朝から体がだるい。
まああまり眠っていないので
仕方ないかな。
さっき、
なんとかか書き上げた原稿15枚を、
郵便局の、
ゆうゆう窓口へ出してきました。
同曜日日曜日は、
実に便利な窓口です。
ただ本局にいかないと利用できません。
さっきも7人ほど並んでいました。
みなさん同じなんですね。
薬と笑っちゃいました。
しかし熱い!
業務用スーパーを覗いて、
ひと盛りカゴのバナナを買ってきました。
100円です。
貧乏人の味方です。(笑)
落ち着いたら
バナナジュースを作ることにしました。
暑くて頭が働きません。
そこでまた昔のミニ小説を
ピックアップしました。
前編です。
フー、暑いよー!(笑)
更生
いつも車を走らせる県道沿いの建物が取り壊しにかかっていた。
(え?)通り過ぎてから気付き、慌てて後ろを見返した。もう半分以上解体されている。
近くの空き地へ車を乗り入れた。
歩いて戻った。編み物教室と住まいを併設した瀟洒な洋館風の建物だった。重機に呵責のない攻撃を加えられガラガラと崩れ、土埃が派手に舞い上がる。かなり以前から無人だった。いつか撤去されるだろうと考えてはいたが、まさかその現場に遭遇するとは……!
因縁のある家で、十七歳の頃毎週末通い続けた。編み物を学んだわけではない。教室を主宰する女性オーナーの父親が民生委員で、私の面談相手だった。
「保護司のFです。これから君が更生できるように、頑張るのを応援させて貰います。一応二年を目処に、君の生活状況を把握するために、毎週土曜日に面接にきて貰うことになります。どないかな?頑張れるかい」
「……はい」
消え入りそうな声で何とか答えた。
家庭裁判所の審判で保護観察処分が下されたが、保護観察がどんなものかは知らずにいた。保護司のもとを訪問する義務が課せられたと理解すると、今度はどんな怖い人の保護観察を受けるのかと不安が募った。(つづく)
酷く人見知りな性格だった。起こした事件はその性格がもたらしたともいえる。初対面の相手は特に苦手だった。それも大人を前にすると、必ず緊張して口は利けなくなった。
相当な覚悟を持った訪問なのに、拍子抜けした。相手は初老の小柄な普通のおじさんだった。笑顔を絶やさない、えらく気さくな大人だった。内心ホッと胸を撫で下ろした。
もうひとつ気がかりがあった。この家には小学校の同級生だった女の子がいる。つまり保護司のFさんは彼女の祖父だった。訪問が頻繁になれば顔が会う可能性は当然生まれる。気まずい顔合わせは避けられないだろう。
多感な年ごろには、きつい試練である。保護観察を受ける気詰まりより、同級生だった女の子と顔を合わせたときに味わう苦痛の方が、はるかに負担は重く大きい。
「毎週一回の訪問で、君の話を聞かせて貰うことになるよ。保護観察は君に罰を加える処分じゃあらへん。君が早く更生できるよう手助けするのが僕の役目やからね。生活状況の把握っていうたら堅苦しいけど、まあ君は気楽に訪ねてくれればええんや」
顔が上げられなかった。カァーッと熱い。たぶん赤面している。
「ちょっと肩の力を抜いて、無理せずゆっくりやって行こうか。そうそう裁判所からの報告書を読んだけど、君は生真面目だし頑張り屋やなあ。その自分をしっかり取り戻すまで付き合うからね。順調にいったら二年はかからないかも知れないな。そやから頑張ろう!」
一週間分の生活状況の報告と、それに関した自己評価と感想を記入する紙。訪問する度に保護司から確認の判子を押印して貰う印鑑帳を受け取って、初日は無難に済んだ。
審判で保護観察処分を言い渡されたのは一月中旬である。全身が凍てつくのではないかと思える寒い日で、身も心も北風に吹きさらされながらの帰宅となった。母が用意してくれた熱い風呂に浸かり、深いため息を何度もついた。あの日からズーッと肩身の狭い思いをしてきた。家族に気を使われているのを感じては息が詰まった。家族相手でも、人見知りな性格は頑なでどうしようもなかった。何もする気力も湧かない生活で、保護司さん宅への訪問だけが唯一の希望になった。
「どうやろ、また学校で勉強しやへんか?」
定期訪問の日、Fさんは切りだした。悶々と送る日々の中、その問いかけは嬉しかった。学校、勉強という単語を耳にするのは、いつ以来だろう。それでも忘れていなかった。
「ええ……?そ、そやけど、前の高校には……いかれへん……し」
いける筈はない。事件を起こして思いきり迷惑をかけた。それに罪を犯し鑑別所に入ったことを知る級友の中で普通にふるまうなんて考えられない。どの面さげてではないか。
「そうか。それやったら心機一転しよ、新しい高校を受験し直してみたらええやないか。うん、それが一番やな」
何の拘りも感じさせないFさんの態度に、私は救いを求めていた。(学校に行きたい!)「よっしゃ、そうと決まったら、すぐ中学校の先生に連絡を入れてみるか。お母さんやお父さんの方には僕の方から伝えるさかい。君は今日から受験勉強だ。いいな」
目標が生まれた。自宅への道すがら、気分は来るときと雲泥の差で、浮き足立っていた。
Fさんの尽力で母は中学校に出向き、高校受験の手続きを進めた。県立の新設校、T工業高校電気科受験が決まった。普通科しか頭になかった一年前と違い、選択肢に入れる高校を優先した結果だった。(つづく)
まああまり眠っていないので
仕方ないかな。
さっき、
なんとかか書き上げた原稿15枚を、
郵便局の、
ゆうゆう窓口へ出してきました。
同曜日日曜日は、
実に便利な窓口です。
ただ本局にいかないと利用できません。
さっきも7人ほど並んでいました。
みなさん同じなんですね。
薬と笑っちゃいました。
しかし熱い!
