はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

7月24日通りのクリスマス

2006年11月14日 | 映画(2005-06年公開)


見終わった後、これは女の子のためのおとぎ話だと思った。
こうだったらいいなあ、という願望を叶えてくれるファンタジー。
私が現実的過ぎるのだろうか?年齢的なものなのか?
物語に今ひとつ現実感が乏しいのだ。でも後味は悪くない。
私があと20歳若かったら、たぶん素直に感動した…のかな?!
(そんなことを思った翌日、現代劇で女形を演じる俳優
篠井(ささい)英介が昼のトーク番組に出演し、
「演劇とは、俳優が演じる虚構の世界を、
観客がイマジネーションで楽しむこと」
というようなことを語っていた。
女を演じる篠井英介に「あれ、男じゃない」と言ったら、
その時点で彼の芝居は成立しないように。
舞台演劇と映画を同列には語れないのかもしれないけど、
イマジネーションねえ…と改めて、作品世界への没入について
考えたのだった。)


『電車男』の監督&脚本コンビで、女性版『電車男』を
目論んだのだろうけど、そういう二匹目のどじょう狙いは、
観客を甘く見てはいないか?これもちょっと気になるところ
(原作小説があるのは重々承知のことだけど)。

主人公のOL本田サユリは、地味で風采のあがらない女性。
自分が住む長崎の街を、少女時代に夢中になった、
いがらしゆみこ原作まんがの舞台であるリスボンに重ね合わせ、
想像の世界でひとり遊んでいる。
20代後半にもなって、そんな女性がいるのだろうか?
だとすれば、幼いなあ。
そんな彼女の前に現れた大学時代の憧れの君、奥田聡史先輩。
今や東京で照明デザイナーとして名を馳せ、凱旋帰郷?
学生時代のあの胸の高鳴りが蘇るサユリ。
さて、この恋の行方は?

サユリを演じる中谷美紀は『嫌われ松子の一生』の残像が
いまだに私の頭にあって、今回のファンタジー仕立ての演出が
それに重なってしまう。
さらに夫が「中谷美紀って美人なのか?」と言い出すものだから
”中谷美紀=美人女優”という私の中での方程式が狂い出した。
中谷美紀の女優としてのポジションって、
今どうなっているのだろう?演技派女優?

奥田聡史役を演じる大沢たかお。だいぶ演技も上達しましたね。
モデルから俳優に転身して間もない頃の彼の演技は、
正直言って目も当てられなかった。表情が乏しく台詞も棒読み。
それが経験を重ね現場で学んで、今に至ったと言えるだろうか。
彼はスラリと伸びた四肢もさることながら横顔が美しい。
ぽってりとした上まぶたに、スーッと伸びた鼻。
まるで仏像を思わせる優美さを湛えている。



さて恋に目覚め、身だしなみに気をつけるようになったサユリ。
でも、あまりパッとしないというか、フツー過ぎてつまらない。
雑誌で紹介されたモテ女ファッションは没個性だからなのか?
実はそんなことはどうでも良いのかもしれない。
この物語で大切なのは、サユリの一途な聡史への思い。
そのサユリに秘かに思いを寄せる森山クンの姿が切ない。
YOU演じる海原さんが、そんな森山クンをからかうけど、
あのしつこさには笑えないなあ。人の想いを嗤っちゃだめだよ。
いつもはコミカルな演技が印象的な佐藤隆太が、
今回は愛する人の幸せを心から願う森山クンで、男前に見えたぞ!
蛇足ながら上野樹里のほっぺたも、相変わらず愛らしかった
(ペコちゃんフェイスの彼女のチャームポイントに違いない)。

馴染み深い長崎の街並や路面電車が素敵に見えたのは嬉しいけど
温かみのある長崎弁が一切出て来ないのは寂しかったな。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« この世で愛らしいもの | トップ | 『硫黄島からの手紙』ワール... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。