はなこのアンテナ@無知の知

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日本酒の危機

2009年12月19日 | はなこのMEMO
 今朝の「ウェークアップ・ぷらす」で、日本酒の危機と、それに立ち向かう地方の造り酒屋の奮闘が伝えられていた。

 日本酒の消費量1975年の167万キロリットルをピークに年々減少し、2007年には約3分の1の66万キロリットルにまで落ち込んでいると言う。それに伴い、酒蔵の数も減少の一途を辿り、1995年に4021場あったのが、12年後の2007年には1845場と半減したらしい。

 その理由のひとつは、消費者の嗜好の多様化である。今では後発のワインやビールや発泡酒に押され気味なのだ。さらに今年は、ウィスキーを炭酸で割るハイボールが、若い頃を懐かしむ中年層だけでなく若者にも人気だそうで、居酒屋での「手始めにビールを一杯」が、ハイボールに取って代わられたとも聞く。ウィスキーも久しく不振が伝えられていた中で、気軽に楽しむ方法をCM等でPRして、復活の兆しを見せたと言えるだろうか。

 ボランティア仲間のMさんのご実家も、明治から続く造り酒屋だそうだが、最近、取引先の問屋が潰れてしまったそうだ。それで販路が途絶することはないだろうが、商売の痛手になることは間違いない。

 このままでは日本酒業界はジリ貧である。しかし、一部の地方の造り酒屋では、さまざまな起死回生策を講じて、果敢に危機に立ち向かっている例もある。

 現地レポートは、京都伏見の、とある造り酒屋で行われた「蔵開き」から始まった。新酒の試飲を求めて人々の長蛇の列。そのフレッシュな味わいに人々は舌鼓を打つ。まろやかな水質の水で造られる京都伏見の酒は「女酒」、硬質な水で造られる兵庫灘五郷で造られる酒は「男酒」と呼ばれるらしいが、酒造組合を組織して、一人前になるのに10年はかかると言われる杜氏の育成を共同で行ったり、震災で機械設備が壊れたのを機に、すべて手作業に切り替え、より質の高い酒造りを目指していると言う。

 日本最大のネット・ショッピングモール「楽天市場」には、日本酒ジャンルグループと呼ばれる販売企画部門が存在し、季節毎に日本酒の楽しみ方を提案する等して、日本各地の日本酒の販売に力を入れている。地方の造り酒屋は、こうしたネット販売を通して自社の酒を広く知って貰い、販路の開拓に成功しているらしい。造り手も送り手も、日本酒を日本文化のひとつとして捉え、自らをその文化の担い手として自負して止まないところが印象的だった。

 日本酒復活のキーワードはふたつ。「女性」と「地元密着」。

 復活を目指して、日本酒業界では、女性をターゲットにした商品開発が進む。古酒をかけて食べる「清酒アイスクリーム」(伏見夢百衆)。酒粕を使って練り上げた生地で「こしあん」を包んだ「醸まん」(腰掛庵)。しゃれたパッケージ・デザインの発泡性日本酒「咲」(出羽桜酒造)。日本酒を使った化粧品「モイストムーン」(月桂冠)。

 番組では、地元に拘った酒造りに力を入れる地方の造り酒屋を紹介していた。「地元密着」で「世界一」になった酒蔵である。山形県天童市の老舗「出羽桜」は、国内で最も権威のある鑑評会で、12年連続、金賞を受賞。さらに去年、国際コンテストで「チャンピオン・サケ」に選ばれた。世界20カ国に輸出するなど、売り上げも順調に伸びていると言う。「出羽桜」は、多くの蔵で作業の機械化が進む中、一本一本、職人の手作業で造り、精米から貯蔵まで徹底したこだわりを見せる。

 「地元のお米、水、風土、人で作ったのが、本当の地酒。そして地元の人に飲んでもらうことをまず誇りとして、自信として、県外・海外にお届けする」(出羽桜酒造 仲野益美社長)

 全体的に沈滞ムードが漂う中で、着実に業績を伸ばしている酒造メーカーもあるにはあるのだ。その成功の秘訣は、王道の酒造りへのこだわりであったり、周到なマーケティングであったり、現代社会システムの変化を捉えた、積極的な販路開拓であったりと、創意工夫に溢れた、「攻めの経営姿勢」にあるようだ。とても興味深いレポートだった。
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