業務用スーパーを覗いて、
ひと盛りカゴのバナナを買ってきました。
100円です。
貧乏人の味方です。(笑)
落ち着いたら
バナナジュースを作ることにしました。
暑くて頭が働きません。
そこでまた昔のミニ小説を
ピックアップしました。
前編です。
フー、暑いよー!(笑)
更生
いつも車を走らせる県道沿いの建物が取り壊しにかかっていた。
(え?)通り過ぎてから気付き、慌てて後ろを見返した。もう半分以上解体されている。
近くの空き地へ車を乗り入れた。
歩いて戻った。編み物教室と住まいを併設した瀟洒な洋館風の建物だった。重機に呵責のない攻撃を加えられガラガラと崩れ、土埃が派手に舞い上がる。かなり以前から無人だった。いつか撤去されるだろうと考えてはいたが、まさかその現場に遭遇するとは……!
因縁のある家で、十七歳の頃毎週末通い続けた。編み物を学んだわけではない。教室を主宰する女性オーナーの父親が民生委員で、私の面談相手だった。
「保護司のFです。これから君が更生できるように、頑張るのを応援させて貰います。一応二年を目処に、君の生活状況を把握するために、毎週土曜日に面接にきて貰うことになります。どないかな?頑張れるかい」
「……はい」
消え入りそうな声で何とか答えた。
家庭裁判所の審判で保護観察処分が下されたが、保護観察がどんなものかは知らずにいた。保護司のもとを訪問する義務が課せられたと理解すると、今度はどんな怖い人の保護観察を受けるのかと不安が募った。(つづく)
酷く人見知りな性格だった。起こした事件はその性格がもたらしたともいえる。初対面の相手は特に苦手だった。それも大人を前にすると、必ず緊張して口は利けなくなった。
相当な覚悟を持った訪問なのに、拍子抜けした。相手は初老の小柄な普通のおじさんだった。笑顔を絶やさない、えらく気さくな大人だった。内心ホッと胸を撫で下ろした。
もうひとつ気がかりがあった。この家には小学校の同級生だった女の子がいる。つまり保護司のFさんは彼女の祖父だった。訪問が頻繁になれば顔が会う可能性は当然生まれる。気まずい顔合わせは避けられないだろう。
多感な年ごろには、きつい試練である。保護観察を受ける気詰まりより、同級生だった女の子と顔を合わせたときに味わう苦痛の方が、はるかに負担は重く大きい。
「毎週一回の訪問で、君の話を聞かせて貰うことになるよ。保護観察は君に罰を加える処分じゃあらへん。君が早く更生できるよう手助けするのが僕の役目やからね。生活状況の把握っていうたら堅苦しいけど、まあ君は気楽に訪ねてくれればええんや」
顔が上げられなかった。カァーッと熱い。たぶん赤面している。
「ちょっと肩の力を抜いて、無理せずゆっくりやって行こうか。そうそう裁判所からの報告書を読んだけど、君は生真面目だし頑張り屋やなあ。その自分をしっかり取り戻すまで付き合うからね。順調にいったら二年はかからないかも知れないな。そやから頑張ろう!」
一週間分の生活状況の報告と、それに関した自己評価と感想を記入する紙。訪問する度に保護司から確認の判子を押印して貰う印鑑帳を受け取って、初日は無難に済んだ。
審判で保護観察処分を言い渡されたのは一月中旬である。全身が凍てつくのではないかと思える寒い日で、身も心も北風に吹きさらされながらの帰宅となった。母が用意してくれた熱い風呂に浸かり、深いため息を何度もついた。あの日からズーッと肩身の狭い思いをしてきた。家族に気を使われているのを感じては息が詰まった。家族相手でも、人見知りな性格は頑なでどうしようもなかった。何もする気力も湧かない生活で、保護司さん宅への訪問だけが唯一の希望になった。
「どうやろ、また学校で勉強しやへんか?」
定期訪問の日、Fさんは切りだした。悶々と送る日々の中、その問いかけは嬉しかった。学校、勉強という単語を耳にするのは、いつ以来だろう。それでも忘れていなかった。
「ええ……?そ、そやけど、前の高校には……いかれへん……し」
いける筈はない。事件を起こして思いきり迷惑をかけた。それに罪を犯し鑑別所に入ったことを知る級友の中で普通にふるまうなんて考えられない。どの面さげてではないか。
「そうか。それやったら心機一転しよ、新しい高校を受験し直してみたらええやないか。うん、それが一番やな」
何の拘りも感じさせないFさんの態度に、私は救いを求めていた。(学校に行きたい!)「よっしゃ、そうと決まったら、すぐ中学校の先生に連絡を入れてみるか。お母さんやお父さんの方には僕の方から伝えるさかい。君は今日から受験勉強だ。いいな」
目標が生まれた。自宅への道すがら、気分は来るときと雲泥の差で、浮き足立っていた。
Fさんの尽力で母は中学校に出向き、高校受験の手続きを進めた。県立の新設校、T工業高校電気科受験が決まった。普通科しか頭になかった一年前と違い、選択肢に入れる高校を優先した結果だった。(つづく)