想コーナーでヒラリー・スワンクが「これからという人も」と表現したのはヒース・レジャーを指してのことでしょう。最後に『ブロークバック・マウンテン』のイニス役の彼が映し出された時には胸が詰まりました。
今回、日本人では俳優の浅野忠信氏や特殊メークアップ・アーティストの辻一弘氏(2年連続)のノミネートが話題になりましたが、残念ながらお二人とも選に洩れました。しかし、科学技術部門(本授賞式に先立って2月9日に、ジェシカ・アルバの司会で授賞式が行われた)で、弱冠28歳のRyo Sakaguchi氏(Digital Domain社)が、『デイ・アフター・トゥモロー』等の津波シーンで活用された流体シミュレーション・システム(the development of the fluid simulation system)の開発により受賞を果たしています。拍手!
主な賞のノミネートと受賞は以下の通りですね。★が受賞者。赤字は既に見た作品。
【作品賞】
「つぐない」“Atonement” (Focus Features)
「JUNO/ジュノ」“Juno” (Fox Searchlight)
「フィクサー」“Michael Clayton” (Warner Bros.)
★「ノーカントリー」“No Country for Old Men” (Miramax and Paramount Vantage)
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」“There Will Be Blood”
(Paramount Vantage and Miramax)
【監督賞】
ジェーソン・ライトマン「JUNO/ジュノ」
トニー・ギルロイ「フィクサー」
★ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン「ノーカントリー」
ポール・トーマス・アンダーソン」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ジュリアン・シュナーベル「潜水服は蝶の夢を見る」
【主演男優賞】
ジョージ・クルーニー「フィクサー」
★ダニエル・デイ=ルイス「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
ジョニー・デップ「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」
トミー・リー・ジョーンズ「告発のとき」
ヴィゴ・モーテンセン「イースタン・プロミセズ(原題)」
【主演女優賞】
ケイト・ブランシェット「エリザベス:ゴールデン・エイジ」
ジュリー・クリスティ「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」
★マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」
ローラ・リニー「ザ・サヴェッジズ(原題)」
エレン・ペイジ「JUNO/ジュノ」
【助演男優賞】
ケイシー・アフレック「ジェシー・ジェームズの暗殺」
★ハビエル・バルデム「ノーカントリー」
フィリップ・シーモア・ホフマン 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」
ハル・ホルブルック「イントゥ・ザ・ワイルド(原題)」
トム・ウィルキンソン「フィクサー」
【助演女優賞】
ケイト・ブランシェット「アイム・ノット・ゼア」
ルビー・ディー「アメリカン・ギャングスター」
シアーシャ・ローナン「つぐない」
エイミー・ライアン「ゴーン・ベイビー・ゴーン(原題)」
★ティルダ・スウィントン「フィクサー」
アカデミー賞と言えば、やはり受賞者のスピーチが楽しみですね。
◆主要部門の受賞者スピーチ(一部抜粋)&現地レポートはこちら(WOWOWより)
英語版ではスピーチ全文が、受賞者名をクリックすると別ウィンドウで見られます。
◆OSCAR.COM
ノミネート作品の解説や俳優陣のプロフィール紹介は参考になります。
◆アカデミー賞受賞結果(WOWOW)
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WOWOWで授賞式を見ました。振り返れば昨年の第79回は、マーティン・スコセッシ監督の長年の映画界への貢献を称える論功賞的意味合いが強かった。始まる前から「『ディパーテッド』で【作品賞】は決まり!」というような出来レースの様相を呈していて、『ディパーテッド』自体にあまり魅力を感じなかった私には些か納得の行かないものでした。その意味で今年は予想外の展開(下馬評を覆しての受賞等…)もあって、昨年より面白かったですね。コーエン兄弟の『ノーカントリー(原題:NO COUNTRY FOR OLD MEN)』は日本未公開(3月15日日本公開予定)ですが、監督のネームバリュー、魅力的なキャスティング(トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム他)、公開されている断片映像等から、期待大の作品です。まあ犯罪サスペンス(バイオレンス・ムービー?)というのが少々気になりますが…
例年そうですが、俎上に載せられている作品の大半は日本未公開です。よって日本の視聴者はどの作品が受賞するのかの予想もままなりません。まさに”蚊帳の外”。授賞式会場はもちろん、番組司会者やゲストらの盛り上がりから、”置いてけぼり”を喰らったのような寂しさを感じつつの視聴ではないでしょうか?それともそんなことはとっくに納得づくで”品定め”に余念がないのかな?
個人的には作品賞にノミネートされた全作品に興味津々です。特に『JUNO/ジュノ』は見逃せませんね。『ハード・キャンディ』での小悪魔ぶりが印象的だったエレン・ペイジ(やっぱり見れば見るほどカナダの大竹しのぶ!)が頭角を現し早くも主演女優賞にノミネートされるとは予想だにしなかったこと。今後も目が離せません。『マイ・レフトフット』(これも熱演だったなあ。役柄になり切っていた)以来の主演男優賞受賞であるダニエル・デイ=ルイスの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も楽しみです。ゴシップ記事には「寡作の人(過去10年間で出演作は4本のみ)で大工仕事は玄人はだし」と書かれていましたが、もっともっと活躍して欲しい俳優の一人ですね。
マリオン・コティヤールの主演女優賞受賞は嬉しい誤算?でした。彼女自身予想していなかったのか、受賞スピーチで喜びを爆発させていましたね。母国語でない英語でのスピーチだったからか、かわいらしい表現だった(「LAにはやっぱり天使がいるんですね!」)のが印象的。彼女に関しては『エディット・ピアフ』に先だって、『南仏プロヴァンスの贈り物』で、特殊メイクなしの本来の伸び伸びとした表情と肢体を見ていたので、あえて醜くしたピアフ役にはビックリでした。やっぱり美女が見てくれを敢えて悪くしての熱演には、アカデミー会員も弱いのかしらね。
あ、そうそう、助演男優賞のハビエル・バルデムは作品中の”ダサイ”髪型(長髪の七三分け)で撮影中はずっと憂鬱だったらしいですが、実際の彼はスペインの伊達男。授賞式では格好良く決めていましたね。彼を初めて認めたのは『海を飛ぶ夢』。これからはこれまで以上に引く手あまたなんだろうなあ…。クリント・イーストウッドもそうでしたが、母親と一緒に授賞式に出席するスタイル、息子を持つ母親からしたら胸キュンものですね。聴衆に向けての英語のスピーチの後、母親の為に早口でまくしたてたスペイン語のメッセージ。あれは素敵でした。あんな親孝行な息子を持ったら、母親冥利に尽きるでしょう。
感激の面持ちのマルケタとグレン
他に【歌曲賞】に『ONCE ダブリンの街角で』の“Falling Slowly”が選ばれたのが嬉しかったですね。主演二人(グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロバ)のステージ・パフォーマンスは清々しさに溢れ、マルケタの無名ミュージシャンへ向けた励ましのスピーチも感動的でした。
80周年と言うことで、過去の受賞作品、受賞者の映像もふんだんに披露され、永久保存版と言っても良い内容でした。追想コーナーでヒラリー・スワンクが「これからという人も」と表現したのはヒース・レジャーを指してのことでしょう。最後に『ブロークバック・マウンテン』のイニス役の彼が映し出された時には胸が詰まりました。
今回、日本人では俳優の浅野忠信氏や特殊メークアップ・アーティストの辻一弘氏(2年連続)のノミネートが話題になりましたが、残念ながらお二人とも選に洩れました。しかし、科学技術部門(本授賞式に先立って2月9日に、ジェシカ・アルバの司会で授賞式が行われた)で、弱冠28歳のRyo Sakaguchi氏(Digital Domain社)が、『デイ・アフター・トゥモロー』等の津波シーンで活用された流体シミュレーション・システム(the development of the fluid simulation system)の開発により受賞を果たしています。拍手!
主な賞のノミネートと受賞は以下の通りですね。★が受賞者。赤字は既に見た作品。
【作品賞】
「つぐない」“Atonement” (Focus Features)
「JUNO/ジュノ」“Juno” (Fox Searchlight)
「フィクサー」“Michael Clayton” (Warner Bros.)
★「ノーカントリー」“No Country for Old Men” (Miramax and Paramount Vantage)
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」“There Will Be Blood”
(Paramount Vantage and Miramax)
【監督賞】
ジェーソン・ライトマン「JUNO/ジュノ」
トニー・ギルロイ「フィクサー」
★ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン「ノーカントリー」
ポール・トーマス・アンダーソン」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ジュリアン・シュナーベル「潜水服は蝶の夢を見る」
【主演男優賞】
ジョージ・クルーニー「フィクサー」
★ダニエル・デイ=ルイス「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
ジョニー・デップ「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」
トミー・リー・ジョーンズ「告発のとき」
ヴィゴ・モーテンセン「イースタン・プロミセズ(原題)」
【主演女優賞】
ケイト・ブランシェット「エリザベス:ゴールデン・エイジ」
ジュリー・クリスティ「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」
★マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」
ローラ・リニー「ザ・サヴェッジズ(原題)」
エレン・ペイジ「JUNO/ジュノ」
【助演男優賞】
ケイシー・アフレック「ジェシー・ジェームズの暗殺」
★ハビエル・バルデム「ノーカントリー」
フィリップ・シーモア・ホフマン 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」
ハル・ホルブルック「イントゥ・ザ・ワイルド(原題)」
トム・ウィルキンソン「フィクサー」
【助演女優賞】
ケイト・ブランシェット「アイム・ノット・ゼア」
ルビー・ディー「アメリカン・ギャングスター」
シアーシャ・ローナン「つぐない」
エイミー・ライアン「ゴーン・ベイビー・ゴーン(原題)」
★ティルダ・スウィントン「フィクサー」
アカデミー賞と言えば、やはり受賞者のスピーチが楽しみですね。
◆主要部門の受賞者スピーチ(一部抜粋)&現地レポートはこちら(WOWOWより)
英語版ではスピーチ全文が、受賞者名をクリックすると別ウィンドウで見られます。
◆OSCAR.COM
ノミネート作品の解説や俳優陣のプロフィール紹介は参考になります。
◆アカデミー賞受賞結果(WOWOW)
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